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志の大小はどうだっていい。人と比べずに、信じた道を進める人が強い──ヤフー伊藤羊一さん

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中川 健吾


自分を見つめる作業をするときに、おすすめの方法はありますか?

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過去の出来事や幸福度をもとに自分を振り返る、「ライフラインチャート」を描くことですね。そうすれば、人生におけるプラスマイナスの時期が視覚化され、何がよくて何がよくなかったか、当時何を考えていたか、驚くほど多くのことがわかるはず。

そのなかで今の自分に影響を与えたものが価値観で、譲れないものが軸、それらを踏まえてやりたいことが志です。

日々考え、振り返り、新発見を得る――この繰り返しで価値観が醸成される


中川 健吾


わかりやすいです! では、スキルは?

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スキルは、主に思考力とコミュニケーション力、専門スキルに分解できます。思考力、つまり考える力は本当に大事ですよ。でも、それだけじゃ足りません。考えたことを人に共有し、意思疎通するコミュ力がなければ、行動に移せないですから。

中川 健吾


ちなみに、伊藤さんはこれまでのキャリアのなかで、行動・スキル・マインドの三角形をどう作りあげてきましたか?

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主に2つの転機があります。1つめは30歳になる前くらいの銀行員時代のとき。周囲のメンバーに助けられたおかげで、貸出案件を成功させたときのこと。それまでは会社で必須とされた通信教育をほとんどやらずに、スキルアップを怠っていました。マインドも弱く、スキルも育たず、行動してもうまくいかなかった。

ただ、いい結果が出たことで、次もうまくいくようにと、スキルを鍛えるようになったんです。そうするうちに、スキル・マインドを鍛えて行動に移す……といったサイクルが自然と回り始め、自分に与えられたミッションをこなせるようになりました。

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中川 健吾


すごくいい流れですね。

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ええ。2つめは、東日本大震災の年にあったこと。流通業界で働いていたぼくは、さまざまな観点で大きな決断に迫られることになりました。

例えば震災後、物流が復活しても、電池や水などは極めて品薄な状態が続きました。この貴重な電池や水を通常どおり、全国のお客さまが注文できるようにする選択肢もありましたが、各種インフラが壊れた状態にある東北のお客さまのほうが、そういった商品を必要としていることは明らかでした。そこで一時的に、東北の会社に限り、電池を購入可能となるよう、ご注文を制限したんです。

平常時とは違うけれど、今、東北のお客さまに優先的に注文いただくのがいい、と自分で決断を下しました。「上からふられたものをやるだけじゃ、だめなんだ」と、44歳にして気づいた瞬間でした。あの一連の経験でマインドがぐっと鍛えられたと思います。

中川 健吾


利益を得られる人と不利益を被る人が出たり、一部から反発も寄せられたりする、難しい選択だったのではと思います。

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正しいかどうかわからないことを決めないといけないわけですからね。どうするのがベストなのか、メリットとデメリットを並べて比較検討しますが、そもそも100%の答えなんてないんです。自分の価値観や軸にもとづいて、自分はこうだと信じた道、心の声に従って選んでいくしかないのかなと。

中川 健吾


潜在的だったものが、大きな出来事が起きたことで顕在化されるというのが、価値観が形成される流れなのかなと思うんですが、伊藤さんはどうお考えですか?

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同感です。自分が経験したことについて、何がよくて何がよくなくて、なぜよかったのか、どうしたらよかったのかを考える“振り返り”を日々し続けなさい――これは企業内大学「Yahoo!アカデミア」の塾生にも、常に言っていることです。日々の積み重ねが人の価値観を作っていきますから。

ぼく自身、生きてきた49年×365日で、現在の自分ができています。毎日考え続け、振り返り続けるなかで、新しいことに気づき、それを自分のものにしていくことが大事だと思います。

企業と自分は、守る・守られるの関係ではなく、あくまで対等。だから自立の精神が必要


中川 健吾


時代の変化に伴い、行動・スキル・マインドの三角形のあり方の基本は変わらなくても、重要視される部分は変わってきているんでしょうか?

たとえば、昔だと「毎日時間通りに出社する」といった、人から見える行動のほうが、マインドよりも重要視されていたんじゃないかと、ぼくは思うんですが。

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マインドがより一層、重要になってきましたよね。かつては終身雇用制で、1度入社すると実質的に会社が一生を保証する、つまり会社が社員を守ってくれるのがあたりまえでした。しかしながら、ここ数年それが変わりつつあります。これから先、マインド面で必要になるのは、自分で考えて自分で立つこと、自立の精神ですね。

企業と自分は守る・守られるという上下の関係ではなく、あくまで対等な関係にする。これは、ヤフーの働き方改革が根底にあります。自立心を持ちながらもヤフーで働きたい、と社員が思えるようなしくみや環境、制度を提供したいと考えています。

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中川 健吾


働き方改革は、個人に多様な選択肢を示したうえで、自分の頭でよく考えて自分で決めてね、と個人に判断を委ねていることなのかなと見ていました。それはサイボウズがやっていることとよく似ています。

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その通りですね。豊富な選択肢から取捨選択するには、自分の軸や志をきちんと持っておく必要があるでしょう。

逆に、自分自身の軸や志を持っていない人は将来、苦労するかもしれませんね。

中川 健吾


今後「志の格差」が広がっていきそうな気がします。自立している人は企業に縛られず、自分の望む生き方を選べる一方で、そうでない人は自由に選択できるはずなのに、誰かに道を決められなければ身動きできなくなる、みたいな。

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「自分の人生のなかで、何をしたらいいかわからない」状態だと、生きづらそうだなとは思いますね。

ただ「働くうえで自分は◯◯をやりたい」と明確な思いをもつことが大事。全員に軸と志をいつ何時でも持っていなさい、と言いたいわけではありませんが、どちらも持っておくと、たくさんの選択肢から自由に選んで楽しめるよ、とは伝えたい。

志の大小はどうだっていいんです。「世の中に革命を起こすんだ」とか、大それたことでなくていい。

中川 健吾


志は大きくなくていい、という言葉にほっとする人は多いんじゃないでしょうか。

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人と自分を比べる意味なんてないんです。みんな違ってみんないい、とぼくは思う。そもそも、各々の志の大きさや人生を比べるなんて、なんとも世知辛いでしょ(笑)。

志は探しにいくものではなく、自分のなかにあります。くり返しになりますが、自分を見つめ、振り返る時間を日常的に持ち、積み重ねていってほしいですね。

文:池田 園子/写真:尾木 司

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