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- 2016年12月21日 07:00
生産性を高めて働く術を知らない日本人、「お客様は神様」マインドも変えるべき?──ダボス会議に参加したグローバルリーダーが議論
2/3若者までが終身雇用を望んで「挑戦したがらない」なんて、日本は危機的状況では?
いったんエスカレーターから降りたら二度と戻れない文化だから、若者までが終身雇用を望んで挑戦しないなんて、危機的状況だと思えるのですが。
伝統的な企業では、いったん辞めた人材を再雇用する例は少ないかもしれません。ですが、再雇用を積極的に受け入れるサイボウズのような会社も出てきています。UBSのような金融業界は、もともと有能な人材があちこちを渡り歩くもので、雇用はとても流動的です。日本企業の採用側は、キャリアブレイクがあったとしても、何らかの付加価値をもたらしてくれると考えるようになってきているんですね。
日本でも、若い世代はスタートアップやNPOなどの起業、社会貢献志向が高まっていますよ。日本社会は硬直しているわけではなく、徐々に変化が生まれています。
より長く働けば、よりよい成果が出るというわけでもないですよね。この悪質なサイクルは改善されるのでしょうか?
すでに日本の中にも「意味のない長時間労働は避けよう」「生産的であろう」「人生をもっと楽しもう」というマインドセットが育っています。ただ、長時間労働は、消費者が期待する高水準のサービスと背中合わせです。電車の時間が驚異的に正確など、日本のサービスの質は高いです。
それを支える長時間労働をやめていくなら、一部のサービスの低下は、妥協しなければいけないかもしれない。「お客様は神様」といった、旧来のマインドセットは変えていく必要があるでしょうね。
評価システムを、労働時間の長さからアウトプットを重視する方向へシフトすべきですね。労働時間が長いほど給与が上がり、出世し、長期間働き続けているほど年収の上がるシステムでは、とにかく時間だけが評価されます。これでは、休暇取得率が上がるわけもないし、自宅から働くなどの柔軟なワークスタイルも浸透しません。
インターリスク総研 土井 剛さん
日本は教育水準も技術水準も高いのに、ユニコーン企業が登場しないなど、なぜ海外に比べてイノベーティブな起業例に欠けるのでしょうか。政府の取り組みは?
日本政府の人々は、基本的に失敗を望みません。仮に1%の成功例を生んだとしても、残り99%の失敗例に資金とエネルギーを注いだ結果になったことを嫌がるのです。ですが、彼らも海外視察を経て、イノベーションのためにはチャレンジが必要なのだと理解し始めています。産学協同のコンソーシアムとして100人ほどをシリコンバレーへ送り込み、「いかに早く失敗して軌道修正するか」を学ばせています。すぐにユニコーン企業が現れるわけではありませんが、20、30代の若者には変わろうという意思がある。
1970〜90年代の日本経済の成功を経験した世代は、いまだに長時間労働にこだわってしまう傾向があります。彼らの多くは50代や60代で、バブル崩壊後の建てなおし、経費を削って利益を出すことを成功体験として、いま大企業の重役ポストを占めています。
彼らがあと少しで「退場」すれば、民間企業だけでなく政府内でも、日本の変革はもっとスピーディーに進んでいくというのが、わたしの意見です。
柔軟な働き方はいいけれど……どうやって株主を説得する?
サイボウズは働き方を変えよう、従来の家族的組織観から「チームワーク」へシフトしようと取り組んでいますが、それは株主の労働観と異なるかもしれませんよね。経営側の視点で、株主の関心とのすり合わせや説明はどのようにしているのですか。
実際、株主への説明には苦慮しています。初期は売り上げが伸びず、ただひたすら待ってほしいと言い続けた。現在は売り上げが上がし、配当金も増えて、上場も果たしましたから、株主への責任も果たせたといえるでしょう。こちらは説明し続け、それに共感してもらえれば株を保持してもらえますし、共感してもらえなければ売り払われる。それだけのことです。
山田 理(やまだ おさむ)。サイボウズ 取締役副社長 兼 kintone Corporation CEO。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、アメリカ事業本部を新設し、本部長に就任。同時にアメリカに赴任し、現在に至る。
株主は移り変わりますし、われわれは株主だけのために働く必要はない。株主のために利益を追求したとして、従業員をリストラしたり、給与を減らしたりすれば、一体誰が幸せになるのでしょうか。僕たちのビジネスが安定的に経営できるだけの利益が確保できればいい。株主にもフォーカスはしますが、それ以上に、社員と社員の家族の幸せにフォーカスしたいんです。



