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那覇地検二度目の不起訴(その1)

6月28日、那覇地検が尖閣事件の中国人船長に対して再び不起訴という判断を下した。

これは私が当ブログで紹介した、

4月18日付 公務執行妨害

6月22日付 外国人漁業の規制に関する法律違反、艦船損壊、漁業法違反

に対する「起訴相当処分」を受けてのものである。

この日付けだけを見ても、おかしいと気付かれるかたがおられるかもしれないが、起訴猶予という判断を下すのに、公務執行妨害という一つの罪状について4月18日から2カ月ちょっとかかったのに、6月22日付の3件もの罪状については一週間とかからず結果が出ている。

6月22日から28日までと言えば議決の日、発表の日と土日を除けば実質3日間しかない。

つまり、一つの罪状につき一日で判断をしたということで、公務執行妨害の判断にかかった日数と比べると異様に早い。

これを見て私が思い出したのが、今年の1月20日に6月22日付の3件(外規法律違反、艦船損壊、漁業法違反)が石垣海保から那覇地検に書類送検され、その翌日の1月21日起訴猶予処分が下されていたということである。

このときも公務執行妨害については約4カ月もかけて処分を決定しているのに比べこの3件についてはたった1日で処分を下している。

ここで捜査の一般的な流れを簡単に説明しよう。

通常、任意捜査でも強制捜査でも警察や海上保安庁(以下、警察等)の捜査が終われば、警察等から検察庁に捜査の結果をまとめた「書類」が送られる。

これを送致と言うが、一般には書類送検と呼ばれている。

この書類には、警察等が綿密に捜査した内容がびっしりと書き込まれており、それを検察官が読み起訴をするかどうかを決定する。

内容は多岐にわたり、簡単な事件(罪状が一つで被疑者が犯行を認めている)でもかなりの厚さになり、読むだけでも相当な時間がかかる。

それを3つの罪状についてたった一日で判断するというのは如何に優秀な東京地検の検察官でも容易でないどころか、明らかに異様である。

そして、この時もマスコミ各社は、この点について触れなかったので、中国人船長が、この3つの罪状で書類送検されていることすら知らない人が多い。

なぜ、この3つの罪状をスピード判定したかを考えてみると、この3つの罪状については、あまり世間に知られたくなかったのではないかと推測できる。

なぜ、世間に知られては困るのかというと

外規法律違反

・外国人が、日本の領海内で操業(魚を捕る)することが違反であり、その一部始終はビデオにはっきりと映っている。

・しかも、この法律は公務執行妨害に比べ罰金の額が高く、しかも船体、漁具を没収できるとされている。

・また、ビデオをよく見ていただければ分かるがあの当時、多数(30隻とも言われる)の中国漁船が日本の領海内で操業していたので、そこに触れられたくなかった。

艦船損壊

・被害金額が約2000万円と巨額で、賠償に応じていないという事実に触れられたくなかった。

漁業法(立ち入り検査忌避)

・他の中国漁船との兼ね合いがあった。

捜査当局が隠そうとする理由は、この通りに推測できるがマスコミが報じない理由は分からない。

そして那覇地検が発表した、今回の起訴猶予の理由が、また笑ってしまう。

「計画性があったとまでは認められず、再犯の恐れもないと判断した」

計画もなく、何百キロも離れた他国の領海に魚を捕りに来る人がいるのだろうか?いくら国が違っても常識的に考えれば、おかしく私は、そのような人間を見たことがない。

しかも、この中国人船長は、「記録上、日本領海内の魚釣島付近で本件以外にも違法操業をしたことがあり、海上保安庁の巡視船に拿捕されることはなく,射撃をされることもないと考えた上、日本領海内で違法操業をしている常習犯である」と検審で指摘されている。

そして中国人船長は帰国後「日本(の取り締まり)は怖くない」「また釣魚島に行き、漁をおこなう」と、再び同様の犯罪行為を行うと公言しているのに、再犯の恐れがないとは、どういう論法であろうか理解に苦しむ。

また、尖閣諸島海域の現状について補充捜査をし「船長による違法操業は確認されておらず、他の中国漁船による操業も激減しているのも考慮した」と述べているが、何の補充捜査か知らないが、冬の間や梅雨前線が南にあるときは海が時化て漁にならないのと事件以降は海上保安庁が積極的に警備(巡視船の数を増やし領海に入る前に警告している)をしているおかげで漁船の数が減っていることを知らないのだろうか。

おまけに、「中国の漁業監視船が尖閣諸島の本邦領海付近に接近したとの報道が多くなされており,今後の紛争が懸念される。」と検審が指摘しているのにである。

こんな理屈が通るのであれば、痴漢多発地域で夜の巡回を警察が強化したため、痴漢の被害が減った一方で昼間の空き巣狙いが増えたが、痴漢の被害が減っているので痴漢犯の起訴を猶予すると言う様なものである。

よくこんなことが臆面もなく言えるのかと感心してしまう。

最初のころは、検察も官邸からの命令で仕方なしにやっているのだと同情的であったが、最近は組織を守るために能働的にやっているのではないかと思い始めてきた。

嘘を一回吐くと、その嘘のためにずっと嘘を吐き続けなければいけなくなる。

過ちを認めてしまえば楽になるのにと、一般人の私などはそう思うのだが、頭のいい人に限って自己の過ちを認めず、無理やり正当化しようとする。

それがいかに見っともない事かは、本人は気が付かない、いや気が付いていても、それを認めようとしない。

私から見れば、如何にもしんどい生き方である。

しかし、もっと大きな問題は権力の監視役が存在しないことである。

昔から権力は、ブレーキがなければ暴走するものであるということは歴史が証明してきたが、現代においてはマスコミが、その役割を果たすべきであるのに、こと検察に対しては一様に腰が引けている。(ごく少数ではあるが批判している人たちもいるのだが)

自民党政権の末期、本来の権力の行使ではなく、どうでもいい事(漢字を間違える、バーに飲みに行く)を監視することには異様に熱心であったことを見てもマスコミが本来の役割を果たしていないことが良くわかる。

今回の、この起訴猶予の理由について4月18付、6月22日付の2つの議決文を読めば、(読まなくても普通は分かるが)明らかに検察が嘘を述べていることが分かるのに、山ほどあるマスコミ(大手、弱小、フリーを問わず)が、誰も何も突っ込まないというのは信じられない。

もっと重要なことは、中国人船長が「日本の領海内」で操業していたという認識を持っていたことである。

当時、中国側が主張していた「中国の領海内で操業していた漁船が日本の巡視船にぶつけられた。」という根拠が全くなくなるのである。

何しろ当の本人が日本の領海内で違法操業を行っていたことを認めているのだから。

中国側は、当時、何を根拠に日本へ様々な圧力(様々な交流の停止、レアアースの輸出停止、一般企業の社員の拘束等)をかけていたのか、何を根拠に反日デモを行わせていたのかを説明できなくなるのである。

それよりも、なぜ、日本政府はそのこと(中国側に何の根拠もないこと)を知りながら根拠のない様々な中国からの嫌がらせを甘受していたのかを日本国民に対して説明する義務がある。

日本政府は当時いかなる理由により、どれだけの損害を日本国民に与えたのか説明しなければならない。

これらのことに対して何の疑問も持たなかったのか、大手マスコミは与えられた情報を、そのまま垂れ流し、しかも扱いを小さくした上に「中国に帰国した船長が刑事手続きに応じる見込みは薄く、裁判が開かれる可能性は低い」と、いかにも起訴するだけ無駄というようなコメントをくっつけている。

週刊誌なども日ごろの勇ましさが影をひそめ、この問題には触れず、私の現状を取材に来る始末である。

この国には、本当のジャーナリストは一人もいないのかと絶望的になる。

そして報道されないことによって半年前にはあれほど大騒ぎした事件を国民は事件を忘れ去る。

今までに何度も繰り返されてきた、いつものパターンである。

何と日本国民は、情報操作をされやすいのだろう。

私も、真実を知らなければ、そうなっていただろうということを考えると、マスコミの力の大さと、嘆くべき現状が実感できる。

その原因はマスコミだけではない。

那覇地検二度目の不起訴(その2に続く)

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