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それでも建てる賃貸アパート

日本でアパート建築ラッシュが続きます。一時このブームも止まるかと思ったのですが、そうでもないようです。このアパート建築ラッシュについて少し考えてみます。

まずはブルームバーグのこちらの記事の一部をご覧ください。「国土交通省によると、住宅着工戸数は貸家が9月まで11カ月連続で増加。前年同月比の伸び率は12.6%と、持ち家(1.4%)を上回った。調査会社タスによると、アパートの空室率は少なくとも13年以降は30%前後で推移していたが、昨夏から悪化し始め、今年9月時点では神奈川県37%、東京23区と千葉県が35%に達している。」

賃貸アパートの建築は持ち家の伸びの9倍にもなるのです。人口減の日本では当然ながら潜在的入居者が減少傾向ですから空室率は5ポイントほど上がっていることになります。それでもアパートを建築したいその理由はいくつかの組み合わせ理由によります。

1. 相続税対策。特に2015年1月の相続税大改正でちょっと資産を持っていただけで相続税がかかってくる可能性が出ています。更に私は2つのポイントを指摘しておきます。一つは一次相続から二次相続の時代に変わりつつある点です。夫婦のどちらかなくなって相方に相続する場合は1億6000万円の控除があります。ところがその相方も亡くなり、子供に相続をする場合はそういうわけにはいきません。もう一つは少子化が進んだ日本に於いて相続する子供の数が圧倒的に減っている為、被相続人が貰うであろう相続額は増えるということです。

2. 銀行の姿勢。相続税を払うような「資産家」を銀行はしっかり抱き込んでいます。特に相続に絡むような場合には銀行ととしてはこれほどおいしいビジネスの相手はいません。あらゆる分野でしゃぶりつくことが可能なのです。当然、アパートを建てさせる融資を甘い言葉で引き込むのは容易であります。また、資産家となれば銀行ローンには世話になっていない人も多く、「金利1%で借りられるの?」と聞けば喜んでしまうのです。実態としては銀行は大手企業には0.1-0.3%、個人住宅ローンで0.6%-0.7%程度のレートですから1%は銀行にとってはウハウハレートなのであります。

3. 住宅建築会社の甘言。建てた後、「10年家賃保証します」というパッケージをオファーするケースも多いと思います。そこで捕らぬ狸の皮算用をするのです。一部屋7万円で10部屋あれば月70万円、年間で840万円にもなると思うのでしょう。実際には上述の通り空き室率が35%あるのですから840万円x65%=546万円しかないのです。もう一つのウソはこの「家賃保証」なのですが、これは家賃保証をする期間の話で家賃の金額を保証していません。

また日本の借家法で「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」という項目があり、周りが下げたら自分も下げざるを得ないトリックが存在します。よって7万円の家賃がある日突然6万円に下がることもあるわけです。仮にそうなれば6万円x10部屋x65%x12か月=468万円まで下がってしまいます。これは取らぬ狸の計算より44%も低いということです。

もう一つ、「家賃保証」に対して業者へ管理費といった名目の費用を払わなくてはいけません。つまり、業者からすれば建築はさせてもらうわ、修繕費を貰えるチャンスが生まれるわ、運営管理費は貰えるわで3つもおいしい話なのであります。

ここまで言うとお分かりかと思いますが、アパート経営とは小金持ちが様々な業者からしゃぶりつくされる実に美味しいビジネスモデルなのであります。

ではどうすればよいのか、ですが、借地借家法がかかるビジネスは魅力的ではない、ということかと思います。改正されたとはいえ、この法律は借主に圧倒的に有利にできています。戦後の住宅不足と大家の権利を制限する発想、また、社会主義的な弱者救済の思想にもとづいて作られています。よって、例えば家賃不払いの賃借人でもそう簡単に追い出せない仕組みが存在します。

私はこの盲点に引っかからないような不動産ビジネスをすべきかと思っています。シェアハウスなどはその代表例ですが、アパート建築ラッシュの地方には不向きのビジネスです。ならば、元気なうちに不動産を流動化し、ビジネスのしやすいところに再投資するなど知恵はいくらでもあるはずです。

アパートバブルは国税と銀行と建築会社が三位一体となった金持ちの高齢者にまとわりつく実に不健康な世界を作り上げたとも言えないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

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