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汚染水の処理装置でトラブルが続いている件のまとめのまとめ

 キュリオンとアレバの水処理装置を組み合わせた汚染水処理装置について、東電は7月5日以降は稼働率90%でいけるのではないかと発表している。しかし現実には細かなトラブルが続いていて、なかなか完全に稼働しない(右写真はキュリオンの除染装置)

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 これまでに発生したトラブルについて東電は、初期トラブルと説明している。確かにそうしたものもあるようだが、同時に配管についた弁の開閉表示が間違っ
ていたとか、運転の手順が間違っていたとか、配管から水が漏れたとか、通常の初期トラブルとは少し違う種類の課題も出てきているようだ。




 といっても個人的には、今の時点でこうしたトラブルは出てきて当然ではないかと思っている。むしろ、トラブルなしでシステムが完璧に動いたら奇跡だし、
まだしばらくはトラブルが続くのではないかという気がしている。というようなことを、会見を中継しているIWJのまとめコーナーでずっと言い続けていたの
で、ここではまとめまとめをしてみよう。



 と思っていたら、システムが最初からちゃんと動いたら奇跡だということをブログでまとめていた人がいた。



循環冷却システム−うまく稼働したら奇跡−−院長の独り言
http://onodekita.sblo.jp/article/46455916.html



 ここでは、配管の全長が4kmにも及ぶことが原因のひとつに上げられている。確かにこれほど長い配管を、仮設のホースで引き回すのは大変なことだし、鋼管ではないので継ぎ手や配管そのものからの漏洩の可能性が高くなるのはしかたがない(だからといって、漏れていいわけではないのはもちろんだ)



 これは配管の漏洩についてだが、処理システムそのものにも懸案事項が多い。根本的な要因として考えられるのは、数週間で仮設できるようなしろものではない水処理装置を、突貫工事で組み上げたことにあると思っている。アレバ広報も、本来は1年半程度かかる建設工事を数週間でやるのは容易ではないという認識を持っていた。



 突貫工事になればあちこちに無理が生じるのは仕方ない。それにこうした水処理装置はけっこう繊細な作りになっていて、エイヤッでできるものではないのだ。厳密に作れば、配管の曲がり具合も効率に影響する。流量が不安定だと除去効率も変わってくる。アレバのシステムは凝縮沈澱なので、流量管理はより厳密になる。



 これを経験や知見でカバーできればいいのだが、これほど大量の高濃度放射性物質が含まれた汚染水を処理した経験は、誰にもない。もちろん日本に同様の施設があったわけでもない。水処理装置について東電は、当初は「実績がある」と言っていたが、今は、世界で初めての装置なので初期トラブルはあると説明するようになっている。



 東電のいう実績というのは、放射性物質の除去に使っている米キュリオン社の部分はスリーマイル島原発事故の水処理、アレバはフランスの使用済み核燃料再処理工場、ラ・アーグで稼働していたことを指す。とはいえ両者とも、福島第一のような高濃度放射性汚染水を20万トン以上も処理した実績は、ない。



 また、スリーマイル島は炉心損傷によって汚染された炉水を処理しているが、福島のようにサビや油などにまみれ、そのうえ海水まで入っている真っ茶色の水ではなかっただろう。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110622_01-j.pdf
 1ページ目右写真、階段に溜まっているのが超高濃度な放射性物質を含んだ汚染水だ。サビや油、津波で入り込んだと思われる海水中のゴミや海藻、そしておそらくは魚なども混じり合っている。

 そしてまた、福島に設置された世界初の処理システムは、おそらく今回初めて、キュリオンとアレバのシステムを組み合わせたと思われる。通常の濃度ならどちから一方で済むはずだから、2社のシステムを組み合わせる必要はない。



 こうなるとやっかいになりそうなのが、全体の工程管理や調整、そして運転手順などだ。なにしろキュリオンは英語、アレバはフランス語、そして発電所の主要言語はとうぜん日本語なので、全体の調整をする管理者は3カ国語をまとめないといけない。基本的にはキュリオン、アレバの各システムに入る前にはバッファのタンクを設置し、単体運転ができる状態にしてあるものの、全面マスクの下から3カ国語が入り混じる現場の混乱は、想像に難くない。また現場作業員の方のツイッターによれば、アレバの装置はイタリア製で、マニュアルにイタリア語が混じっているという情報もある。工事中には通訳が1人、大けがをしたのは、どこかにそうした疲労もあったのではないだろうか



 設置工事の段階では英語、フランス語、イタリア語の解説書を確認し、運転に入ってからもやはり3カ国語のマニュアルとにらめっこしつつ、間違いのないように作業を管理するのは、今の福島第一原発の状況を考えると不可能ではないだろうか。そして時間があればまだしも、工数も必要な人員数も公表できないような正体不明の工程表によって、期限だけは切られている。これで間違いが起こらないはずがない。



 おまけにそんな装置を、ほんとうはきちんと建屋から設計するものなのに、福島では既存の建屋の中に据え付けている。これも中長期的に見ると、装置に無理を生じる一因になると思われる。最低1年間は稼働させる予定になっているため、時間が経つにつれて初期トラブルとは別の問題が生じるのではないか。



 ちなみに作業現場で複数の言語が使われることによる弊害は、世界の原子力発電所の建設現場でも課題になっているらしい。昨年11月に環境エネルギー政策研究所(ISEP)が実施した欧州の原子力発電所についての講演会では、フィンランドのオルキルオト原発をはじめとする各国の建設現場で、多国籍の作業員のとりまとめが大きな問題になっていることが指摘されていた。言語の複雑化は間違いのもとだし、工事が長期化する要因にもなる。



 だから、今回のように弁の開閉表示が間違っていたとか、運転手順ミスで装置が止まったということを聞いても、驚きはなかったし失望感もなかった。僕が想像できるくらいだから、おそらく現場もそう思っているのではないか。願いはひとつ、トラブルによって超高濃度汚染水が建屋の外や海洋に漏れ出さないでほしいだけだ。



 漏れ出しついては今のところ、なんとか防ぐことができているような感じではある。しかしこのまま処理装置がうまく稼働しないと、梅雨や台風シーズンの雨で滞留水が増水し、外に溢れる可能性も出てくる。



 それでも今は少しずつでも処理が進んでいるので、一両日中に溢れ出すことはないだろう(もちろん、トレンチ水位などの東電説明が正しければだが)。。また8月にはバックアップシステムとしてもうひとつ、サリーという装置も加わることになっている。とはいえまだまだ、楽観視できない状況は続く。



 だからこそ、世界中の知恵と力を集める必要があるのだが、未だに政府や東電からこうした認識がいまひとつ感じられないのが歯がゆい。高濃度汚染水を一時保管するタンクだけでも先に設置しておけばいいものを、まだ少し時間がかかりそうだ。



 人が足りないなら世界中から集めるなりすればいいのだが、細野氏や東電松本氏は、足りている、あるいは専門的な作業ができる人がいないと意味はないという。けれども穴を掘ったり整地したりという土木作業であれば、経験者は少なくないのではないか。それこそ自衛隊でもいいだろう(防衛省が被ばくをいやがるかもしれないが)



 確かに放射能汚染地域という特殊な状況で、タイベックスに全面マスクという装備もプレッシャーにはなるだろうが、それでもかき集めることが必要ではないだろうか。高濃度タンクにしても整地作業にしても、後で無駄になっても構わないし、莫大なコストがかかってもしかたない。今は、それほど厳しい状況だということを認識する必要があるのではないだろうか。

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