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- 2016年12月15日 06:39
「小池新党」は蓮舫民進党が急接近でいいのか…? 都議会自民党と全面対決へ
1/2小池知事のカードとは?
週末12月10日の土曜日に第3回の小池百合子政経塾「希望の塾」が開催され、週明けからマスコミはこぞって「小池新党」と報道している。
これまで「新党までは…」と消極的に捉えていた人たちも一転、「小池新党」と言い始めている。
筆者は、都知事選の際から、投開票日の7月31日以前の7月29日に書いたコラム「救世主となる「小池新党」はあるのか?」で触れたのをはじめ、これまでも小池新党の可能性について書いてきた。
都知事選の際に有権者に指摘していたのは、次のようなことだった。
〈 小池氏は当選すれば、自ら党首となって「小池新党」シナリオと、都議会自民党と手打ちをして「安定都政運営」シナリオを両天秤にかけ、大阪のように一気に転換できそうなら「新党」、そこまでいかなさそうであれば「手打ち」と選択していくのだろう。その辺りは政策でも言動でも絶妙に通り抜けているような印象を受ける。仮に新党を作ったとしても、その新党は官邸とは連携していくであろうことも紹介しておく 〉ところが、だ。
「いよいよ新党!」とマスコミが報じ、その可能性が高まると、政治の世界では色々な人が寄ってくる。今回の場合、その代表格が、民進党の蓮舫代表ではないだろうか。
小池塾が実施された翌日の11日、蓮舫民進党代表は新潟市で記者団に「小池氏の頑張っている点を最大限評価し、古い政治と闘う姿に共鳴もしている。何か協力できることがないか探ってみたい」と語っており、来年夏の都議選で小池知事と連携を模索する考えを示したとされる。
蓮舫代表は9月にもTBS「時事放談」で小池知事の政治塾立ち上げに向けて、「我々の仲間も機会があれば参加したい」と述べており、小池百合子政治塾である「希望の塾」の塾生の中には現職・元職の都議や地方議員などが多数含まれる。
民進党の元都議に至っては、「希望の塾」に入らなかった者が、「あなた以外はほとんどが希望の塾に入っているが大丈夫なのか?」と指摘されるほどの状況になっているという。
3ヵ月前の9月23日、蓮舫氏が小池氏を表敬訪問し都庁で話をしている。
マスコミ報道では蓮舫氏の小池氏への接近ばかりが報じられているが、この時、小池氏側からは都議選等についてかなり踏み込んだ話があったとも耳にする。
来年7月に行われる都議会議員選挙の際に、選挙区によって民進党候補者を応援する代わりに、当選後は民進党は小池新党の候補と同一会派を組むことなどが提示されたとも噂される。
実際に元都議会議員でもある野田数 東京都特別秘書が、民進党の多くの都議や元職たちに積極的な働きかけを続けていると聞くほか、民進党元市議の集会には小池知事の代理としてこの野田数氏が出席し、メッセージを代読したという。
自公を過半数割れに追い込むためには
図表:都議会議員選挙区別定数
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出典:筆者作成
東京都議会の議席は選挙区ごとに配分されているが、うち定数8人区が2ヵ所、6人区3ヵ所、5人区3ヵ所、4人区6ヵ所、3人区5ヵ所ある。
小池新党が出来た際には、7月の都議会議員選挙では「最低でも20議席程度を確保」と選挙プランナーが分析、などと報道されているが、我々が簡単に見ても、8人区で各2議席、6〜3人区で1議席獲得した場合、これだけで21議席となる。
小池知事側から見れば、問題は、127議席ある都議会の議席の中で、60議席を自民党が占める状態をどう改善させられるかだ。
まずは公明党の23議席を合わせた83議席を過半数割れの63議席に減らしたいところであり、公明党の23議席は現状維持と仮定すると、自民党の60を40まで20議席減らすことが重要だ。
そこまで追い込めば、政策ごとにでも公明党の賛否が変わる可能性が出てくる。状況は大きく変わることになるだろう。
こうした前兆は今議会にもあった。
公営企業会計決算特別委員会におけるいわゆる豊洲新市場の「盛土」問題を含んだ中央卸売市場会計の採決において、賛成の自民党に対して、公明党は他の全ての会派と共に反対に回ったのだ。
これにより可否同数となり、最終的には公明党所属議員である委員長が反対する旨を述べ、委員会採決は「不認定」となっている。
都議会においては、自民党単独では60/127しかなく、現状においても公明党の判断によっては、都議会自民党の意見と異なる結論になることがあるのだ。
ただ、こうした状況を考えると、小池新党が一定の議席を確保することはもちろんだが、同時に反自民を増やす構造が必要であり、その議席が現状18議席ある民進党から取るのではなく、自民党から取るという仕掛けが必要になるということだ。
その意味では、定数が1や2である選挙区での戦いも重要であり、非自民で統一候補で戦うというのは1つの重要な戦略だと言える。
今回の塾開催後、小池氏は記者に「カードはたくさん持っていたい」と話しているが、おそらくこのカードの一つが民進党との連携であることは間違いなさそうだ。
2枚目のカードは、自民党都議の引き抜き
しかし、そうは言っても民進党との連携は「カードのひとつ」に過ぎない。より効率的なカードもあるはずだ。自民党都議を直接引き抜いて小池新党から擁立する方法だ。
小池知事の人気が、多少の上下はあるもののこのまま続いた場合、都議会自民党の一員としての出馬では当選が厳しい議員も多い。
一方で地盤がある自民党候補が小池新党から出馬することになれば、そうした候補も一転して次の選挙は実質的な「当確」になる。
小池知事の地元を中心に仮に10人もの自民党都議をひっくり返すような事態にでもなったら、自民党都議団は選挙の前に、60から一気に50に減る事になる。
おそらく、特別秘書の動きなどから、狙いは、当選期数の少ない若手などを中心に、こうした仕掛けを同時に行っていくことなのではないだろうか。既に自民党都議の中にも造反が出てきているとも噂される。
革新派の新党と異なり、自民党議員による新党の形成は、自民党議員を引き抜く際のハードルが低くなる。その意味でも小池新党には大きな可能性があると言える。
事実、大阪における大阪維新の会の場合、自民党会派を2分した構造が、そのまま新党となったことで、一気に過半数を奪う結果となった。
オリンピック関連での森元総理との関係、議会での都議会自民党の構図、そして自民党都連の7人の侍の除名処分と揃ったことで、小池知事の言うところの「大義」は揃ったように見える。
政府との関係は別にして、都議会自民党との全面対決を前提に、一気に都議会の構造を変えたいと考えた場合、こうした手法が最も重要な一手とも言えるのではないかと思う。