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2つの出生力推移データが示す日本の「次世代育成力」課題の誤解-少子化社会データ再考:スルーされ続けた次世代育成の3ステップ構造- - 天野 馨南子

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はじめに

いまや日本において少子化が進んでいることを知らない人はほとんどいなくなった。しかしその状況を正確に把握しているかといわれれば、漠然と把握している人がほとんどのように思う。

筆者のもとに中学生から大学生までの学生が少子化問題をレポートするためにヒアリングにやってくる。しかし今のところその100%が「少子化対策と保育所・保育の質」「少子化対策と待機児童」「女性の就業と子育て支援」を少子化対策として考えたい、といってくる状況である。
 
残念ながら、少子化対策というのであれば、子育て支援はその一部でしかない。そうであるにも関わらず、彼らがいまだに問題の本質(または全て)であるかのように考えているのは日本の少子化問題の深刻さを表しているように思う。
 
次世代が多く育成される(次世代育成力の向上)ためには、一体どのようなステップが必要であろうか。

ここで学生たちが考えてくる「子育て」から川上へと逆流する形でステップを考えてみよう。

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極めてシンプルな話であるが、子育てをするには子どもが産まれなくてはならない。そして子どもが産まれるためには男女のカップリングが行われなければならない。

つまり、「次世代育成力」の弱体化である少子化の要因を考えるには、当然この3ステップ「カップリング力」「妊娠・出産力」「子育て支援力」のそれぞれが考察されなければならないはずである。
 
しかし、経済や社会を学ぶ学生が持参するのは「子育て支援力」考察ばかり、という状況には悲しい気持ちにならざるを得ない。

合計特殊出生率のうみだす誤解

統計上、出生力の推移を観察するために有効な指標が2つある。
 
「合計特殊出生率」と「完結出生児数」である。
 
合計特殊出生率(以下、出生率)はあるエリア(日本なら日本、大阪なら大阪)に暮らす15歳から49歳の女性の「代表的な出生力」を推計する統計上の指標である。
 
よく勘違いした記述を見かけるが、決して(そのエリアに生まれた赤ちゃん)/(そのエリアに住む出産可能年齢の女性)といった単純平均ではない。

「この町から若い女性が沢山よそへいっていなくなったから出生率が下がった」などというのは大きな誤解である。

そのエリアに残った若い女性の出生力が高ければ出生率は下がらない。各年齢の女性の出生力の積み上げ計算で出生率は計算されるからである。
 
しかし、そのことがわかっても、さらに誤解が生じやすい指標でもある。

この「そのエリアの女性の出生力が高ければ」の前提として、「カップリング力が高いこと」がある。理由は2つある。出生率の分母の女性には、未婚女性も既婚女性も含まれていること、そして、日本では長期に婚外子比率が2%前後で推移しているため、ほぼ既婚女性から子どもが産まれているからである。ゆえに分母の既婚女性割合が減少した方が、出生率も下落する可能性が高まるのである。

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すなわち、出生率が下がる要因は2つあることになる。

(1)エリアの結婚した女性が産まなくなる
(日本は婚外子が2%に過ぎないため婚外子のケースはここでは除外する)

(2)エリアの男女が結婚しなくなる

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条件が2つあるにも関わらず、いまだに出生率が下がると「(既婚)女性が産まなくなった、産みにくい環境だ」ばかりが注目されがちである。

筆者の知り合いの女性は「最近の嫁は自分の小遣いほしさに結婚しても仕事ばかりするから、子どもが産まれないんだよ。」という老年男性の言葉を聞いて耳を疑ったという。
 
先述の「少子化対策は子育て支援策オンリー」な視点の学生たちも、少子化を考察する時、「(1)エリアの結婚した女性が産まなくなる」のみ着眼していると考えられる。
 
「結婚しても仕事を続けるためは、日本は子どもが産めないような環境だ。それは保育園が足りないからである。保育園がないと仕事を断念しなければならないからである。だから子どもが産まれないのだ、以上。」

これは間違いではないが、少子化の一面でしかない。出生率が示しているもう一つの「(2)「エリアの男女が結婚しなくなる」、すなわち「カップリング力」をスルーしている点で不十分である。

しかしこのような完全スルーの光景は、先ほどの老年男性の例だけではなく、あらゆる世代の少子化議論で普通に見受けられている。

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