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「法科大学院」を目指した弁護士たち

先日、桐蔭横浜大学との統合が発表され、話題となっている大宮法科大学院大学(「『弁護士会系』法科大学院挫折の意味」)が、今年2月に発行した「大宮ローレビュー」第7号に、同法科大学院設立に深くかかわった久保利英明・元第二東京弁護士会会長が、 「大宮法科大学院大学はなぜ出来たのか――ロースクールから法科大学院への10年」と題した一文を寄せていました。

 ここには、大宮法科大学院大学の設立に第二東京弁護士会がどのような経緯でかかわったのかにとどまらず、そもそも法科大学院制度創設に対して、同弁護士会と日弁連がどのような発想のもとにかかわってきたのかが、関係者の目線で、当時の情勢とともに紹介されています。

 このなかに印象的な表現がいくつか出てきます。増員阻止で敗退を続けた日弁連は、1997年の時点までに1999年 (平成11年)度から司法試験合格者年間1000人程度、将来1500人のラインまで後退します(「増員路線への日弁連の大撤退劇」)。

 しかし、久保利弁護士は、この影響を次のように書いています。

 「逆に、こうした敗退の歴史は、弁護士の一部に弁護士と弁護士会による独自の法曹養成システムの構築の必要性を認識させた。特に、『法化社会』、『法の支配』の実現のためには、全国津々浦々に至るまで多数の弁護士が必要であり、訴訟弁護士のみならず企業の契約や海外との取引などに携わる弁護士の大量増員が必要であることを実感していた東京の弁護士、とりわけ従前から法曹養成・法曹増員に先駆的な意見を発表し続けていた第二東京弁護士会の危機感は強まる一方であった」

 この1997年という年、自民党司法制度特別調査会が発表した「司法制度改革の基本方針」の中に、「ロースクール方式の導入など法曹人口の大幅増加に対応する法曹養成のあり方について研究する」ことが盛り込まれます。久保利氏は、第二東京弁護士会が「この方針に敏感に反応し」弁護士会としてもロースクール制度の研究を開始した、としています。

 その後、第二東弁が、弁護士会のなかで、いかにロースクール構想に先駆的に取り組んできたかが紹介されています。司法制度改革審議会が発足した1999年、文科、大学からのロースクール推進行動に対し、弁護士会側からの提案として第二東弁が初めて「法科大学院ロースクール問題に関する提言」を発表。ここで弁護士会の全面協力による法科大学院を法曹養成の中核とする発想が示されます。

 司法研修所の廃止まで視野にいれていたこの提言は反発を招きます。

 「司法研修所の教育にノスタルジアを感じる層はもちろんのこと、研修所教官経験者からは猛烈な反発が寄せられた。特に研修所教育の技術偏重、要件事実教育のアナクロニズムや刑事修習における旧態依然たる実務への追随などが指摘されたことへの反発は研修所教官グループとの論争を招いた」

 しかし、翌2000年には自民党司法制度調査会は、第二東弁が提唱する日本型ロースクール構想を評価します。

 一方、司法審では、法学部を抱える大学教員と経済界や労働界、消費者委員等の司法のユーザー目線の委員と法曹三者委員の間で、「まだ見たこともない日本型ロースクール」についてかみ合わない議論が行われますが、「最終的には中坊(公平)委員の発言を通じて強力に展開された日弁連の意見やユーザー代表委員の意見が文科省の提唱する専門職大学院構想の後押しを得て、日本型法科大学院として結実した」としています。

 その後も、政党内でも法曹養成をめぐり、法科大学院推進派、司法試験至上主義者、財政支出抑制論者、予備試験など法科大学院を経ないバイパスの充実などさまざまな論が交錯するなかで、説得に苦慮したことが書かれていますが、最終意見書までこぎつけた関係者の意識を久保利弁護士は、こんな風につづっています。

 「憶測と後知恵で司法制度改革の裏の思惑などとしたり顔で書物を書いている弁護士もいるが『この国のかたち』を今変えなければ、ワンゼネレーションたったら、この国は三等国になると言う危機感が審議会委員とそれを補佐する人々を突き動かしていたことは間違いない」

 最終意見書後、日弁連と第二東弁は、今度はロースクール反対の単位弁護士会とも向き合うことになりますが、久保利弁護士は日弁連トップと第二東弁が共通理解に立っていたことを強調しています。誰が言ったことか定かにしていませんが、当時の関係者のこんな発言が出てきます。

 「法学部の上にちょこんと乗ったロースクールは本来、好ましくはないが、それでも弁護士独自の教育システムとしては研修所よりも良くなる可能性がある。作ってしまえば財務省から予算をもぎ取る気持ちも能力もない最高裁事務総局よりは文科省の方が予算面ではずっと頼りになる。日弁連は文科省を徹頭徹尾支えるべきだ」

 「プロがつくるプロを作る本当のプロフェッショナルスクール」を目指した大宮法科大学院大学は、まさにこうした日弁連主導層と第二東弁の発想と熱意の一つの到達点であったことが分かります。「増員」での敗退が、日弁連と弁護士会の法科大学院を中核とする法曹養成への強い傾斜につながっていき、その過程で第二東弁が果たした役割が見えてきます。

 ただ、そこには、「この国は三等国になると言う危機感」や「弁護士独自の教育システムとしては研修所よりも良くなる可能性」といった、本当に多くの弁護士が共有していたのか疑わしい意識や見方が登場してきます。それを「思い込み」と断じるかどうかでは、意見が分かれるとは思いますが、それを現在の大宮法科大学院大学と法科大学院制度の姿と切り離して考えることもまた、できないように思います。

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