平均工賃は月額2万円以下… 「一億総活躍社会」の実現に不可欠な障害者の就労支援とは

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障害者を特別視するのは「無意識の差別」

パネルディスカッション2では、中島隆信氏(慶應義塾大学商学部商学研究科教授)、野沢和弘氏(毎日新聞論説委員)、内山博之氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課課長)、新井和宏氏(鎌倉投信株式会社取締役)、藤田敏子氏(株式会社クック・チャム代表取締役社長)、且田久雄氏(株式会社ダックス四国代表取締役社長)の6氏がパネリストを務めた。座長は且田久美氏(株式会社ダックス四国障がい者雇用責任者)

且田久美氏が座長を務めたパネルディスカッションでは、障害者を「戦力」として雇用してきた企業の取り組みが紹介されていた。

プラスチック容器の透明フタを生産する株式会社ダックス四国は、従業員60人のうち45人が知的障害者だ。パネリストとして壇上に上がった同社の代表取締役社長・且田久雄氏(且田久美氏の父)は、同社を紹介するDVD映像(高知さんさんテレビで放送された映像)をスクリーンに写しながら、こう説明した。

「障害者の方が働くために整備した工場ではない。設備は完全に普通の工場と同じで、お漏らしとか、飛び出したりする人を社員として最初から雇っている。

 健常者と障害者は何も違わない。障害者という名前をつけることによって被支援者という発想になってしまう。健常者にも支援されなきゃならない人がいっぱいいる。障害があるからどうするかではなく、企業としてどう成り立つかということを考えてやっている」

株式会社ダックス四国代表取締役社長・且田久雄氏

 また、且田氏は「障害者はできない。だから守ってあげなければならないと考えるのは『無意識の差別』」だともいう。ダックスでは健常者に近い給料を出しているそうだ。

「給料でどう彼らが変わるか。1万、2万、3万の工賃では何も体験できないが、うちの子たちは海外旅行に行く。この前は8泊10日でメキシコに行っていた。なんで社長の僕を誘わないのかと聞いたら『社長はお金ないでしょ』と言われた(笑)。

 彼らはどんどん体験を積んでいく。そこで何が起きるか。ただ成長するのではなくて問題も起こすが、それは健常者も同じ。仕事をしてお金を得ることで人生が広がる。そうすると仕事を辞めなくなる。そこに行くまでに1年かからない」(且田氏)

株式会社クック・チャム代表取締役社長・藤田敏子氏

全国75店舗で地域に密着した“まちのお惣菜屋さん”を展開する株式会社クック・チャムも、グループ全体で約60名の障害者を雇用している。北海道では農業と福祉を連携させた事業も始めた。

パネリストとして登壇した同社の代表取締役社長・藤田敏子氏は、「彼らは素晴らしいから、どういうふうにしたらもっと素晴らしい子になれるんだろうかと考えました。同じ仕事ばかりさせていたらダメだなと思って食堂を始めました。接客上手な子が生き生きと接客するのを見て、もう私は感動するんです。始めてみたら彼らはすごい。今は北海道に第三工場を建てています。1億円ほどかかるが、事業でペイする」と、障害者を「戦力」として雇用している現状を報告した。

社会全体で課題を共有することが解決への出発点

 今回のフォーラムのメインコピーは「答えはない、ヒントはここに山ほどある」だ。たしかにこのパネルディスカッション2を見る限り、明確な「答え」が提示されたわけではない。これは1時間半という限られた時間に座長も含めて7人も登壇しているのだから無理もないことだ。しかし、逆に言えば、それだけ多様な意見が飛び出す豪華なメンバーが一堂に会したということでもある。実際に、異なる現場から集まったパネラーたちが現場からの視点で発した「ヒント」は、いくつも見出すことができた。日々、障害者雇用の現場で悪戦苦闘している参加者たちにとっても、刺激的で示唆に富んだ2日間となったのではないだろうか。

 今後は業界内部だけでなく、障害者雇用に関する認識を社会全体で共有していくことが大切になってくる。そのためにも業界外部への情報発信にも一層の努力を求めたい。

 前出の且田久美氏はパネルディスカッションの中でこんな苦言を呈していた。
「移行事業においても、事業者側が労働基準法を知らなかったり、最低賃金がどのように設定されているのかを知らなかったりするケースもある。

 日本は明日から誰もが就労支援者になれる国。しかし、ほとんどの国では、障害者の生活、人生という重いテーマに関われるのは、コーチングなどの専門教育を受けた人に限られている。日本はいろんなテーマから入れるというメリットもあるが、日本の就労支援者は何のプロフェッショナルなのか。管理者というプレートを下げているだけで何かを言えるようになっているのではないか」

 この問いかけからもわかるように、同業者の間にもまだまだ大きなギャップがある。「一億総活躍社会」を実現していくためにも、社会全体で課題を共有し、相互理解を深めていくことが課題解決への出発点になるだろう。

 「答え」が出るのはその先だ。今後も持続的な取り組みを期待したい。

登壇者はそれぞれの現場から課題をストレートに表現した(撮影:畠山理仁)
[ PR企画 / 日本財団 ]

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