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注目・活用される「懲戒処分歴」

弁護士の懲戒処分歴に対して、会員弁護士の受け止め方には、やや複雑な感情があるのを見つけるときがあります。

日弁連は2009年7月から過去3年の懲戒歴、業務停止、退会、除名について全件、戒告については報道発表さたれた重大なものを対象に、請求があった場合、開示する制度をスタートしました。2001年の司法制度改革審議会最終意見書で、「懲戒処分の過程・結果等に関する公表の拡充」が提言されていたこともあり、日弁連は2003年から検討し、2008年12月の臨時総会で可決したのですが、この間、会内はこの対応に対する反対論も出されました。 

このなかで、よく聞かれた意見は、懲戒処分終了後に、さらなる不利益を被ることになる不当性でした。本音の部分で、そこに納得いかない人がいたのです。ただ、結果として、そうした反対・慎重論を退けて、この対応を日弁連が選択したのは、いうまでもなく、およそ依頼を目的とした市民への情報公開、懲戒制度に対する弁護士会の姿勢として、とても前記したような主張が通用しない、という認識に大方の会員が立ったということだろうと思います。 

言うまでもなく、弁護士の懲戒歴は、依頼者市民からすれば、極めて関心の高い情報です。「出さない」という姿勢は、とりもなおさず、市民の要望に背を向けることになります。一方、弁護士に対しては、仮にそれが将来に向けて十字架を背をわせることになったとしても、それが重ければ重いほど、不祥事への抑止力になるとの見方もあります。 

ただ、市民の反応ははっきりしています。 「何も前科のある人に頼む必要もない。弁護士は沢山いるのだから」 周囲の人に聞けば異口同音にそんな回答が返ってきます。市民にとって、「懲戒された弁護士」というレッテルは絶対です。もちろん、懲戒の内容は重大な意味を持ちますが、長々とした処分理由はなんであれ、末尾の「品位を失うべき非行」文字だけ見れば、それだけでアウト。依頼することはあり得ない、という声も聞きます。

弁護士のなかで、評価が分かれるのは、処分を受けて、いわば再起している人に不利益を与えることが、業務停止処分後に他の弁護士と同様に業務ができる処分の趣旨に反することや、前科・前歴をほじくりかえして評価する不当性でした。そうした弁護士に仕事をさせないことが予防的に非行を防止するという考え方そのものは「保安処分」と同じ、という意見までありました。 

こうした議論を越えて、会員が選択した開示制度は、日弁連がそれまでの機関誌と官報での公表に加えて、より懲戒に対して、厳しい姿勢、市民の要望に対して、より前向きな姿勢で臨むことを示すものとして、社会的に積極的に評価されることを期待していたといってもいいと思います。 確かにそうした受け止め方がされていないわけではありません。
ただ、それにとどまらない見方もできます。一つは弁護士会として、被懲戒弁護士の再犯の可能性を認めていることです。「前科」弁護士による被害が出た場合、情報提供によって、弁護士会が一定の対応をとった事実を示し、さらには依頼者側の自己責任に転嫁できる余地を作っているともとれなくありません。 

弁護士会の執行部関係者に聞けば、それこそ「札付き」といわれる多数回懲戒者に頭を悩ませている話はよくあります。そうした弁護士の再犯を弁護士会として防止できる有効策が見つけられない以上、再犯の恐れが見込まれない案件の「前科」を持つ人や、あるいは前記反対派が主張するような点の「犠牲」はやむを得ないという選択にもとれるのです。 もう一つは、この日弁連が選択した対応の「効果」は、おそらく想定以上に別の形で出つつある、ということです。

それはインターネットです。あるサイトではこう指南しています。「問題のある弁護士を見分ける方法があります。それは懲戒されたことがないか調べるということです。・・・・・依頼しようとしている弁護士の名前と『懲戒』というキーワードで検索をすれば、懲戒された弁護士の名前が出てくることがあります」 「もっとも懲戒されているのに、あまり明るみに出ていないこともあります。どうしても心配な方は依頼しようとする弁護士に『先生は懲戒されたことがありますか?』と聞いてみましょう。懲戒されたことがなければ、笑って『ないですよ』と言います。失礼かもしれませんがだいたいは許してくれます。逆にこれで怒る弁護士がいたらかなり怪しいです」「弁護士会というのは弁護士で構成されています。その弁護士会が懲戒処分したとなると、その弁護士にはよほどの問題があるとしか考えられません」(「よい弁護士の選び方」)

懲戒歴はえんえんとネットを通して開示され続けるとともに、それを利用する市民からすれば、それがすなわち「よい弁護士選び」として選択されるということです。もともとこの日弁連の懲戒歴開示は、確かに「弁護士選び」での一つの情報提供として期待されていたものでしたが、さすがにここまでくると、懲戒の内容いかんにかかわらず「前科」は「前科」ということでいいのかという意見も出てきそうです。もちろん、ここも弁護士の意見が分かれるところでしょう。 

しかし、そのこともさることながら、実は、こうした「前科」公表は、これから確実に不祥事・懲戒事案が増えることが予想されるなかで、弁護士会の積極的対応として評価されるというよりは、弁護士・弁護士会への不信感の高まりとともに、注目・活用されるということもまた、関係者はもっと自覚しなければいけないように思うのです。

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