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シリア国境、IS掃討作戦の現実

左からタレント小林美季氏、 安倍編集長、フォトジャーナリスト久保田弘信氏©Japan In-depth編集部

Japan In-depth 編集部(坪井映里香)

前回の出演から約8か月ぶりとなったフォトジャーナリストの久保田弘信氏。今年4回の海外取材を終え、トルコから帰ってきたばかりだ。そんな久保田氏に、緊張状態が続く中東情勢について写真や動画を交えながら、話を聞いた。

今回の久保田氏は、トルコとシリアの国境沿いの難民キャンプとクルド族とIS(イスラム国)の戦闘現場を取材した。だんだんトルコに入国しづらくなっていて、空港から強制送還されている日本人ジャーナリストもいるという。特に国境沿いは「準戦時状態」で、市街地までミサイルが飛んでくることもあるそうだ。また、国境沿いはテロリストが入ってくる可能性もあり、緊張が続いている。

トルコの治安について久保田氏は、夏に取材に行った時と最近との間に「治安の悪化が見て取れるようになった。」と述べた。一つの理由として、検問が多くなったことをあげた。しかし「検問でチェックを厳しくやっているのにテロが起きてしまっているのでまだまだ安心できない。」と指摘。また、久保田氏が滞在している隣の町でテロがあったことがあった。国家反逆罪という名目でクルド系の政治家が逮捕されたが、ISが犯行声明を出した。そしてそのまた後、クルド系の勢力も声明を出した。安倍編集長は自分たちの仕業だ、と「誇示したい」のでは、と指摘。「それだけ今のトルコの現政権に対してISもクルド系勢力も不満を持っている。」と久保田氏は解説した。実際、7月のクーデター未遂事件が起き、エルドアン大統領は2000人の市民を拘束した。

ここで、久保田氏の撮影した、難民キャンプの写真を見た。

有刺鉄線に囲まれた難民キャンプ©️久保田弘信

真ん中に監視塔があり有刺鉄線で囲まれている。そこにいるのはみなシリア難民だという。なぜ囲われているのか、といった問いに対し、久保田氏は「難民をつかさどっているのは、UNHCR (The office of the United Nations High Commissioner for Refugees:国連難民高等弁務官事務所)という国連機関。(通常であれば)UNHCRに許可を取れば難民に取材できるが、トルコの場合は特殊で、UNHCRはアドバイザーとして存在しているが、トルコ政府が難民キャンプを運営している。」とこの地域における難民統治の特殊性を明らかにした。

そのうえで、「難民のふりをしてテロリストが紛れ込んでいるという危険もある。」とした。実際ISが紛れ込んで子供たちを連れて行って兵士にするといった例もあったようで、トルコ政府も警戒を強めているからだと考えられる。シリア難民は、有刺鉄線に囲まれた場所での生活を強いられている。

キャンプからトルコ国内への移住の実態はどうなっているのか。実態は、キャンプにいるよりトルコの街中にアパートを借りて住んでいる難民の方が何倍も多いという。既に国内の難民受け入れ態勢が飽和状態にある。が、逆にキャンプにいたいという難民もいる。久保田氏によると「アパートのお金。最初は補助があるが打ち切られる。キャンプに行くと医療もすべて無料。」だからだという。

街中に住むと、お金を持たないシリア難民は生活が困窮するという。町に住むシリア難民に久保田氏は取材をした。そこにいた女の子は、トルコに来る前に銃撃されて足をなくしてしまった。7,8歳くらいだろうか、成長期の少女は義足が合わなくなり、歩くのがつらく、最近学校に行っていないそうだ。

銃撃されて足をなくしてしまった少女©️久保田弘信
また、久保田氏はシリアの国境に近い町にある、シリア人のドクターが運営するクリニックにも取材に行った。患者は、戦争被害者。大部屋でダブルベッドだ。そんな中、目をつぶされた男性の写真があった。
政府軍に捕まって拷問を受けた男性©️久保田弘信

彼は政府軍に捕まって拷問を受け、目の周りだけは殴らないでほしい、と言ったら目をつぶされ、鼻がつぶれるまで殴られたという。シリア国内だと、物的証拠はないがアサド政権の残虐な行為がうかがえる写真だった。

モースル奪還作戦の前の、ISが立てこもっているマフムールという町へクルド兵が進軍するという作戦に久保田氏は従軍し、撮影した動画を流した。外国人で同行を許されたジャーナリストは久保田氏だけだったという。クルド兵はアメリカが支援していて、米軍兵器が映っていた。久保田氏が乗っていた隣の車に直撃。にもかかわらず、兵士たちは落ち着いていて、こちら側では銃をうっていてあちら側では携帯をいじるなど、戦争が日常化している様子が見られた。米軍の空爆も映っていて、よく連携している様子だ。最後に、12歳ほどのISの少年兵の死体が映された。日本ではモザイクがかかってしまうため、見られない映像だ。

その後、米軍兵士が銃撃に参加している場面が流された。アメリカは、空爆支援はしているが、地上部隊は派遣していないことになっている。「前線まで行って見えたものがいくつかあった。」と久保田氏は述べた。正確な敵地への空爆は地上での偵察作戦がなければ不可能だが、米軍の反IS勢力への関与の深さが明らかになった。

この取材は、CNNもBBCも取材を断られたそうだ。「ものすごくシークレットな取材だったから。」と久保田氏は述べた。それは、外国人のジャーナリストが取材し速報することによって、戦況が変わってしまう危険があるためだ。

安倍編集長は、「(日本の大手)テレビ局は戦争取材に行かなくなった。」と指摘した。今はフリーランスに撮れ高、つまり、取材に行って撮ってきた映像を観て、価値があったらお金を買う、というスタイルだ。大手メディアが従軍取材をすることに関しては、イラクに米軍が進行した時の従軍取材の際、議論があったという。それは「米軍の宣伝」に他ならないから、と安倍編集長は述べた。イラク戦争の際は、それを知っていたフセイン側が世界からジャーナリストを呼び寄せ、大手メディアが引き上げた後、久保田氏を含めたフリーランスのジャーナリストは現地に残り、取材を続けたという。

「これだけイスラム国が話題になって、その最大の作戦であるモースル奪還作戦に日本の大手メディアが一人も行っていないということが不思議。」と久保田氏は述べた。「この手の情報を流せる現代メディアのビジネスモデルはあるのか。」と視聴者からも指摘がなされた。

CNN、BBCなど他国の大手メディアの報道は、日本に比べれば多いという。それは、「旧宗主国というのもあるし、距離的に近いというのもある。」と安倍編集長は述べた。欧米のメディアは積極的に現地に入り、年間何十人も取材中に亡くなっているそうだ。それでも情報が重要だと考えているのだろう。

また、駆けつけ警護で話題のスーダン。自衛隊の様子がまばらにしか入ってこず、スーダンの街の様子が伝わっていないことも久保田氏は問題視した。「(自衛隊は)新たな枠組みで行くわけだから伝えるべきだと僕は思う。」と述べた。

貴重な映像や写真も織り込まれた今回のJapan In-depthチャンネルは、大手メディアで伝えられない情報を得ることができた一時間だった。

(この記事は、ニコ生Japan In-depthチャンネル 201612月14日放送の内容を要約したものです)

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