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原発再稼働に求められる安全性の確保はできたか?

ジャーナリスト 岡村繁雄=文

福島第一原子力発電所事故に学んだ教訓

福島第一原子力発電所の事故から、間もなく6年が経とうとしている。この間、国内にある原発の安全対策は確実に進んでいる。これらの対策は、原子力規制委員会が策定し、2013年7月に施行された「新規制基準」に沿ったものだ。新規制基準では、地震や津波、竜巻といった自然災害などへの対策を強化するとともに、炉心損傷防止など設計時の想定を超える事象への対策についても新たに盛り込まれた。

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浜岡原子力発電所の海抜22メートル、総延長1600メートルの防波壁。

静岡県御前崎市に位置する中部電力浜岡原子力発電所も例外ではない。遠州灘に面し、南海トラフ巨大地震も想定されることから、耐震性の強化など安全性向上には積極的に取り組んできたという経緯がある。

「ここは相良層と呼ばれる強固な岩盤の上に原子炉建屋等が直接設置されています。建設当初からピラミッドのような安定した構造にし、現在は内閣府の『南海トラフ巨大地震モデル』に基づく地震動である最大1000ガルを上回る地震対策を行っています。ただ、私たちが福島第一の事故から学んだことは、耐震もさることながら電源と冷却手段の確保の重要性です」

こう話すのは、浜岡地域事務所総括・広報グループの村松立也専門部長。

原発が地震に見舞われた場合、その安全性を守るためには「止める→冷やす→閉じ込める」という3段階のステップを踏む。福島第一でも、震度6強の揺れに建屋は耐え、原子炉は自動的に停止した。ところが、地震後に発生した津波による浸水で全電源を喪失。海水取水ポンプも動かず、冷却機能を失い、炉心損傷という事態にいたってしまったのである。

「安全性追求に終わりはない」

従来の地質調査の結果では、浜岡原発周辺に来襲した津波の高さは、6000年遡っても最大8メートル。しかし、福島第一原発事故の教訓から、浜岡原発では震災発生後の2011年7月に海抜18メートル、総延長1600メートルの防波壁を含む津波対策を公表。2015年12月には、津波に対する安全性をより一層高めるため、追加工事で22メートルにかさ上げするなど自主的に対策を進めてきた。さらに、津波が防波壁を超えた場合についても想定し、原子炉建屋など重要設備の扉を防水構造の扉で二重化するなどさまざまな津波対策を施した。

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取水・注水ポンプ車(写真)や電源車など幾重にも安全対策が施されている。

また、非常用電源確保の手段も幾重にも講じられている。外部電源を多重化するとともに、そのバックアップとなる非常用ディーゼル発電機が使えなくなった場合に備え、海抜40メートルの高台にガスタービン発電機の設置、その他にも電源車を配備。それでも電源が無くなった場合には、注水ポンプ車といった代替手段を講じることで冷やす機能を確保し、原子炉への注水が維持される。原発の安全対策に関しては十分すぎるほどの手を打ってちょうどいいのかもしれない。

こうしたハード面での対策に加えて、ソフト面としての“現場対応力”の強化も不可欠だ。安全を管理するのは人であり、事故を未然に防ぎ、もしもの時には被害を拡大させないのも人にほかならない。

「初動対応の強化として、事故発生時に真っ先に現場に駆けつけ対応するスペシャリストチーム『緊急時即応班(ERF)』を立ち上げるとともに、緊急時に備えた訓練を年間約600回実施しています。また、過去に発生したトラブルから学んだ教訓や蓄積してきたノウハウを風化させないために、研修センター内にトラブルの概要を示すパネルや実物・模型を展示した『失敗に学ぶ回廊』を設け、技術伝承にも取り組んでいます。安全性追求に終わりはありません」と村松専門部長は語る。

万が一をも想定した対策

安全に絶対はない。どうしても、万が一を想定した次善の策が必要になる。その答えが、この12月17日に福井県美浜町で本格運用が開始された『美浜原子力緊急事態支援センター』だ。「支援センターの役割は、原子力施設で事故が発生した際に、速やかに緊急出動隊を編成し、発災プラントへ緊急支援用の資機材を搬送するとともに駆けつけ、発災事業者と協働して高線量下での原子力災害に対応すること」と話すのは同センターの進孝男総括グループマネージャー。9電力会社と日本原燃、そして、運営主体でもある日本原子力発電から選抜された21名の専任チームの一人である。

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福井県美浜町で本格運用が開始された「美浜原子力緊急事態支援センター」。

資機材には、遠隔操作による情報収集・障害物撤去が可能なロボットや重機をはじめ、高所からの放射線量の測定を行う無線ヘリなどを配備。これらを事故プラント付近で遠隔操作することも視野に入れ、被ばく対策を施したロボットコントロール車も準備した。「福島第一原発事故では、高線量下での作業に苦戦を強いられました。遠隔ロボットにより、安全を確保しながら、事故復旧に取り組むことができます。我々は、被害を最小限に食い止めるため、日々運転に携わり、プラントの状況を熟知している現場の社員の方と協働で行います」と進総括グループマネージャー。

そのためにも、電力会社のロボット操作要員の訓練および育成は支援センターの重要なミッションだ。2013年1月に支援センターの前身が設立されて以来、初期訓練と定着訓練を重ねており、これまでに延べ1000名以上が参加した。全国の原子力発電所の防災訓練に延べ50回以上参加し、100名以上の要員を派遣してきた。新拠点が動き出したことにより、今後は一層、現場社員の養成に拍車がかかることになる。

福島第一原発事故により、安全神話は崩壊した。そのことを最も痛感したのが、原子力事業者ではないか。彼らは事故で学んだ教訓をハード面とソフト面に反映するだけでなく、「事故が起こり得る」ことも想定し、さまざまな対策を積み重ねている。原子力発電所のあくなき安全性の追求は、これからも続いていく。

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