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司法修習生に対する「給費」が復活 どうにもならないほど司法が崩壊していることの象徴となったことが悲しい

2001年に始まった司法制度「改革」により、司法試験合格者数が激増され、2004年には法科大学院制度が始まり、さらなる激増を目指し、「改革」が遂行されました。

 事前規制の撤廃から事後救済型の社会を目指すという規制緩和政策における司法の「強化」として位置づけられていました。

 規制緩和の中で法曹の役割が増大するだろうという需要見込みまでなされました。

 その過程で、従来、司法修習生に対する給費がありましたが、これが2011年に廃止されました。司法修習生の激増とともにカネのかかることはできないということで廃止となったのですが、法科大学院を卒業するまでの授業料、生活費と合わせて、法曹資格を得るまで莫大なコストを要するものとなりました。新規法曹が1000万円以上の借金を負うということも珍しいことでもありません。

 しかし、激増させた結果、新規登録の法曹は、弁護士としての就職もなく、また業界全体も過当競争から収入は減少に転じました。

 そうなると当然のことながら法曹志望者の激減というお粗末な結末となったのです。

 莫大な借金を負ってまで法曹になろうという選択は学生にとってはあり得ないものとなったのですが、このような事態に陥るであろうことは「改革」の過程で常に指摘されていたことです。

 しかし、司法「改革」を推進してきた学者や弁護士たちは、頭の中で法曹需要があると信じて疑わず、今に至っても潜在的需要があるはずと信じて疑わないのです。

悪意に満ちた朝日新聞の論説委員 未だに過去の誤りを認めない弁護士人口激増政策

 ここにきて政治が動きました。司法修習生に対する事実上の給費が復活させたのです。

司法修習生の「給費」月13万5000円で復活」(2016年12月19日)

「務省と最高裁、日本弁護士連合会の3者が同日、司法修習生を経済的に支援する新制度の導入や、同省が来年の通常国会に新制度に伴う裁判所法改正案を提出することなどで合意した。住居費が必要な場合は月3万5000円を追加し、司法修習に伴う引っ越し代も国が負担する。」

 このままでは有為な人材が集まることはなく、国としては民間の弁護士はともかく裁判官、検察官の質の問題に直結してしまうことは憂うべき状況ということになるわけです。ここに政治の中での危機感がありました。

 ところで、人材養成にお金が掛かるのは当然のことなのですが、しかし、給費制には何故か批判も少なくないようで、どうにも受益者負担というドグマから抜け出せないのが残念です。

 前掲読売新聞から考えてみましょう。

「支給額は月13万5000円で、毎年の支給総額は30億円程度になる見通し。国の財政難から2011年に廃止された「給費制」がわずか6年で事実上復活することになる。高給取りとされる弁護士や裁判官、検察官になる司法修習生を国が特別扱いすることには、反発も予想される。」

 国の財政難からというのは正しくはありません。従来の司法修習生の数の3倍、4倍としてしまったのですから、従来の額では足りなくなります。だから司法制度改革審議会が法曹人口(司法試験合格者数)の激増を決めたときに合わせて給費制の廃止も決めたのです。

 しかも、法科大学院制度という司法修習制度よりもカネの掛かる制度の創設を提言したのですから、司法「改革」の中では給費などは煙たい存在でしかなく、ましてや自民党にとって弁護士会は自民党の政策に反対する団体なのに、何故、国費で養成するんだという発想でした。

 しかし、根本が間違っています。在野法曹の育成は、権力の濫用を防止するための1つの制度上の仕組みなのです。しかも権力から独立した民間であることも重要な点です。だから国費を使ってまで弁護士資格を与えるための養成を国費で行ってきたのです。

 それを根底から覆したのが司法「改革」でした。

 給費は本来のあるべき姿なのです。

司法を崩壊させた佐藤幸治氏 現状をみて少しは心が痛まないのだろうか

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 次に高給取りとされる弁護士や裁判官、検察官になる司法修習生を国が特別扱いするという指摘もあまりに現状を知らなすぎます。

 既に新規で登録する弁護士は就職難の中で「高給取り」とはほど遠いところにいます。企業や自治体に就職する場合も増えてきました。そもそも弁護士として登録できない層が増えてきたということです。

 どうみても「高級取り」とはほど遠いのですが、従前のイメージを離れることができないのでしょう。本当に新規で登録した弁護士が「高給取り」であるならば、これほどまでに志願者が激減するわけもありません。

 また本当に「高給取り」なら1年間も修習するなんてその期間は「減収」以外のなにものでもなくなってしまいます。

 これ以上、法曹志望者を減らすわけにはいかない、それが今回の給費の復活なのです。

 この司法修習生に対する給費制の復活は司法の危機の象徴となってしまいました。残念なことです。

 なお、この給費復活のために活動されてきたビキナーズネットのみなさん、日弁連給費制実現本部で活動されてきたみなさんの活動があったからこその復活であり、この活動に対し、心より敬意を表したいと思います。

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