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国債の歴史からみた日銀の長期金利コントロールの意味

 日本の国債市場が本格的に稼働したのは、それほど昔のことではない。1979年頃まで、預金金利などは厳しく規制されてきており、国債の金利を含めて市場水準よりかなり低いレベルに置かれていた。これにより企業の設備投資が促され、いわゆる高度成長の原動力となっていた。銀行も保護され、いわゆる護送船団方式と呼ばれるシステムが作られていた。

 1970年代に発行された国債は、銀行や証券会社などで構成された引受シンジケート団と大蔵省資金運用部が引き受けていた。シ団が引き受けた国債で市中消化されるのはごく一部で、ほとんどがシ団メンバーの金融機関にそのまま保有された。シ団の引き受けた国債の市場売却は、事実上自粛されていた。ただし実際のところ、銀行が保有する国債の大半は、日銀の買い切りオペで吸い上げられていた。

 ところが1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートすることになる。日銀の買入で吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたためである。特例国債の市場売却について各金融機関の自主的な判断に委ねられた。引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することになった。建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始された。

 1979年のロクイチ国債の暴落を受けて、金融機関の保有国債の評価法が従来の低下法から原価法または低価法の選択性となった。また、ロクイチ国債の暴落は大蔵省の国債管理政策にも大きな影響を与えることになる。

 1985年6月に金融機関の債券のフルディーリングが開始された。債券のディーリング業務とは既発債を売買する業務であり、それまでは証券会社にしか認められていなかった。国債を大量に保有している都銀などの銀行が、国債市場に本格的に登場することで公社債の売買高は急増した。ただし、銀行は商品勘定保有国債であっても、翌月までの売却自粛期間が設けられており、この売買自粛が完全に廃止されたのは1987年9月である。

 1985年10月に東京証券取引所に日本ではじめての金融先物市場が誕生した。長期国債先物取引が開始されたのである。債券先物取引においては、東京証券取引所会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。

 金融機関のフルディーリングの開始や債券先物の登場もあって、国債は活発に売買されるようになり、一時的ながら当時の指標銘柄である10年利付国債(68回債)の利回りが、代表的な短期金利のひとつであった手形レートを下回り、長短金利の逆転現象が生じた。また、1987年5月に指標銘柄の89回債は10年債でありながら、当時の代表的な短期金利であった公定歩合の2.5%に接近した。ここが債券のディーリング相場のピークとなったが、これ以降はディーリングそのものはは影を潜め、本来の投資家主体の相場が形成されるようになっていった。

 国債残高が年々積み上がったものの、タイミング良く銀行、生保、年金など国内の民間金融機関には、日本国債を買い入れる余地が拡がっていた。日本国債への海外からの投資額はそれほど多くはなくても、国内で大量の国債が消化が可能となっていたのである。

 1998年に国債を大量に引き受けていた大蔵省資金運用部の引き受け比率の低下などをきっかけに運用部ショックと呼ばれた国債価格の急落(長期金利の急上昇)が起きた。しかし、実際には資金運用部分の国債を買い入れる余地を民間金融機関は有していた。日銀のゼロ金利政策や財務省の国債管理政策の強化とともに、需給面の不安の後退もあって運用部ショックは一時的なものとなった。

 その後も需給面での不安はないにも関わらず、2013年4月から日銀は無理矢理、国債を大量に買い入れることとなった。これによって国債の需給バランスは変化した。さらに2016年9月のイールドカーブコントロールの導入により、日銀は今度は長期金利をコントロールしようとしている。これはまさに先祖返りともいうべきものでもあろう。

 日本の国債市場にはそれほど長い歴史があるわけではない。しかし、こつこつとながら日本の国債市場は拡大していった。しかし、その国債を日銀が年間発行額に匹敵する金額を買い入れて、残高の4割も保有するというのは、ある意味、国債市場の機能を損ねていることは間違いない。だから長期金利をコントロールできるとするのであれば、それは国債市場の機能をむしろ蔑ろにしているとも言えるものではなかろうか。

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