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元気な高齢者のやる気を支えるもの

昨日のブログに書きましたように無人レジが作り出す世界にやや不安感を持っていたのですが、皆さんのコメントを拝見するとなるほど、嫌な仕事なんだから無人化すればよいだろうとの声が多かった気がします。

昔、駅の切符は窓口でどこどこまで大人一枚、子供一枚といった具合に買い、改札には切符切りがいて降りるときも切符を回収する改札員がいました。今、あの仕事は無駄だっただろう、と言われれば「はい、そうですね」とうなずきます。世の中が進歩することは結構ですし、人々の仕事がそれに合わせて変わっていくのも必然である、との意見はよく理解できます。

が、国鉄が切符を窓口で売っていた時代とは何十年も前の話。改札がいなくなったのも全国バラバラですが、ざっくり30年ぐらい前からでしょうか?つまり進化するのに十分な時間がかかっていたのです。そんな長い時間的スパンが必要かどうかの論理性はともかく、人はそこまで急速に進化に調整できるものではないのです。

日本でガラケーがいまだによく売れる理由は何でしょうか?変われないのではなく、変わろうとしないしない人が非常に多くいるのです。それは歳をとるとさらに実感します。変わることが「面倒くさく」なるのです。

ところが今の世の中は急速に変化しました。覚えていらっしゃる方も多いでしょう。90年代にパソコンが会社に備え付けられ、上司は指一本でキーボードと悪戦苦闘していました。あれから20年、今、笑い話のようになった理由は二つあります。おじさま方の必死の努力で人間の指は1本じゃなくて10本利用すれば10倍以上のスピードになることを体得したこと、もう一つはいつまでたってもできない人が年齢と共に職場からリタイアしたことであります。そこにも一定の時間経過が存在していることを認識する必要があります。

技術は加速度的に進んでいます。私は無人レジが作り出す労働市場への懸念を指摘しましたが、労働市場に起きていることはそれにとどまりません。先日、テレビで報道していましたが、アマゾンの倉庫での仕訳と出荷用商品を集める作業が人力からロボットに移ってきています。これも結構な話だと思います。「誰もやりたがりません」から。

しかし、単純労働がどんどん締め出されていくと単純労働しかできない労働力の行き先がなくなる、この対策を忘れている気がします。

話は飛びますが、最近よく目にするニュースの一つにがんの治療であります。かつてがんの治療といえば医薬品メーカーの専売特許でありました。ところがNECがAIでがん治療に臨むとか、住友重機械工業の陽子線がん治療などあれっと思う会社が革新的手法で治療に臨んでいるのです。その多くは小野製薬工業のオプジーボ同様、がん細胞だけをやっつけるものでがんの治療法は明らかに変質化し、治る病気へと一歩一歩近づいているように思えます。

そうなると人の余命はもっと長くなるでしょう。老後の生きがいはどうなるのでしょうか?足腰だって昔の人と違い、明らかに健康になっています。ゲートボールといえば高齢者のスポーツでしたが、今はハイキングに連れ立っていく人を良く見かけます。

街の工事現場に立っているガードマンの多くは高齢者であります。あるいは駅の駐輪場業務は高齢者の人気の的だと聞きます。働く意欲があるのに単純労働がなくなるとこのしわ寄せや生きがいはどうやって解決したらよいのでしょうか?私は東京ではよくママチャリで移動しますが、いつもの駐輪場のおじさんが「こんにちは、今日は寒いね。」と声をかけてくれると嬉しいものです。いつも来る主婦の人たちが駐輪場のおじさんたちと仲良く挨拶しているのも普通の風景です。

タイトルにある「元気な高齢者のやる気を支えるもの」をみて、お前はカネ稼ぎしかやる気の源泉を考えていない、とお叱りを受けるかもしれません。老後だって楽しいことはいくらでもあるのですが、年金という決まった渋い金額を貰うのはあたかもベーシックインカムであってそこにあとプラスアルファがあればそれを消費に廻すという発想がありそうです。だからバイトで5万円を貰うのは女子高生が携帯代にするのもアリだし、大学生が飲み代にするのもアリだし、高齢者がハイキングや一杯飲み屋でひと時を過ごすのもアリなんです。

多くの人は悠々自適ではないですから、「入り」があってこその「出」であって、何かやって自分への褒美なんじゃないでしょうか?日給8000円の仕事をしてその帰りに一杯飲み屋に入る幸せってあるでしょう。

私は単純労働がなくなる世界は非常に不安です。やりたくない仕事は世の中からなくなればいいなんて言われても人間、皆が皆、高いレベルの能力を持っているわけではありません。技術の進化に対して人間のマインド的進化は明らかに劣化しています。そのあたりのバランスがレジ打ちの人がいるスーパーにほっとする気持ちを持つのかもしれません。

北米にHome Depotという住宅建材のデパートみたいなチェーン店があります。そこにはセルフレジがあるのですが、読み取れない商品、使い方がわからない人、機械が読み取り拒否をするなど散々で、結局店の人がつきっきりでプロセスしています。一方、IKEAのセルフレジの読み取り機は安定していて読み取りで失敗することはあまりないのですが、それでも店員がいつも易しく「大丈夫ですか?」と声をかけてくれるのでセルフレジに安心感が漂っているのです。この辺りのバランスが重要で何が何でも人を排除するのが機械化のやり方ではないような気がします。

では今日はこのぐらいで。

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