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達成主義ではなく

 子どもが学ぶとき、あらゆる感覚を動員し、どうなっているかを自分で納得し、それを臨機応変に使いこなそうとします。これは、幼児が物事を学んでいるさまを見ると、よくわかります。

 でも、大人たちは、いつのまにか結論の塊になっています。この学びのプロセスを忘れてしまっています。
 子どもが、九九が言えたとか、難しい漢字を書けたとか、ご挨拶がちゃんとできたかとか、そんなことばかり見るようになります。

 そういう大人たちが教育をどうするかを決めると、何を達成すべきかの一覧表を作ります。

 教育は、いつのまにかその一覧表を達成することになってしまいます。
 学校は、その一覧表を教え込むために作られ、教師たちが雇われます。一覧表達成の、義務も、見栄も体面も生まれます。

 目標が先にありますので、どうしても教育は訓練的、注入的になります。
 子どもたちに、賞罰に訴えてでも、競争させてでも、結果を出させようとします。

 さらに、入試競争もあります。
 さらに、社会そのものが地位・序列と、競争でできています。子どもたちは、生き延びるための知識・技能だけをかき集めます。
 虫の動き、雨の音にも感動できていた子どもたちが、いつのまにか、点数を気にし、借り物の人生訓の丸覚えで生きるようになります。

 それで、結局、結論の塊である大人たちが育ちます。
 そして、ちょっと修正された一覧表を作ります。それもしょせんは一覧表です。

 悪循環が続きます。

 学びは、雨の音に聞き入ることの中にあります。自転車に乗れるようになる身体の動きの一つ一つの中にあります。言葉にならないたくさんの感情に、静かに浸ることにあります。
 教育は、一人一人の学びを援助し、保護することです。それは、一人一人が生きていることに対する気遣い、愛情の中から生まれてくるものです。

 集団訓練を基本とする近代義務教育と、入試による競争主義は、部族社会を乗り越え、近代産業を興すための必要悪だったと思います。その成果も大きかった。けれど、不安で攻撃的で、権威に弱い人間をたくさん生み出しました。

 そんなことをしなくても、われわれの社会は、幸福な個人と高度な科学技術を両立させられるだけの文化的成熟に達していると思うのです。

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