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- 2016年12月23日 11:50
五輪調査チームの総括(インタビュー記事)
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調査チームは、12月22日に正式解散しました。今後は特別顧問、特別参与として担当部局とともに活動します。なお、調査チームの活動を振り返って以下は12 月 21 日朝日新聞オピニオン(インタビュー)を掲載。
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東京都は変わるのか 都政改革本部特別顧問・上山信一さん
大阪府・市に続いて東京都でも目に見える「改革」が進められようとしている。しかも「豊洲」「五輪」と、みんながびっくりした課題を抱えて。東西の自治体トップから「特別顧問」を託された元官僚で元外資系コンサルタントは何を見て、どう変えようとしているのか。その手法に問題はないのか。
【特集】小池都政
――東京五輪・パラリンピックの三つの会場について、かえるかえると言って結局かわりませんでした。小池百合子東京都知事が負けたと見られていますが。
「大事なのはコストを抑えることです。私たちは2兆円3兆円かかりそうだという懸念からスタートしました。どう抑え込むか。その仕組みをどう作るか。日本の組織委員会と議論してもらちがあかない。そこで『3兆円かかるかもしれない』と発信したら、IOC(国際オリンピック委員会)がチャンスとばかりに反応した。今後、負担をいやがる住民の反対で招致都市がなくなることを恐れたのです。それで都、組織委、IOC、国の4者協議が出来て、とにかく総コストを早く開示しよう、都民の負担を下げようと一致した。こうして組織委に外圧がかかったのです。これが大事です」
――でも会場変更はできませんでした。
「目的はあくまでも最終コストの抑制です。すでに着工していたものを含め都の3施設で合計410億円、約2割強を削減できた。それに、まず隗(かい)より始めよです。IOCに対し、都は着工後でも見直す、総コストの抑制に手段は選ばないとアピールし、組織委にもコスト抑制の方法を教えた。会場変更は一石三鳥を狙ったわけです。今後の課題は個々の支出の抑制と管理です」
――今でもボート・カヌーの会場は宮城県の長沼の方が良かったと思いますか。
「はい。でも現実にできないものはしかたない。私はテクノクラート(技術官僚)なので『思い』で仕事はしません。でも小池さんには被災地への強い思いがありましたね。そもそも復興五輪で始まったのにと」
――築地市場の豊洲移転も大変な課題です。問題の本質はどこにあると見ていますか。
「豊洲市場も五輪の施設も極端に高価なハコもの建設の話です。特に豊洲は、いくら規模が大きく土壌汚染があったとしても5800億円もかかるのは不思議です。一つの県の年間予算の額です。どうやったら使えるのか。計画から工事までのすべてが不透明。どこかにお金が消えたと思われてもしかたがない」「もう一つは湾岸開発の視点。豊洲も五輪施設も、都は埋め立て地に建てたがった。確かに移転計画当時はトラックのために広大な場所が必要とされました。でも今やインターネットで売買できるし、物流基地は郊外でいい。民間企業なら築地は残して観光名所に改造するかもしれません」「都には、ひたすら海を埋め立てて開発事業を続けたいという衝動と組織の慣性があるのでしょう。江戸時代からのDNAかもしれない。それが豊洲市場や五輪施設を作らせている気がする。とにかく海を埋め、何かを建てる。惜しげもなく金を使うことが自己目的化しているように見えます」
――豊洲の建物の下は盛り土ではなく空洞でした。でも、いつ、誰が、なぜ決めたのか、なかなかわかりませんでしたね。
「石原慎太郎さん以降、歴代の知事が組織をきちんと管理してこなかった。ガバナンス(統治)と情報公開の不足です。部下に全部まかせ、議会ともなあなあで、トップが事業をチェックしなかった。お金があるから、利害調整もあまり必要なかったのでしょう。ほかの自治体では20年ぐらい前からお金がなくなり、首長が『あきらめてください』と頭を下げて調整してまわった。その中で情報公開が進み、住民の意識も上がった。でも都は違いました」
――そこも改革しますか。
「いずれ東京も人口減少に転じます。超高齢化社会の時代に合わせて、当然、変えていかないと」
――ところで、都庁に来て、見て、聞いて、感じたことは。
「最初の印象は『現状肯定型ばかり』です。五輪の問題で言えば小池さんから『一体いくらコストがかかるのか、本当にあれだけの施設が必要か』という問いが与えられました。それで都の担当部署をヒアリングすると、答えはいつも同じ。『IOCとの協約で守秘義務があって話せない』『資料は出せない』『議会に説明したことは変えられない』……。公務員が保守的なことには驚きませんが、都民への負担や情報公開の意識が薄いと気づきました」
――それでどうしましたか。
「IOCとの協約を見せて下さいと言ってもなかなか見せてくれない。小池さんが『知事室に持ってきて下さい』と言って、やっと知事室に届けられました」
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東京都は変わるのか 都政改革本部特別顧問・上山信一さん
大阪府・市に続いて東京都でも目に見える「改革」が進められようとしている。しかも「豊洲」「五輪」と、みんながびっくりした課題を抱えて。東西の自治体トップから「特別顧問」を託された元官僚で元外資系コンサルタントは何を見て、どう変えようとしているのか。その手法に問題はないのか。
【特集】小池都政
――東京五輪・パラリンピックの三つの会場について、かえるかえると言って結局かわりませんでした。小池百合子東京都知事が負けたと見られていますが。
「大事なのはコストを抑えることです。私たちは2兆円3兆円かかりそうだという懸念からスタートしました。どう抑え込むか。その仕組みをどう作るか。日本の組織委員会と議論してもらちがあかない。そこで『3兆円かかるかもしれない』と発信したら、IOC(国際オリンピック委員会)がチャンスとばかりに反応した。今後、負担をいやがる住民の反対で招致都市がなくなることを恐れたのです。それで都、組織委、IOC、国の4者協議が出来て、とにかく総コストを早く開示しよう、都民の負担を下げようと一致した。こうして組織委に外圧がかかったのです。これが大事です」
――でも会場変更はできませんでした。
「目的はあくまでも最終コストの抑制です。すでに着工していたものを含め都の3施設で合計410億円、約2割強を削減できた。それに、まず隗(かい)より始めよです。IOCに対し、都は着工後でも見直す、総コストの抑制に手段は選ばないとアピールし、組織委にもコスト抑制の方法を教えた。会場変更は一石三鳥を狙ったわけです。今後の課題は個々の支出の抑制と管理です」
――今でもボート・カヌーの会場は宮城県の長沼の方が良かったと思いますか。
「はい。でも現実にできないものはしかたない。私はテクノクラート(技術官僚)なので『思い』で仕事はしません。でも小池さんには被災地への強い思いがありましたね。そもそも復興五輪で始まったのにと」
――築地市場の豊洲移転も大変な課題です。問題の本質はどこにあると見ていますか。
「豊洲市場も五輪の施設も極端に高価なハコもの建設の話です。特に豊洲は、いくら規模が大きく土壌汚染があったとしても5800億円もかかるのは不思議です。一つの県の年間予算の額です。どうやったら使えるのか。計画から工事までのすべてが不透明。どこかにお金が消えたと思われてもしかたがない」「もう一つは湾岸開発の視点。豊洲も五輪施設も、都は埋め立て地に建てたがった。確かに移転計画当時はトラックのために広大な場所が必要とされました。でも今やインターネットで売買できるし、物流基地は郊外でいい。民間企業なら築地は残して観光名所に改造するかもしれません」「都には、ひたすら海を埋め立てて開発事業を続けたいという衝動と組織の慣性があるのでしょう。江戸時代からのDNAかもしれない。それが豊洲市場や五輪施設を作らせている気がする。とにかく海を埋め、何かを建てる。惜しげもなく金を使うことが自己目的化しているように見えます」
――豊洲の建物の下は盛り土ではなく空洞でした。でも、いつ、誰が、なぜ決めたのか、なかなかわかりませんでしたね。
「石原慎太郎さん以降、歴代の知事が組織をきちんと管理してこなかった。ガバナンス(統治)と情報公開の不足です。部下に全部まかせ、議会ともなあなあで、トップが事業をチェックしなかった。お金があるから、利害調整もあまり必要なかったのでしょう。ほかの自治体では20年ぐらい前からお金がなくなり、首長が『あきらめてください』と頭を下げて調整してまわった。その中で情報公開が進み、住民の意識も上がった。でも都は違いました」
――そこも改革しますか。
「いずれ東京も人口減少に転じます。超高齢化社会の時代に合わせて、当然、変えていかないと」
――ところで、都庁に来て、見て、聞いて、感じたことは。
「最初の印象は『現状肯定型ばかり』です。五輪の問題で言えば小池さんから『一体いくらコストがかかるのか、本当にあれだけの施設が必要か』という問いが与えられました。それで都の担当部署をヒアリングすると、答えはいつも同じ。『IOCとの協約で守秘義務があって話せない』『資料は出せない』『議会に説明したことは変えられない』……。公務員が保守的なことには驚きませんが、都民への負担や情報公開の意識が薄いと気づきました」
――それでどうしましたか。
「IOCとの協約を見せて下さいと言ってもなかなか見せてくれない。小池さんが『知事室に持ってきて下さい』と言って、やっと知事室に届けられました」