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新薬が既存薬より 良いとは限らない-内側から見た米国医療30

(この記事は2015年9月号(vol120)「ロハス・メディカル」 およびロバスト・ヘルスhttp://robust-health.jp/ に掲載されたものです。)

「新しい薬は古い薬よりも優れているはず」という考えを持つ人は、医師にも患者にも一定数いるように思えます。しかし医療において、この考えが常に正しいわけではありません。

例えば2型糖尿病の経口治療薬。ここ15年で数々の新機序の薬が登場しました。選択肢が増えたのは喜ばしいことで、これら新薬のおかげでインスリンを使わずに血糖値を下げられた患者さんが多くいます。一方で、米国および欧州糖尿病学会のガイドラインで強く推奨される第一選択薬(最初に始める薬)は、腎機能障害といった禁忌の場合を除いてメトホルミンという50年以上も使われている古い薬です。様々な研究と長い歴史により、他の薬と遜色ないか、それ以上の有効性と高い安全性が証明されているのに加え、値段も安いためです。米国では患者の自費購入の場合、1カ月分のメトホルミンが10ドル以下で買えるのに対し、他の新しい薬は軽く100ドル以上します。

一般的に古い薬は、長く使われている分、効果や安全性に関わるデータが豊富で、その結果としてさらに長く使われているという側面もあります。メトホルミン以外にも、脳梗塞や心筋梗塞の二次予防に使われるアスピリン、高血圧に使われるサイアザイド系利尿薬など、効果的な古い薬はたくさんあります。もちろん、古い薬が必ず良いというわけでもありません。効果が実証されていないのに慣習的に使われているだけの薬や、新たなデータにより副作用が分かって消えていく薬もたくさんあります。

メトホルミンのように効果的で、ガイドラインで推奨され、医師側は使い慣れていて、患者さんのお財布にも優しい薬は、さぞ人気だろうと思いませんか?ところが面白いことに、新たに経口薬治療を始めた糖尿病患者の処方内容を調べた最近の米国の研究では、6割の患者でしかメトホルミンが選ばれていませんでした。つまり、残り4割の患者では、医師はメトホルミン以外の薬を最初に処方していたのです。この結果には、医師側の知識不足、保険による自己負担額の軽減(新しい薬も安く手に入る)、医師や患者の好み、製薬会社による宣伝など、様々な要素が関連しているのでしょうが、“新薬に対する良いイメージ”の影響も無視できないと思います。

画期的な新薬が、今まで治療法が限られていた病気に光を照らす、という場合ももちろんあります。しかし、既存の薬と比べて多少はいいかもしれない程度、もしくはあまり変わらないか、むしろ劣るといった新薬も多くあります。既存の薬より明らかに優れている場合を除き、歴史が浅く値段の高い新薬を第一選択として処方する必要は、一般的にありません。“古い薬の方が良いクスリ”のことも、往々にしてあるのです。

もしあなたがもらっている薬の中で、自己負担額が妙に高いものがあったら、「もっと安い(古くて同程度の効果がある)薬はありませんか?」と医師に訊いてみるのも一つの手です。

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