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賭博罪と風営法(フォローアップ)

 IR法案審議でどうしても気になった話があったので質問主意書を出しておりました。違法性阻却と射幸心の話です。いずれも、今後検討されるカジノ実施法では大テーマになると思われます。

【1本目の質問主意書】

賭博場開張による収益の内、公益性のある事業に振り向けられるものが全くない場合でも、賭博罪及び賭博場開張図利罪の違法性は刑法第三十五条によって阻却され得るか。

【1本目の答弁書】

お尋ねの「賭博場開張による収益の内、公益性のある事業に振り向けられるものが全くない場合」の趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

 私の内閣委員会質疑で「違法性阻却をする際の着目点として『収益の扱い』というのがあるが、収益が全く公益性のある事業に還元されない場合でも違法性阻却されるのか。」と何度か法務副大臣に質問したのですが、どうも答えがよく分からなかったので、そのまま質問主意書で出したということです。その意味合いは、カジノで上がった収益の内、何か公の役に立つものに使われる部分がないのなら、さすがに違法性阻却は難しいのではないかということです。

 答弁は見れば分かる通りですが、最近の質問主意書答弁書のトレンドである「趣旨が必ずしも明らかではない」でした。質疑者の事をバカにして、ゼロ回答とする最近のやり口です。こんな答弁を返す相手に、私は容赦しません。ただ、あえて言えば「真正面から答えにくい」という事を示唆しているのでしょう。

 そして、次の射幸心の話は、カジノ(賭博)とぱちんこ(遊技)との違いは何かという事と表裏一体です。

【2本目の質問主意書】

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条第一項第四号における「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」と、累次政府答弁における「刑法上賭博等が犯罪とされておりますのは、賭博行為が、勤労その他の正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、社会の風俗を害する行為として処罰することとされているものと承知しております。」との比較について次のとおり質問する。

一  「射幸心をそそる」と「射幸心を助長」は、いずれが射幸心が高い状態にあるか。また、その間に含まれるのは如何なる状態か。

二  「射幸心をそそるおそれ」と「射幸心を助長」は、いずれが射幸心が高い状態にあるか。また、その間に含まれるのは如何なる状態か。

【2本目の答弁書】
お尋ねの「その間に含まれるのは如何なる状態か」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「射幸心をそそる」は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第一項第四号に規定する用語であり、「射幸心を助長」は刑法(明治四十年法律第四十五号)上賭博等が犯罪とされている理由を述べた答弁において用いた用語であることから、お尋ねの「「射幸心をそそる」と「射幸心を助長」は、いずれが射幸心が高い状態にあるか」について一概にお答えすることは困難である。また、お尋ねの「「射幸心をそそるおそれ」と「射幸心を助長」は、いずれが射幸心が高い状態にあるか」については、先の答弁書(平成二十八年十一月十八日内閣衆質一九二第一二三号)四及び五についてでお答えしたとおりである。

 簡単に書くと、今の考え方では以下のようになっています。

カジノ(賭博) → 射幸心を助長

ぱちんこ(遊技) → 射幸心をそそるおそれ

 前回の答弁書で、射幸心の高さとしては「助長>そそるおそれ」である事は明確になっています。理屈で考えても、賭博に当たるものの方が遊技より射幸心が高いのは言うまでもありません。そこで私は「助長」と「そそる」はどちらが上かという質問をしたのですが、これは一概に答えられないでした。「助長」と「そそるおそれ」は上下関係にあるけど、「助長」と「そそる」については上下関係が分からないという事です。

 そう考えると、「助長(カジノ)」と「そそるおそれ(ぱちんこ)」とを比較した時の射幸心の差は対して大きくないことを示唆しています。

 私は現行法を前提とする限り、以下のような事を結論として導き出しています。

● 私が出した累次の質問主意書への答弁で「政府がぱちんこの三店方式や換金行為にお墨付きを与えた」という話が流布しているが、特に政府が新しい立場を出したという事ではない。新しい所があるとすれば、「換金行為を承知している」と答弁した部分だけ。

● あとは「遊技としてのぱちんこは風営法の規律に従えば合法」、「換金行為があるからといって直ちに違法ではないが、ぱちんこ業者と換金業者は分けなくてはならない(三店方式)」というこれまでの答弁を踏襲。

● なので、私の質問主意書・答弁のやり取りで何かを喜んでいる方は「ぬか喜び」でしかない。むしろ、「換金行為を承知している」という答弁で政府としてサービスした以上は、三店方式の徹底、射幸心の抑制に警察庁は乗り出してくるはず。

● 別の視点から見ても、「助長(カジノ)」と「そそるおそれ(ぱちんこ)」の射幸心の差が非常に小さい以上、IRが俎上に乗ってきた事から、警察庁は違いを明確にしようとするはず。つまり、警察はカジノとぱちんこを射幸心の面から切り分けられるようにしてくると思われる。それはぱちんこの射幸心抑制という事になる。

 上記で「現行法を前提とする限り」と書きました。実は私はこういう複雑な法的なストラクチャーをこれを機会に完全に見直した方がすっきりしていいと思います。今日書いたブログは分かりにくいですよね。その分かりにくさは法的なストラクチャーが分かりにくい事に原因があります。

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