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ゲームにおける物語性について - 魔王14歳

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(「週刊メルマガクリルタイ」Vol.30(2010/02/22 配信分) の原稿を再掲)

長大なストーリーを前面に押し出したビデオゲームが増えてきた、と言われはじめてから、既に長い年月が経ちました。キャラクターの複雑な心理描写や、緻密な伏線と起承転結からなるプロット構成、二転三転する大胆なシナリオ展開など、物語が評価されて「名作」と呼ばれるようになったゲームは数知れません。映画や小説と同様に、ゲーム作品を「物語を表現するメディア」として位置づけても、決して無茶な主張ではないでしょう。

ここで、「優れた物語性を持つゲーム作品があるのはよいとして、それをゲームで表現する必要はあったのか?」という疑問が生まれます。物語を表現したいなら、映画や小説、アニメや漫画などの媒体の方が適していたのではないか? という疑問です。

たしかに、物語を表現する上で、ゲームには制限が多いといえます。かつてドット絵が視覚表現の主流だったように、ゲームの表現力は限られています。画面に「お話」をえんえん映し続けるだけではゲームにならないので、プレイの合間合間で断片的にストーリーを進行させる形にせざるをえないでしょう。映画や小説の感覚からすると、ゲームは物語を表現する媒体として非常に不便なように見えます。ですが、そういった一見不便な点にこそ、ゲーム特有の物語表現が潜んでいるのです。

物語は人間の脳が見出す



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| Player      |
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いきなりですが、これをゲーム画面だと思ってください。プレイヤーは、画面上の丸っこい生き物を操作します。キャラクターを動かしてゲームを進めろ、と言われたら、まずはどうするでしょう。なんとなく、キャラクターを右方向に移動させればいい、と思った人が多いのではないでしょうか。右に行けば、画面がスクロールしてその先に進めそうな気がします。逆に左方向は、画面端で行き止まりになっていそうです。

ほとんどのアクションゲームは、スタート画面で「どちらの方向へ進め」なんて丁寧に書いていません。でも多くのプレイヤーは、何の疑問も持たずに正しい方向へと進むでしょう。また別の例として、もしプレイヤーキャラクターがモンスターに攻撃されそうになったら、「避けろ」と言われなくても避けるはずです。逆に、お金や果物などのアイテムが道ばたに落ちていたら、自ら接触しに行くでしょう。

アクションゲームをスタートした際右に進みたくなるのは、画面構成による心理誘導の効果です。危害を加えられそうになったら、避けるのが当たり前。落ちてるものを拾うのはふつう行儀の悪い行為ですが、それを特に問題にしないのがゲームの世界の「お約束」です。こういった直感的なデザインを無数に積み重ねることによって、ひとつのゲームが形作られています。

直感的に操作できるゲームは、少なくともデザイン性において優れたゲームです。

ある程度ゲームをやり慣れて、「お約束」を踏まえているプレイヤーなら、この先の展開も経験的に予想できます。敵を倒しながらどんどん先に進んでいけば、そのうちボスか何かが出てきて、そこを乗り越えればステージクリア。これを何度も繰り返しているうちにラストボスとの戦いになり、そいつを倒せばエンディングだ、と。あまりにも当たり前の話に思えますが、こうやって「プレイヤーの頭の中で話が組み立てられていく」働きは、本稿のいちばん大事な要点です。

人間が「物語」を解釈する過程も、実はこの働きの延長上にあります。たとえば、ゲームの冒頭に勇者と魔王が出てきたとしましょう。これだけで、「これから勇者が魔王を倒しにいくんだな」というベタなストーリーラインが想像できます。たぶん今、世界は魔王の軍勢に脅かされていて、勇者が魔王を倒せば世界に平和が戻るはず。そんなアバウトな文脈まで、プレイヤーは頭の中で勝手に補完してくれます。

ここでプレイヤーの先入観を逆手にとれば、「実は魔王の方が善玉だった」といったトリッキーな仕掛けを施すことができます。それはそれで非常に面白い話題に発展させられるのですが、今回は「お約束」をそのままベタに利用する方向で考えます。

実は「お約束」を採用した時点で、物語が成立する必要最低限の要素は揃った状態になっています。「悪いやつを倒しに行く」骨格としてはこれで十分。『スーパーマリオ』だって『ロックマン』だって『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』だって、この文脈さえ読み取れていれば「物語」を見出すことができるはずです。もちろんこのままでは薄味にすぎますから、さらにいろんな表現を盛り込んでいくわけですけど、根本的な発想はここにあります。

以上の内容は、別にゲームに限った話ではありません。推理小説だって、殺人が起きれば「探偵が推理して犯人を当てる」流れが自然と想像できます。ただしゲームの場合、「特に説明しなくても受け手が勝手に物語を読み取ってくれる」作用にとりわけ大きな比重が置かれています。膨大な描写量・情報量が表現の前提となっている映画や小説と異なり、かつて10×10ドットの中でエイリアンやら宇宙船やらを表現しなければならなかったゲーム表現には、大胆な「省略」の思想があるからです。

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