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原発ゼロの会談話

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7.1Fへの廃炉会計制度(廃止措置資産)適用には歯止めがない
 1F廃炉費用のうち固定費については、廃止措置資産(廃炉・汚染水対策のために新たに取得する設備等)への廃炉会計制度の適用を継続し、その減価償却費を託送料金に上乗せすることも検討されている。元々、廃炉措置資産という区分は通常炉の廃炉を促進するために2013年の廃炉会計制度導入の際に設けられたものであり、事故を起こした1Fに適用するためには通常炉とは別途の根拠を必要とする。しかし、その根拠が示されないままに、資金確保のための「政策対応」に議論が飛んでいる。
 そもそも通常炉に関しても、「発電と廃炉は一体の事業」という理屈で、廃止措置中も引き続き役割を果たす設備(原子炉格納容器など)について固定資産除却損(特別損失)の一括計上ではなく減価償却の継続と電気料金原価算入を認めた2013年廃炉会計WGの論理には問題がある。同WGは事故炉にも留保なく適用することを認めたが、これを維持するのであれば、廃炉・汚染水対策のための新規取得資産が際限なく廃止措置資産として計上されることになる。その矛盾を放置した上に、特例を設けることは現に慎むべきである。

8.東電破綻処理、株主・貸し手責任の完遂が前提
 負担の前提となる責任の所在の議論があいまいなまま、1Fの事故費用負担の現状や廃炉や賠償にかかる費用の具体的な見積りも示されていない中で、このまま費用負担の論議や統合・再編を含む東電改革論議が先行するのは本末転倒である。原則に戻って、費用認識をし、経営責任の明確化と株主・貸し手責任の徹底を前提として、廃炉と賠償の完遂という特殊事情を踏まえつつ東電の今後を議論すべきである。

【老朽炉の廃炉費用について】
9.「安全神話」の反省がない
 3.11の反省を踏まえて原子力規制委員会が創設され、原子炉等規制法も改正されて40年運転制限やバックフィットが導入され、新規制基準も策定された。
 にもかかわらず、安全神話の下での60年運転計画を前提に、老朽炉の40年廃炉は原発の40年運転制限の導入や新規制基準の策定という政策変更を理由とした「計画外廃炉」に当たる、あるいは新たな基準を既存炉に適用するバックフィットを理由とする廃炉も計画外廃炉となるなどとして、国民負担に転嫁するのは福島第一原発事故の検証を無視した議論であり認められない。

10.ベースロード電源市場とのバーターにすべきではない
 当初資源エネルギー庁は、電力小売自由化後も大半の新電力は大手電力会社の電源から常時バックアップを受けて供給力を補っており、大手電力会社の原発を含む電源から受益をしているというアクロバティックな「現在受益論」を唱えたが、さすがにこれは評判が悪く取り下げた。しかし、託送料金上乗せを認める見返りとして、大手電力会社のベースロード電源に対する新電力のアクセスを確保することなど、原発をいわば「公益電源」化する議論は維持されている。ベースロード電源の開放は大手電力会社と新電力の競争条件を対等にして競争を促進する必要条件であるが、託送料金上乗せの交換条件にするものではない。また、「公益電源」などという言葉で惑わせ、託送料金を通じた消費者負担で原発を優遇することを正当化すべきではない。
 電気そのものの価値から二酸化炭素を排出しないという「非化石価値」を分離して取引できるようにする「非化石価値取引市場」創設も検討されている。その主要な目的は、再生可能エネルギーの推進とFIT(固定価格買取制度)賦課金の国民負担軽減である。しかし、原発を非化石電源として再エネと同列で扱うことは問題であり、原発の環境汚染リスクという負の価値を減殺させる不当な優遇措置となるため認められない。

11.廃炉促進の特別法で分割償却を担保すべき
 通常炉の廃炉費用に関する今般の検討の「目的」としては「原発依存度低減、廃炉の円滑化」が掲げられており、資源エネルギー庁の資料は廃炉促進を前面に出した上で会計上の制約を訴える構造となっている。資源エネルギー庁は、計画外廃炉については一括費用認識が問題であって、「電力会社が廃炉に関係する費用負担を回避したい訳ではない」とする。直接的なキャッシュフローではなくバランスシートへの影響(債務超過あるいは財務指標悪化による資金調達リスク)のみが問題であるのならば、特別損失一括計上ではなく費用として分割計上できるよう会計上の特則を担保できればよいはずである。その場合であっても、電気事業会計規則など経済産業省令レベルで処理するのであれば国民、国会の監視・関与が効かない。あくまで会計原則の例外であることを明確にしつつ、廃炉促進を目的とする特別法を制定して分割償却を担保すれば透明性も確保でき、望ましい。

12.託送料金上乗せは電力会社に不当な損益改善効果
 廃炉費用を利益(=電気料金-本来の原価)から捻出する場合は分割償却と特損一括計上との間で電力会社の通算損益は変わらない。しかし、廃炉費用を託送料金に上乗せすることは、廃棄する資産の対価を消費者から別途徴収することと同じであるので、電力会社の損益にとってプラスの効果が生じる。また、発送電分離後の廃炉費用は原子炉を所有する発電会社に帰属するのに対し、託送料金収入とこれに対応する費用(託送料金原価)は送配電設備を所有する送配電会社に帰属するため、会計上の矛盾が生じる(廃炉費用を賦課金の形で徴収する場合でも事実上、価値のない資産の対価として消費者に追加負担が生じることには変わりがない)。加えて、廃炉費用(原子力発電施設解体引当金)の見積りが上振れして膨らんだ分も託送料金に上乗せされる可能性が示唆されている。資源エネルギー庁は「見積り総額を経産大臣が承認する」ことで妥当性を確保する現行の仕組みを継続するとするが、廃炉費用が際限なく託送料金に転嫁される抜け道を作ってはならない。

13.会計制度を歪めるべきではない
 廃炉が決まった原発は、もはや発電をせず、売上を生まないのであるから廃炉費用には原価性がなく特別損失として計上されるべきものである。しかしながら、廃炉会計制度では、電気料金の総括原価方式の原価として算入することによって廃炉費用に原価性を付与して一括費用認識(特損計上)を回避している。
 2020年の規制料金撤廃以降は、この原価性を維持できないことから、残る規制料金である託送料金の原価として一括費用認識を回避することが目論まれているが、託送料金制度を利用しても原価性のないものに虚構の原価性を付与することには変わりがない。本来、電気事業会計制度と電気料金制度との間には「会計制度を基礎にした電気料金」という関係があるはずである。つまり、電気事業会計の社会性を担保するために企業会計の原則に従うことが当然に求められ、その会計を基礎として電気料金が算定される。しかし、廃炉会計制度では電気料金原価に算入するという結論に会計制度の方を合わせる「電気料金を前提とした会計制度」という逆転が起こり、会計制度が歪められている。これ以上、原子力発電に関する会計制度を歪めるべきではない(金森絵里氏『原子力発電と会計制度』参照)。

14.「原発は安い」というコスト計算に意味はない
 福島第一原発事故により多額の賠償・廃炉費用が発生するという経験をした後でも「原発は安い」と主張されている。「原発は安い」と言うのであれば、通常炉・事故炉を問わず賠償・廃炉費用は利益(過去利益を含む)から捻出すべきである。託送料金上乗せを求めるならば、「原発は安くなく、電力会社が負担に耐えられない」ことを認めなければ筋が通らない
 まずは1F賠償・廃炉費用及び通常炉の廃炉関係費用の見積りを明らかにすべきである。また、計画外廃炉の場合、電力会社は稼働継続と廃炉との間で損益を比較して合理的に判断しているはずである。本来電力会社が捻出すべき費用が安易に消費者につけ回されてはならず、原発によってどれだけの利益が蓄積されているのかをはじめ原発に係る通算損益の計算、電力会社の負担能力に係るデータも明らかにすべきである。
以上

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