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違和感が消えない不起訴処分―ASKAさん事件

執行猶予付き判決で社会復帰していたミュージシャンがふたたび逮捕されたのが、先月28日。当時の報道では、任意で提出された尿を正式鑑定した結果、覚せい剤が検出されたといいます。
ところが、勾留期限の昨日午後、嫌疑不十分で不起訴処分となりました。いったい何があったのでしょうか。私は、強い違和感を覚えながら、ニュースを見ていました。

不起訴と聞いたとき、私が真っ先に思い浮かべたのは、尿の任意提出手続の信頼性です。当時の被疑者については、覚せい剤の作用下にあることを強くうかがわせる言動があったといわれます。こうした状態の当事者が、仮に手続書類にサインしたとしても、尿を提出することの意味を正しく理解し、確実に同意したといえるでしょうか。

しかし、問題は別なところにあったようです。
報道によると、地検は、任意提出された液体からは覚せい剤成分が検出されたが、液体が本人の尿と立証するのは困難だとして、不起訴としたそうです。
また、警視庁組織犯罪対策5課は、確認するため、トイレに入った被疑者の背後に捜査員と被疑者の妻が立っていたが、トイレが狭く、手元までは見えず、確実に本人の尿だとの確認まではできなかったと説明しているそうです。

まず、ここに第一の違和感があります。
通常、採尿の場には捜査員が立ち会いますが、手狭な個室トイレなどでは、ときには被疑者の背後から確認することもあります。また、主要な場面は写真撮影されますが、もちろん、被疑者の手元まで撮影することはないでしょう。

通常は、それでも不都合はないのです。
正式鑑定では、その資料が、まちがいなく人の体内を経て排出されたものであることが、科学的な方法で確認されています。分析に着手する前に、通常はペーハーが測定されているはずです。さらに、ガスクロマトグラフィー分析では、覚せい剤(メタンフェタミン)を検出すると同時に、微量なアンフェタミンが含まれているかどうかについても、確認するのです。アンフェタミンは、覚せい剤として摂取したメタンフェタミンが体内で代謝されて生まれたもので、これが同時に存在することで、その液体が、人の体内を通ってきたものだということがわかるのです。
今回の事案でも、こうした検査が行われたはずだと思うのですが。

警察が行う採尿の手順は、厳格に決められています。
その眼目は、
・提出された尿が、まちがいなく本人のものであること
・封かんされるまで、尿以外のものが混入されていないこと
が疑いなく認められるよう、複雑とも思える手順が定められているのです。

そもそも、現在のやり方は、
・採尿が手順どおりに行われ、
・採取した尿の取り扱いに問題がなく、
・鑑定のための分析検査が正しく行われていれば、
問題など起きないように、組み立てられているといってよいでしょう。

問題が起きているとすれば、尿を採取し保管する過程か、鑑定の過程に何か問題、あるいは何らかの手抜かりがあったのではないかと、考えてしまいます。

ここで、第二の違和感が浮かび上がります。
だったら、もういちど尿を採取する選択があったはずではないか。
採尿をやり直すのは、捜査に不透明感を残しやすく、あまり感心したやり方とはいえません。しかも、覚せい剤を摂取して一定時間が経過すると、尿中に排泄される覚せい剤は急速に少なくなります。このケースで、果たして二度目の採尿が妥当だったかどうかは、わかりませんが。

この事案は、任意提出された尿中に覚せい剤が検出されたことから、捜査が開始されました。
覚せい剤使用罪の立証において、尿の鑑定書は、最も有力な証拠とされていて、たとえ当事者が否認し続けていても、有罪を認定する根拠とされることさえあるのです。
もちろん、ほかに有罪に結びつく証拠がないまま、鑑定書だけで公判を維持するのは、あまりに強引です。そのために、警察は被疑者の周辺を捜査し、細かな証拠を収集します。
ところが、今回の事案では、被疑者の関係先からめぼしい証拠品が押収されなかったようだといわれていました。
思えば、そのころから急に、捜査の進展状況について、一切の情報が聞こえなくなってきたようです。捜査活動が、暗礁に乗り上げていたのでしょうか。

検察や警視庁の発表が報じられても、私の感じている違和感は、いっこうに収まりません。当初から、世間の耳目を集めてきた事案だけに、もっと納得できる説明がほしいところです。

ところで、報道のなかに、今回被疑者から提出された尿が少なかったため、再鑑定ができなかったという説明がありましたが、この点は誤解です。現在、鑑定のための採取された尿は、量の多少に関係なく、鑑定の過程で全量を使い切ります(残量は廃棄する)。再鑑定のために残量を保管する仕組みがないのです。
ちなみに、スポーツドーピングの検査では、採取した尿の半量を保管し、後日の再鑑定に備えています。

<メディア関係の皆様へ>*****
いまも療養中の私は、現在、またしても入院治療中で、ご連絡いただいた方の、ほんの一部しかお応えできない状態が続いています。
まだしばらく入院生活が続きそうです。
当面は、ご理解くださるようお願いします。

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