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【T-Rexの真骨頂】

日本の対ロシア外交にも影響しそうなのがアメリカの国務長官の外交方針。エクソンモービルのトップから華麗なる転身をするRex Tillersonを知る日本人は「彼は極めてまっとうな企業人ですよ。トランプはリスクをとって意思決定ができる人を集めているのかも」と言っていました。

The Economistは最新号で、ほかの政権でも閣僚を務めることができる数少ないまっとうな人物だと評価しています。

Oily diplomacy – Give Rex a chance(油のような/脂ぎった外交~レックスにチャンスを)はざっくりこんな内容です(全文の翻訳ではありません)。
名前に引っかけてT-Rex(ティラノサウルス)と呼んでいるメディアもあります。

レックス・ティラーソン次期国務長官(64歳)を「石油の採掘もできる外交官」と表するのは、次の大統領首席補佐官になるラインス・プリーバス。 41年間エクソンモービルに勤め、世界最大規模の石油会社のトップとなったティラーソンは心底の石油採掘屋で、時にエクソンモービルの方が世界情勢を理解しているとして、アメリカ政府を脇に追いやってきた

それでいながら、ティラーソンは、頼りになると高く評価されている。テキサスの小さな町出身で異を唱える度胸があり、悪名高い首脳と渡り合ってきた
公務経験のない人を国務長官に据えるのはリスクがある。しかし、前例がないというのは、能力がないよりはましだ

保有しているエクソンモービル株を売却し、議会公聴会で話すことになるロシア観しだいではあるが、ティラーソンはトランプ政権の中で、普通の政権の閣僚としてもつかえることのできる 2人か3人の 1 人となるだろう。

テキサス州でボーイスカウトとして育ち、テキサス州立大学に進んだ。ひまな時間ができればカウボーイハットをかぶって乗馬を楽しむという。1975 年以降ずっとエクソンモービルで働き、アメリカ以外ではほとんど生活したことはなく、ゆっくり話す( speaks with a drawl=母音を伸ばして話す)のが特徴だ。

2006年以降は、エクソンモービルのトップとして、ロシア極東の極寒の地サハリンから貧困にうちひしがれたチャドまで、世界でもっとも荒涼たる地域で石油のオペレーションを率いてきた。

それは、市場原理の重要性や原油をめぐる契約の正当性といった原則を譲らずに、プーチン大統領やベネズエラの故チャベス大統領ら独裁者ともつきあってきたことを意味する。

"Private Empire"の著者は、サハリン開発のロシア側のパートナーのRosneft をめぐるプーチン大統領とティラーソンのやりとりを振り返る。プロジェクトを推進するため、プーチン大統領が大統領令を出すと申し出たところ、ティラーソンはロシア大統領がエクソンモービルのモラル水準に基づいて行動するだけの法的根拠を持ち合わせていないとして、申し出を拒否した。それを聞いたプーチン大統領は「怒り心頭に達した (blew his stack) 」ものの、ティラーソンの要求に従ったという。

その後2011年にエクソンモービルとロズネフトは、北極海の一部でロシア領のカラ海で油田開発を行うことで合意した。

2013年にはプーチン大統領がティラーソンにロシアのOrder of Friendship の勲章を与えた。北極海の合意は、 2014年のロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカの経済制裁によって頓挫。この経済制裁にティラーソンは反対していた。

ティラーソンとプーチン大統領の深い関係は、国務長官承認に必要な議会公聴会で厳しく追及されるだろう。しかし、ロシアで何十年もビジネスをしてきた経験は、前任の国務長官よりロシア事情に詳しいということでもある。

よく分からないのは、ヨーロッパなどアメリカの伝統的な同盟国との関係をどう考えているかだ。ティラーソンの指名によって、アメリカの外交は結局、原油やほかの希少資源を安定的に確保することだという懐疑的な見方を蘇らせかねない

しかしながら、ティラーソンは国務省に、そしてトランプ政権に石油産業のよいカルチャーを持ち込むこともできる。原油を探し出し、掘り出すには、地下の地質学と同時に地上の地政学リスクの分析が不可欠だ。

世評では、エンジニア出身で、データに基づく決断にこだわるという。「忍耐強く感情を表に出さない」とも言われている。それらは、直感で行動するトランプとは正反対だ。

ティラーソンとトランプは意見を異にすることもある。ティラーソンは、地球温暖化は起きていると考えるし、パリ協定に賛成もしている。

運も必要だが、ティラーソンはアメリカの国益を推進するための戦術的な腕前を持ち合わせているだけでなく、ボスに向かって道理を分からせるだけの高潔さも持ち合わせるだろう( With luck, he will not only have the tactical skills to further America’s interests abroad. He will also have the integrity to talk sense into his boss)。

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