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独断的音楽ビジネス予測2017〜もう流れは決まった。大変革の2021年に備えよう〜

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●データベース構築

 日本の音楽に関するデータベースは内側に閉じてしまっている。著作権などの分配のためのデータベースは精緻に整理されている。ところが、それを例えばITサービス側に提供して、音楽に関する情報を活性化させようという発想は無い。レコード業界は、楽曲データは自分たちのものという感覚で、存在感が低下することを怖れて、極力閉じておこうとしている。コンサートに関しても悲惨だ。コンサート会場に関する共通データベースはない。いまやどんなコンサートがいつ行われたかということ記録に、文化的な価値がある時代なのにもかかわらず、共通データベースは存在しない。5年くらい前に調べた時に、チケットサービス事業社が個々に付番しているコンサート番号は、9ヶ月程度で元に戻ると聞いて、暗澹たる気持ちになった。誰もアーカイブを作ろうという発想が持てていない。記録をまとめて「コンサートミュージアム」があれば観光名所になるだろうに。
 大きな会場が同時に改修してコンサート会場が不足するという問題も、コンサートが日本にとって必要な文化の一部だという社会的なコンセンサスが不足しているから起きていることだ。自分達の記録も残せないようで、社会における価値を胸を張って主張ができるだろうか?
 このままだと、ここでも外資、例えばSongkickが日本のコンサート情報を一番持っているというようなことになりかねない。火急の課題なのだ。

●グローバルプラットフォーマーとの向き合い

 著作権に関する法律は、それぞれの国ごとで決まるということもあり、言葉や文化の違いや、主たるメディアがドメスティックであったことなどが理由で、音楽ビジネスはドメスティックな産業だった。インターネットの普及でこの状況は変わってしまっている。Spotify、Apple、Googleなどすべて、グローバルサービスで、契約もグローバルに行うことになる。日本のアーティストが海外で稼ぐためにも、これらグローバルプラットフォーマーと交渉力を持つことと、グロバールになっている流通で戦略的なマーケティングができることは、これからの日本の音楽業界にとって、死活的に重要だ。
 海外市場での著作権徴収については、昨年できたNexToneに期待したい。グローバルエージェントと伍する存在になって欲しい。

●中国市場への本格的な取り組み

 僕は2007年にタイでシンガーオーディションを行って、16歳の美少女と日本人と組合せてSweetVacationというグループをデビューさせた。これもまた「早すぎ」だったのかもしれないけれど、アジアでの取り組みはいち早くやってきたつもりだ。インドネシア人シンガーAiu Ratnaも日本に何度も呼んだ。ただ、その時のテーマは、「without China」だった。
 著作権遵守の意識が無く、共産党政府の恣意的な政治で物事が決まる、法治ではなく、「人治」社会の中国でのビジネスはリスクが大きすぎて、避けるべきだと言い続けてきた。
 その時代も終わったようだ。象徴的なのは、中国の巨大IT企業テンセントが有料のストリーミングサービスを成功させていることだ。海賊版すら買わないと言われていた中国人が定額サービスの有料会員になるとは驚きだ。
 隣りにある巨大なマーケット。政府の反日誘導などカントリーリスクは相変わらず大きいが、もう音楽ビジネスにとっても避けては通れない状況になっている。訪日外国人観光客も一番多いのは中国人だ。

 これらの状況を踏まえて、音楽ビジネスの生態系を作り直す必要がある。新人開発は日本型クラウドファンディングの普及が鍵だろうし、ファンクラブもソシャゲーの様なオープン型に移行するべきだろう。この辺の処方箋は、拙著『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック刊)にまとめているので興味のある人は読んでみて下さい。
 僕が育った音楽業界には素晴らしいところがたくさんある。パーツとして見れば今でも有益だ。イマドキの言い方で言うと、モジュールとして捉えて、的確に再構築すれば、音楽ビジネスの生態系は息を吹き返すと思う。オールドとニューの融合が肝要だと僕は思っている。

 2021年の大変革に向けて、やるべきことは山積だけれど、まだ4年あるので、しっかり備えていきたい。そんな元旦の抱負にしたい。

 2014年から始めた「ニューミドルマンラボ」は、旬のゲスト講師と共に考える「養成講座」とサロン&ゼミ的に個々の目標を達成するためのフォローアップをする「インキュベーションプログラム」の二軸で続けて、成果が出始めている。今年も継続していくので、コンテンツビジネスについて学びたい人や、起業および転就職を考えている人は、受講を検討して下さい。
 まもなく情報解禁のイベントをフライングで告知しておく。『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)著者でお額ライターの柴那典さん、宇多田ヒカルのヒットで大活躍した宣伝プロデューサーの梶望さん、「ALL DIGITAL MUSIC」でお馴染みの音楽ブロガージェイコウガミさんの3人を招いて、座談会をやります。日程は4月1日の午後帯。ニューミドルマン養成講座第6期のプレイベントしてやるのだけれど、この3人には、第6期のゲスト講師もお願いする予定。詳細は、東京コンテンツプロデューサーズラボのサイトを見て下さい。まもなく情報解禁のはず。



それから、「テクノロジーで音楽を拡張する」をテーマに始めた、ライブイベント&メディア「TECHS」を今年は強化していきたい。ライブイベントのためにハッカソンを開催するなんて、これまで無かった試みと思う。プログラマー、デザイナー、映像クリエイターなどと同じ目線で、一緒に新しい音楽シーンを作っていきたい。
 TECHS2@六本木SuperDeluxeは2月14日に行いますでの、ぜひぜひご来場下さい。

 おまけとして、過去の元旦ブログはこちら。同じこと言ってるなとか、日本の動きはおせーなとか思いながら、読んでみて欲しい。





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