- 2016年12月08日 21:07
原発ゼロの会談話
2/32.東電債務超過回避のために費用見積りを隠すべきではない
政府は東電が債務超過になる恐れがあるとして、東電委員会で東電改革案がまとまる年末まで1F事故賠償・廃炉費用の最新見積りを公表しない方針のようだ。一方で電気事業連合会が8.1兆円の資金が不足するという試算を政府に示し、国費負担を要請したとか、経産省が賠償・廃炉費用の総額は20兆円を超えると推計したといったことが報じられている。政府は過去に例がないため費用見積りが難しいと言うが、合理的に見積れる範囲であっても東電が実質的に債務超過になる可能性がある。賠償・廃炉費用の規模感が具体的に示されないままに、費用負担の仕組みや統合・再編を含む東電改革の論議が先行するのは本末転倒である。
3.老朽炉の廃炉関係費用の見積りを明らかにすべき
2012年の原子炉等規制法の改正で原発の運転期間が40年に制限され、審査を通った場合に限り20年の延長が認められることになった。既に関西電力美浜1、2号機、中国電力島根1号機、四国電力伊方1号機、九州電力玄海1号機、日本原電敦賀1号機の6基が運転期間延長申請をせず廃炉とすることが決定した。
原発の廃炉費用は多額に上るため運転期間中から原子力発電施設解体引当金を積み立てることとされており、その引当費用は電気料金原価に算入されている。ところが、2013年に制度が改正される以前は、発電量に比例して引き当てる生産高比例法が採用されていたこと等により、引当金の残高が本来積み立てるべき総額に不足するという事態が生じている(引当計算の前提だった稼働率76%に達しなかった等による)。この引当不足額は通常の会計処理であれば特別損失として一括計上されるべきものである。
また、廃炉決定時点における固定資産(原子力発電設備、核燃料)の残存簿価については固定資産除却損が計上され(改修等があるため老朽炉でも設備の残存簿価がある)、さらに、上記解体引当金の対象となっていない核燃料解体費用等も発生するが、これらも特別損失として計上されるべきものである。
しかし、多額に及ぶこれらの費用を廃炉決定時点で一括認識し特損計上することは電力会社の財務に悪影響を及ぼすため、廃炉の決定を躊躇うことが懸念された。そのため2013年と2015年の2回にわたり「廃炉会計制度」が整備され、廃炉関係費用の分割償却と電気料金原価算入を可能にすることによって廃炉を促進することとされた(その他、解体引当金の引当てを生産高比例法から毎年定額引当に変更し不足が生じないようにされた)。
上記6基に廃炉会計制度が適用され、その対象費用については参考資料の通りに明らかにされている(2016年3月末の残高は6基合計で約1,800億円である)。しかしながら、今後も運転期間延長を申請せず廃炉となる老朽炉が出ることが想定されるが、その場合にどの程度の費用が発生し得るかを試算するための基礎データが十分に公開されていない。原子炉毎の解体引当金総額の見積額及び未引当額等は公表されているが、廃炉会計制度の対象となる固定資産の残存簿価及び減価償却費の年額(これにより将来の廃炉決定時の残存簿価が推計できる)及び核燃料解体費用等の見積額も原子炉毎に明らかにすべきである。こうした費用の国民負担への転嫁が検討されているのであれば、公開が優先されるべきである。
【東電賠償・廃炉費用について】
4.原賠機構一般負担金「過去分」はあり得ない
資源エネルギー庁は原賠機構の一般負担金について「本来、これらの費用は福島第一原発事故以前から確保されておくべきであったが、制度上こうした費用を確保する措置は講じられておらず、当然ながら料金原価に算入することもできなかった」と主張する。そして、過去に「安価な電気を利用した需要家」に遡及して負担を求めるべきだが現実的ではないとして、全需要家が遍く負担する送配電網の利用料である託送料金に上乗せして回収することを検討している。すなわちこれは、原発を持つ電力会社だけでなく、新電力の利用者も賠償
費用を負担することになる。
原賠機構の一般負担金は、東電以外の電力会社にも電気料金原価への算入を認め、また株主からの責任追及を回避するために、将来の事故に備える支え合いの仕組みであるとの建前をとるが、実質的には東電支援に充てられてきた。
にもかかわらず、この期に及んでこうした「過去分」なる理屈が持ち出されたことには大いに違和感がある。販売時に原価に含めていなかった分を遡及して取り立てるなどということは通常の商取引ではありえない。販売側が自己責任で処理すべきものである。
そもそも、事故リスクを過小評価し、事故費用の備えを怠ったどころか、リスクに備えると原発が危険だと思われる恐れがあり、また投資に金が嵩むことから、賠償費用の備えをせず安全投資も抑えた国及び電力会社の甘い判断の問題である。「安全神話」を流布させてきた責任を棚に上げ、賠償の原資不足を電気利用者全員で負担しろと言うような、事故検証と断絶した費用負担論は認められない。
5.「使用済燃料再処理等既発電費」の前例を悪用すべきではない
「過去分負担」問題は、使用済み核燃料の再処理費用を発電時に積み立てる使用済燃料再処理引当金の創設時(2005年)にも起きている。制度開始以前に発生した使用済み燃料の再処理費用、いわゆる既発電分について、原発を持つ電力会社の電気料金ではなく託送料金で回収する案が示され、PPS(現・新電力)が反発し、「(過去分をPPSの顧客に負担させるのは)今回の小委員会で最後」にするとして、議論が終了し、2005年度から15年度間にわたり「使用済燃料再処理等既発電費」を電力会社が費用計上することとなり、その相当額が託送料金に含まれている。資源エネルギー庁は、逆に、この議論を託送料金で回収することの前例として示しており悪質極まりない。
6.1F廃炉費用の託送料金上乗せの根拠がない
1Fの廃炉費用は東電の合理化努力により捻出するというのが現下の検討の基本とされている。電気料金に1F廃炉費用を含めることは経営判断であり、消費者にもその価格を受入れるか、他社に移るかの選択肢がある。
しかし、送配電事業の合理化による原価低減分の扱いは別である。合理化分を東電の送配電部門(東京電力パワーグリッド)の託送料金(自由化後も引き続き規制料金)に反映させず廃炉費用に充てるならば、新電力を含む東電管内の全利用者が廃炉費用を負担することになる。それが認められる根拠も示されないままに、送配電事業の合理化分を廃炉費用に充てるために「制度的手当」をどうするかという議論に飛躍している。
廃炉・汚染水対策のうち安定化維持費用については既述の通り小売料金(小売自由化後も2020年までの経過措置として規制料金)原価に算入されているが、そもそも発電をしておらず売上を生まないにも関わらず、経常費用として原価算入を認めた判断は問題であり、送配電網の利用料である託送料金の原価たり得ないことはなおさら明白である。



