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「Twitter読書会」でつながる本と人

―1―

「本日のTwitter読書会、参加人数0人」

ある日の夜、Twitterを開けると、こんな呟きがタイムライン上に並んでいた。呟いた本人と親しかった僕は「読書会」という見慣れないイベントの名前に惹かれて、

「Twitter読書会っていいですね。あるならぜひ参加したいんですが」

と、リプライを返した。相手からの返事はまもなく返ってきた。

「@yuriikaramo主催して下さい!」

こんな些細なやりとりが全てのはじまりのきっかけだった。

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Twitter読書会とはその名の通りTwitterの中で行われるイベントだ。月に一回、課題図書と日時を告知して、24時間ずっと作品への感想や意見を呟き合う。
「#tw_dokusyokai」というハッシュタグを使って、一つの小説の感想を書いたツイートを集めるので、いつ、誰が呟いたかを全員が確認することができる。もちろん、RTやリプライを使って会話のようなやりとりをすることも自由だ。参加条件もないので、誰でも参加することができる。

http://twitter.com/#search?q=%23tw_dokusyokai

僕はこのTwitter読書会で運営と司会を行っている。課題図書と日時を決めて、はい、呟いてください!と発表する。これまでにやった課題図書は以下の通り。

第一回 舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』
第二回 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
第三回 舞城王太郎『ビッチマグネット』
第四回 サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
第五回 伊坂幸太郎『グラスホッパー』
第六回 村上春樹『風の歌を聴け』

このように、幅広いジャンルの小説を取り扱っている。課題図書の選考は、僕が候補を絞って参加者に投票を呼びかけることもあれば、その時の勢いで決まることもある。ただ「ビッチマグネット」の回では、「文学賞メッタ斬り」のTwitterでの芥川賞予想とコラボ企画をやるなどの特別な機会に巡りあったりもした。最近では小説家の新城カズマ『15×24』という小説について作者本人にインタビューを行い、その模様をユーストリームで生配信するといったこともあった。

ルール決めはTwitter上のたくさんの人たちから意見を頂いてそれを取捨選択しながら作り上げていった。Twitterというフローな環境で行われる企画であるため、厳しい規定は作らないようにした。課題図書を一冊に限定することや、ハッシュタグの使用も様々な意見を元に作られたものだ。
Twitter「読書会」といっても、最近流行っているようなビジネスマンのための勉強会や、大学で行われるような偏差値が高い人達の交わす思慮深い会話をするわけではない。

例えば、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の回のログを抜粋してみる。

『ジョバンニは、もしかして女の子の設定だった?とは、感じましたね。女の子に嫉妬している様子はまさに彼氏の浮気を疑う女の子のそれでしたし、サネリがジョバンニに嫌がらせするのも、男の子が好きな女の子にちょっかい出す感覚かな、と。 #tw_dokusyokai』

『てことはジョバンニはリア充になれなかったってことか(´;ω;`)ブワRT: #tw_dokusyokai こういうこと書くとあれですけど、カンパネルラ=リア充、ジョバンニ=非リアという印象は受けます。』

『その発想はw RT: BL小説にしか見えないw RT チケットの下りで「どうしてって、来ようとしたから来たんです」って言われて「?」状態のジョバンニのそばで、顔真っ赤にして照れてる(?)カンパが怪しいですね。 #tw_dokusyokai』

TL上では、宮沢賢治童貞説についての話や、主人公のジョパンニとカンパネルラの関係がボーイズラブのそれではないかという指摘、ジョパンニの性別ははっきりとはしていないので実は女の子ではないかという意見が交わされる等と様々だ。ただ、皆が小説の謎な部分や理解できない部分に自分なりの考えを持って理解しようとしている。読書会を開く度にこんな解釈が可能なのかと目を見張るものがいくつもあるのだ。

―2―

先ほど、Twitter読書会は僕が運営していると述べたけれど、本当のところは違う。確かに企画決めや進行はしているけれども、それはあくまで他の人達がよりつぶやきやすいようにしているだけだからだ。その点では僕もTwitter読書会のパーツの一つに過ぎない。ある人のつぶやきが他の誰かのつぶやきを誘発し、それが全体へと広がっていくという意味で、皆が読書会を運営し、広げているのだ。
例えば読書会では時々、「ハッシュタグ漏れ」という事態が起こり、つぶやきがログとして残らないにことがあるが、これを解消するために、プログラムに詳しいある方が「読書会BOT」というつぶやきを自動で抽出してくれる装置を制作してくれた。
また、僕が使用しているアイコンの女の子を多くのイラストレーターの方が描いてくれて、イラストで読書会に花を添えてくれる。
最近では読書会wikiも作成され、回を増すごとにその内容は充実している。それぞれの得意分野を生かしてTwitter読書会に参加し、より盛りあげようとする。自動で生成し、盛り上がっていく。

運営だけに限ったことではない。例えば、一度スピンオフ企画として「本の表紙特集」をした時のことだ。本の表紙で好きなものを紹介し合うという趣旨の企画だったのだが、いつの間にか自宅の本棚を公開しようという流れへと変化していた。誰かがそうした呟きをすることで自然に予期していたこととは違う方向に広がっていくこともある。それはまるで僕らが普段やるような会話だ。瞬発的にみなに広がっていき、気がつくと誰が起こしたのか分からないのに盛り上がっていく。一人一人が流れを変える力を持っているのだ。Twitter読書会はそうしたものの集積によって成り立っている。

―3ー

最後にちょっとだけ自分の話をする。

僕が高校生の時、一番楽しかったのはクラス対抗のバレーボールでも体育祭、文化祭でもなく、昼休みでの友人とのダラダラと過ごした時間だった。空いた教室や男子トイレで、別々のクラスの男たちが集まって、CD交換や昨日読んだ本の感想や誰と誰が付き合っているなどの、くだらない雑談をしていた。
その時間は、はっきり言ってしまえば無駄な時間だった。空いている時間を使って英単語を暗記したりでもすればよかったのだろうし、実際そうやって勉強していた人もいた。僕らはそれが息苦しくてしょうがなくて逃げて集まってきたものたちばかりだった。しっかりしろと親にも先生にも叱られた。
だけど、その時に聴いた音楽、読んだ小説のことはやたら心に残っている。そして、なによりみんなと交わした会話が楽しかった。

Twitterをやる時間なんて無駄なものだ。暇にまかせてTLを眺めて、他人のつぶやきにちょっかいを出したり、反応を見て笑ったり。だけど、それは楽しい。たくさんのつぶやきの一つにはげまされたり、学んだり、人生変えられたりすることだってある。
Twitter読書会は小説をめぐって色んな人達が集まって感想を投げていく。それで、人と人とが出会って対話が生まれることもある。小説をきっかけにした出会いはきっと強く残る。(僕がそうだったのだから)

幸運なことにTwitter読書会を皮切りにして様々なコンテンツを元にした会が発足した。レトロゲームをプレイしながら皆がその状況をつぶやき合うという「れとまち」は、遂にネットの枠を飛び越えてお台場で大規模なイベントまで発展した。
「Twitter映画会」や「Twitter音楽会」なども立ち上げられ、今も活発なつぶやきが飛び交っている。このような会が次々と発足したのも何か自分の好きなものを共有したい、紹介したい、コンテンツを通じて出会いたい、下らなくてもいいような話をしたい、という皆の持っていた願いが形になったからだ。Twitterも読書会も今後どうなるかなど全く分からない。しかし、この場を通じて出会った人たちとのつながりが、大切なものになるために続けていきたい。そのかたちはどう変わろうと、ものを通して人が出会うことの素晴らしさは、残り続けていくだろうと信じている。

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