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「ネットの読者の多くはセンター国語で120点取れない」問題

blog.tinect.jp  

 リンク先は本を読むのが苦手な人の話だが、読んで、インターネットにおける読解力も同じだな、と思った。
 
 今、インターネットには短い文章が氾濫している。LINEやSNSはもちろん、医療や国際政治といった重要な問題を“解説する”文章もずいぶんと短い。本来なら長い文章を費やして込み入った問題を紐解かなければならないようなトピックスも、びっくりするほど短い文章で“解説”されている。
 
 そして、そのような短くて(ときに無責任な)“解説”は、読者のニーズに合っているらしく、長くて複雑で結論を慎重に留保するような文章よりも、短くてシンプルで結論に飛び付くような文章のほうが人気を集めやすい。今、インターネットで人気を取れる文章を書き綴るなら、「本を読むのが苦手な人」、あるいは「長文を読む意思や能力を持たない人」をターゲットとしたほうがヒットしやすい。
 
 そもそも、インターネットの読者の読解力とはいったいどれぐらいのものだろうか。
 
 例えば、いろいろなブログについているはてなブックマークのコメントなどを読むと、指示語やパラグラフの主旨といった“文章読解の基礎”ができていない人、あるいは嗜好によって内容の解釈がすぐにズレてしまう人は少なくないように見受けられる。比較的高学歴で文章読解に慣れていると見做されがちなはてなコミュニティですら、読み書き能力 literacy が足りなくて高確率で文章を読み損ねてしまう人が珍しくないのだから、他のインターネットコミュニティは推して知るべしである。

 では、ネットユーザーの読み書き能力は一体どれぐらいなのか?
 
 ネットユーザーの読み書き能力をテストした統計を、私は知らない。しかし、全国的な国語のテストであるセンター試験の国語平均点を河合塾のサイトで調べてみると、国語の平均点は200点満点で100~130点ぐらいで推移していることがわかった。
 
 f:id:p_shirokuma:20160414141322p:image
 
 このうち現代文の点数がどれぐらいなのかはハッキリしないが、配点の半分が現代文であることを考えると、正答率が8割を超えるということはないだろう。逆に言うと、半分以上の人はセンター試験の現代文を2~3割以上読み違えている。
 
 ちなみに、国語が苦手な人のなかには「現代文を読むのに正解なんて無い」などと言う人がいるが、こと、センター試験の現国に限っていえば、それは間違いである。再び河合塾のウェブサイトから抜粋すると、
 

 もしあなたが入試現代文の学習をまだあまり積んでいないならば、まずは〈本文を根拠に解答を決める〉という態度を習慣づけることが大切です。問題を解いていて迷ったら、選択肢だけを見て答えを決めようとするのではなく、必ず本文に戻って、本文中の記述を根拠に答えを決めること。とくに小説の問題では、勝手な思いこみで答えを決めてしまわないことが大事です。つねに理由づけをしながら解答を選ぶという姿勢を徹底させるようにすることが、入試現代文では最も大切なことなのです。

 とある。
 
 センター試験の国語の問題は、基本的に、本文に書かれていることを正確に読み取れるか否かを問うもので占められている。感想を問うているのでなく、読み書きの手続きに従ってキチンと読めるかどうかを問うているのであって、感想や感情に左右されることのない、読解上の正解がある。
 
 センター試験で問われているような読解の手続きに従って読む能力は、まさに読み書き能力の基礎であり、これが出来ていない人は、どれほどの良書にトライしたとしても、文章を読み損ねてしまう。だから、読み書き能力が高いか否かは、文章から手に入れる知識や情報の精度をダイレクトに左右するし、それだけに致命的だ。読み書き能力が低く、文章読解の精度が低い人は、何を読んでも誤解しやすく、間違えやすい。
 
 ところがセンター試験の平均点が暗に示しているように、世間一般の読み書き能力はそんなに高くはない。センター試験を受ける学生よりは人生経験が長いぶん読み書き能力ができている人も多いかもしれないが、センター試験の受験者よりも読み書き能力が低いまま人生を過ごす人も多かろうから、世間の、そしてネットの読者の読解力は、センター試験の国語で120点取れるか取れないかぐらいの水準、2~3割ほど読み損ねるぐらいの読解力だと想定しておくべきだろう。
 
 だとしたら、このことをネット上の書き手/読み手はどのように受け止めるべきだろうか。
 
 書き手サイドは、なるべく読み損ねが発生しないように簡潔な文章を書くのが望ましいのだろう。特に、たくさんの人の目に触れる文章を書こうとする人は、「同じ内容の文章を、いかにシンプルに書けるのか」のライティング能力を鍛えなければならない。
 
 とはいえ、読み損ねが発生しないような簡潔な文章を、込み入った要素などをしっかり残したまま書き綴るのは猛烈に難しいことだ。その筋の専門家ならともかく、楽しみとしてインターネットに文章を書いているアマチュアには遠い目標なのかもしれない。けれども「読者は意外と読み損ねる」という感覚は、アマチュアでも持っておいたほうがいいだろうと思うし、少なくとも、自分が書き損ねたことを読者が上手に補正してくれて文意を汲み取ってくれるとは、あんまり期待しないほうが良いと思う。
 
 読み書き能力が高い読み手のなかには、そういう器用でありがたいことをしてくれる人もいるけれども、まあ……そういう人は少数派だと思ってかからなければならない。
 
 反対に、読み手サイドとしては、ネット上に文章を書く人の多くは読み書き能力がそれほど高くないことを意識して、「これ、書き損ねかもしれないなぁ」という可能性を気にかけておいたほうが良いのだろう。特定のパラグラフだけ変なことを書いている文章をみかけたら、それは書き損ねかもしれない。そこらへんを踏まえて読んだほうが、誤解やストレスを避けやすいかもしれない。
 
 と同時に、自分自身が読解に失敗しているかもしれない可能性を、いつも気にかけたほうが良いようにも思う。体調の悪い時、不安を感じている時、因縁深いテーマの文章を読む時には、読み損ねが起こりやすい。そういう文章と接する時こそ、「自分は間違った読み方をしているかもしれない」可能性に注意深くなっておいたほうがいいだろう。これも、上をみればキリがないことだが。
 
 冒頭リンク先でも書かれているように、「きちんと日本語が読める」ということは、情報のインプットの質に直結するし、情報化社会では、それがありとあらゆることについてまわる。読解力が足りていない人は、そこらじゅうで勘違いして、そこらじゅうで誤解して、そこらじゅうで間違ったことを覚えてしまいかねない。学生時代に国語が苦手だった人、今でも苦手だという人は、ネットの文章をむやみやたらと読むより前に、国語の基礎的な勉強をやり直したほうがハッピーになれるかもしれない。

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