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昨年の政治の総括と本年の展望-希望的観測を排し現実を直視しよう

 新年明けましておめでとうございます。本年も皆様が政治・政策を考えるに際しての「ヒント」となる情報、考え方等を発信して参りますので、当ブログを引き続きよろしくお願いいたします。

 年頭に当たり、昨年の政治・政策の総括と本年の展望について述べてみたい。

 まず、昨年の政治・政策を総括すれば、多くのものが希望的観測に基づいて企画・立案され、説明され、実行に移されてきた、ということだろう。国内政治・政策しかり、対外政治・政策しかり、海外事情しかりである。成長戦略にTPP、安全保障政策、英国のEU離脱、アメリカ大統領選はその典型例であろう。

 これを成長戦略を例に見てみよう。成長戦略と言えばアベノミクスの3本目の矢と位置付けられている。それをまとめたものが毎年改定されている「日本再興戦略」である。第4次産業革命だのIoTだのAIだのといった言葉(バズワード)が呪文のように並べられており、要はそうしたものに投資をすれば日本経済が成長するということらしい。しかし、なぜそれで成長するのか、それらがどう成長に資するのか、明確な説明は記載されていない。単純化して言えば、「あったらいいな」、「そうなったらいいな」戦略であり、希望的観測そのものである。

 もっとも、その中身を別の観点から整理すれば、規制改革と財政支援措置、それに税制上の優遇措置の組み合わせであり、要するに、規制改革を除けば、ほとんどが旧来型の産業政策であると言ってしまっていいだろう。つまり「成長戦略」、「再興戦略」と銘打ってはいるものの、その実態は高度成長期の発想から抜け出せていないか、ほとんど変わっていないということだろう。(高度成長期の発想で、数十年も経った今、これからの希望を語る、そんなことは小説かドラマの中だけにして欲しいものだ。)

 そもそも、成長戦略、潜在成長力云々と言われるが、かつてのように成長カーブを描くことが可能なのか。現政権は新産業の創出や起業の促進に血眼になっているが、昨今新たな産業(というより事業)や企業として生まれているものは、既存の期間となる産業に寄生して成り立つ「寄生産業」や短期的な利益を追い求める堪え性のない企業ばかり。あとは人の手によるものがICTに替わったといったもの。別にそれらを否定するつもりはないが、要するにその程度ということ。それは、これまでにアベノミクスとして講じられてきた措置の効果はその程度ということでもあり、「この道」を「真っ直ぐ」進んでも劇的な効果は期待できなことは明々白々となったと言ってしまっていいように思う。

 つまり、成長というもの自体が限界に来ているのではないかということであり、そうであれば、成長をひたすら追い求めるという考え方を改めることがまず必要なのではないか。

 日本の成長戦略では「グローバル」という言葉が好まれているようであるが、既に世界の潮流は行き過ぎたグローバリズムの是正にシフトしている。英国のEU離脱決定にせよ、米国大統領選の結果にせよ、欧州諸国での政治的な動きにせよ、そのことが如実に現れている。しかし、どうも日本ではグローバリズムが宗教のようになり、政界、官界、経済界にその熱狂的な信者が多いようで、なかなかそのことが理解できないらしい。それを象徴するのが、こうした動きを自由貿易の推進と保護主義の台頭の二項対立で考えようとする思考パターンであるが、端的に言ってそれは底の浅い単なる詭弁でしかない。更に、「グローバル化の流れは止められない」とか「グローバルは変わらない」といった勇ましいというより空元気な発言も見られるが、宗教的になったグローバリズムの希望的観測そのものである。

 今の日本の政治がなすべきことは、希望的観測に基づいてグローバル化を推進することでも、そのための成長戦略を捻り出すことでも、付け焼き刃的な人口減少対策(「消滅可能自治体」などと決めつけて、実効性のない「戦略」やら「ビジョン」やらを作らせてお金を配る政策が典型例で、「地方創生」と呼ぶらしい。)を進めることでもなく、地域社会・共同体の崩壊、伝統・文化の衰退、個人購買力の減退を食い止め、それ対応することである。

 すなわち、地域社会・共同体、伝統・文化、購買力のある分厚い中間層、そうしたものを取り戻すことがまず必要なのである。これは本来は保守を標榜する自民党がやるべきなのであるが、現政権は真逆の政策を「真っ直ぐ」進めてきているように思われる。

 本年は、希望的観測を排し、世界情勢の変化も含め現実から目を背けず、急ぐことも焦ることもなく、熟慮・熟議を重ねて、本来求められる政策を企画・立案していく、それへの転換点となる年とすべく、良識ある国会議員、地方議員、公務員諸氏には職務に邁進されることを望みたい。

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