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NHKのプロフェッショナル・仕事の流儀を見ながら、ドラマ「逃げ恥」が平凡なのに面白い理由を考えてみた。

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■逃げ恥とドラえもんの共通点。


例えばドラマ「逃げ恥」の設定を思い切りシンプルに分解すると「偶然出会った男女が同居する物語」となる。ここまで抽象化・単純化して考えると、逃げ恥はドラえもんにも似ていることも分かる。未来からやってきたドラえもんは女性ではないが、のび太にとってはネコ型ロボットという現実には存在しない「異物」だ。異物と出会う事で様々な事件が起きて、物語となる。

出会う対象がロボットか、契約結婚を持ちかける派遣切りにあった女性なのか、宝探しの冒険に連れ出そうとする女の子なのか(これはドラゴンボールのブルマ)、出会いが突拍子もないほど物語のスケールは大きくなる。

逃げ恥では主人公のみくりも、契約結婚の相手である津崎も、お互いが出会う事で双方が変わって物語となるが、のび太はドラえもんと出会っても全く変わらない。ずっとドジでのろまで頭が悪いままだ。それどころかドラえもんの秘密道具に依存してしまう。なぜならのび太が変わってしまうと、つまり成長してしまうと物語が終わってしまうからだ。

一時ドラえもんの最終回とされる「ニセモノ」がネットに出回ったことがあった。これは藤子不二雄先生が描いたものでは無く、ドラえもんが好きな人が同人誌に掲載した漫画だという。

その内容は突然ドラえもんが壊れて動かなくなってしまい、一念発起して勉強を始めたのび太は出来杉くんよりも頭が良くなり、大人になって壊れたドラえもんを修理する、という内容だ。これは「何かを失った事で主人公が変わる物語」と考えれば、「何かと出会ったことで主人公が変わる物語」をそのまま裏返した構造だと分かる。

ニセモノでありながら感動モノの内容だと随分話題になった理由も、面白い物語のキモを押さえていたからだ(何かを失った事で主人公が変わる物語で他に有名なモノは「タッチ」がある)。

■池上解説が面白い理由。


池上彰さんの「池上解説」が面白い理由は、難しい政治や経済のニュースを単純化・抽象化してその背景にある問題や原因、なぜこんな問題が起きたのかという構造を視聴者に分かりやすく示す。すると全く関係が無いように見えた問題が大きな視点で見ると実はつながっていることが分かったり、理屈・理論として知られている考え方が現実の問題からボトムアップのような形で導きだされることもあり、そうだったのか!と知的な面白さを与えてくれる。

つまり池上解説は漫画やドラマと同じような楽しさを視聴者に与えるから人気があると言える。面白いストーリーの背景には必ず一定の構造があるように、どんな出来事にもその裏側には本質となる構造が隠れている。

自分はマネー・ビジネス・経済などに関わる内容であれば、ファイナンシャルプランナーの一般的な守備範囲である住宅や保険や投資からズレたネタでも記事で扱う。編集長としての執筆指導も税理士・社労士・司法書士などの各種士業からコンサルタントや大学教授まで様々な分野の専門家にアドバイスをしている。専門知識は当然その道のプロにかなうはずもないが、記事を書く際に本質となる構造までたどり着いているか、つまり記事の書き方が浅いか深いかはわかる。

それは切実さと構造の両面が描かれているドラマが面白いのと同じで、記事で取り上げたネタに書き手自身が興味と熱意を持って取り組んでいるか、そして表面的な話に終始していないかで判断はつく(なので新聞や雑誌等で報道に関わる記者とは全く異なるスタイルで記事を書き、執筆指導も行っている)。

物語を描くには構造を作り、そこでリアルに生きる人物を描く必要がある。面白いビジネス系の記事を書くには、ニュースとして報じられる企業活動や経済活動の裏に隠れた構造を見つけ出す必要がある。構造を「作る」のか「見つける」のか、違いはあれどその行為は非常に似ている。

つい先日、いい加減な記事をまき散らしていたキュレーションメディアを自称するサイトが閉鎖されて大問題となったばかりだが、こんな事を考えながら記事を書き、執筆指導に手間をかけて真面目に運営しているウェブメディアもあると知ってもらえればと思う。

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中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 ファイナンシャルプランナー

●マネーリテラシーの本を書きました。
リンク先を見る 一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人
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中嶋よしふみ 大和書房 2016-09-23
●住宅購入の本を書きました。
リンク先を見る住宅ローンのしあわせな借り方、返し方 (日経DUALの本)
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中嶋 よしふみ 日経BP社 2015-07-16アマゾンランキング: 住宅ローン部門最高1位 総合最高141位 
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