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ワインを買っているんじゃない。「奇跡」のガチャを回しているんだ。

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 それでも、高級ワインは、ときどき、「奇跡」を起こす。
 
 
 ワイン雑誌は、よくワインを「91点」「99点」といった100点満点で採点しているけれども、私がワインを採点するとしたら、青天井の『ドラゴンボール』方式が良いと思う。
 
 
ドメーヌ・ルフレーヴ ピュリニー・モンラッシェ
 
 たとえば、初めてこのワインを飲んだ時の私は、「これは100点!いや!300点ぐらいだ!」と感動した。とにかく普通じゃない。もう「おいしい」とか「おいしくない」とか、そういう次元を超越している。酸がキラキラしていて、ふんわりと包容力があって、味も香りもブッ飛んだワインだった。このワインを飲んだ瞬間に、私のワインの評価尺度は100点満点から300点満点に切り替わった。大枚をはたいて高級ワインを買う人の気持ちがちょっとわかったような気がした。そうか、高級ワインは味の評価尺度、採点の枠組みそのものをブチ壊してしまうのか。
 
 
ルイ・ラトゥール シュヴァリエ・モンラッシェ
 
 それからしばらくして、今度はこいつに出会った。キラキラとか包容力とか、もう、そういう語彙では説明のつかない「存在自体が奇跡」のような代物で、一体どうやったらこんな味と香りの白ワインができあがるのか見当もつかなかった。プリズムの光ごとく、味と香りが七色にゆらめいて、どれだけ飲んでも飽きる気配が無い。というより、ワインに魅了されて他のことはどうでもいいというか、いつまでも飲み続けていたい、いや、鑑賞し続けたい気持ちになって、酔いがまわらない。
 
 このワインによって、私のワイン評価尺度は300点満点から5000点満点に変更された。残念ながら、この5000点を超える白ワインには未だ出会ったことはない。1800点とか、4800点の白ワインには出会えているのだけれども。
 
 
DRC リシュブール
 
 赤ワインで奇跡を起こしたのは、ロマネ・コンティ社の特級畑“リシュブール”だった。上のほうで紹介したように、この“リシュブール”では別のメーカーで手痛い目に遭っていたので、いっそ、最高級品で勝負しようと思ってこいつを購入してきた。
 
 このワイン、最初の30分間は木樽の匂いがするばかりで、口当たりがベトベトする以外は特徴の乏しい「60点」のワインで、「うわーまたもやハズレだー!死んだー!」と覚悟していたけれども、時間が経つにつれて味も香りも急成長して、数時間後には「神の滴」としか言いようのない、崇め奉りたくなるような神秘が目の前に現れて、部屋じゅうが奇跡の香りに包まれた。めちゃくちゃ高価なワインだったけれども、このとき、私のワイン評価尺度は5000点満点から20000点満点に変更された。ここまでのワインには、もう二度と巡り合えないかもしれない。
 
 

起こらないから「奇跡」っていうんですよ

 
 こんな具合に、高級ワインは評価尺度をひっくり返すような「奇跡」を起こす。高級ワインには当たりはずれがあって、飲み物としてのコストパフォーマンスは最低最悪だ。しかし、たまさか100点満点を限界突破すると、“どうして地上にこんな飲み物が存在するのか?”“このワインの味と香りに、果てがあるのか?”と問いかけたくなるような、「奇跡」が目の前に現れる。
 
 私にとって、高級ワインを買う行為は、この「奇跡」をお招きするためのギャンブルに近い。今風の言い方をするなら、“「奇跡」のガチャ”ってやつである。高級ワインのボトルには、「奇跡」が詰まっているかもしれないし、詰まっていないかもしれない。確かめるには、実際に買ってみて、保存してみて、飲んでみるしかない。でも、やめられない。なぜなら、「奇跡」を目の当たりにしてしまったから。「神の滴」に出会ってしまったから。年に1回でもいい、どうか、ワインの神様、「奇跡」をこの手に!!
 
 残念ながら、「奇跡」は頻繁には起こらない。20000点満点になってしまった今、この点数を超えるワインに出会うのは(経済的にも)不可能に近い。
 
 それでも構わない!
 
 おいしいワインを手堅く選びたいなら、100点満点の内側で手堅くワインを選んでいればいい。だけど“「奇跡」のガチャ”を回すなら、手を突っ込むしかない! 裏切られても! 痛めつけられても! ギャー! 痛ってええええええ!!
 
 
 
 
 ※おことわり※
 この文章に登場するワインの銘柄・畑名は実体験に基づいていますが、リンク先のワインショップ、およびヴィンテージは実体験と異なっています。私には、リンク先のワインショップの同銘柄の保存状態や「奇跡」の度合いはわかりかねることを、お断りしておきます。

 

*1:たぶんメーカーさんに罪はない。飲むのが早すぎたか、別の要因。

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