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共産党と鳥畑与一の間違い:ギャンブル依存症対策

さてさて、我々からしてみるとウンザリしてくるワケですが、現在、参院で執り行われているIR推進法案(通称:カジノ法案)に関して共産党議員から以下のような発言がありました。




(1:07:13あたりから)

田村智子議員(日本共産党):
「カジノ合法化推進者が称賛するシンガポールのカジノでは、本人や家族などの申し出で入場を禁止する自己排除制度、自国民からの入場料徴取などギャンブル依存症対策として厳格な規制を行いました。しかし、開業から4年で入場禁止者は20万人を超え、自己破産も急増、大王製紙の前会長が会社のカネをバカラ賭博につぎ込み、106億8千万円を失ったのもシンガポールカジノです。」
 

2005年にカジノを合法化し、2010年からその営業が始まったシンガポールで採用された排除プログラムですが、この制度はカジノへの入場を事前登録制とし、本人、家族、もしくは行政が指定する特定の人物を物理的にカジノそのものへの入場を防止するもの。世界のカジノ業界のみならず、現在世界の賭博関連業種において、「実効力を伴った」ギャンブル依存症対策のひとつとして広がりを見せているこの施策そのものに対して、共産党議員は「4年で入場禁止者が20万人を超えた」として批判の矢を向けています。

この共産党の批判の「出元」となっているのは、本ブログ上でも度々登場してきているマルクス経済学者の鳥畑与一氏(@静岡大学)。例えば、鳥畑氏がつい先日、産経新聞の運営する言論プラットフォームiRONNAに投稿した寄稿文でも以下のような記述が登場しています。


ギャンブル大国は必ず破綻する? 国民を欺くカジノ合法化の皮算用
http://ironna.jp/article/4703

確かにシンガポールのNCPG(問題ギャンブル国家審議会)の2014年調査によれば、ギャンブル依存症率は大きく低下している(表2)。しかしそのデータを子細に見れば、カジノ参加率が7%から2%に大きく減少している。住民数に置き換えると26・5万人から7・7万人への減少となる。一方で「自己排除制度」でカジノ入場禁止措置を講じた人数は大きく増大している(本年9月には31・7万人)。
 

ただこれは事実として申し上げておかなければならないのは、シンガポール政府が依存症対策の一環として設置する排除プログラム登録者の約30万人のうち、実に四分の三を占める24万人の登録者が「外国人」です。以下、シンガポールで当該プログラムの所管を行っているシンガポールの国家ギャンブル存症問題対策会議の公式資料より。

リンク先を見る

現在、シンガポール政府は、外国人のシンガポール内での労働許可の発行にあたって、半ば強制的にこのプログラムへの登録を推し進めており、だからこそこの排除プログラムの登録者がここ数年で劇的に増加している。すなわち、ここに登録されている人の大半は、別に「ギャンブル依存症だから」登録されているワケではありません。
もっと言うのならば、上記の図にもあるように現在シンガポールの排除プログラムに登録する者、約30万人のうち47,000人は政府の設置する「自動排除プログラム」の一環として、自己破産者や生活保護プログラム受給者などが自動的に登録を受けているもの。当然ながら彼らも「依存症だから」という理由でこのプログラムに登録された人達ではないわけで、実に全体の90%以上の人間がギャンブル依存「以外」の理由で登録されていることとなります。

一方、実はこのような排除プログラムは、既に日本の幾つかの自治体でも既存の賭博に対する抑止的な制度として類似する制度の導入検討が進んでいるワケですが、日本共産党は国内の幾つかの自治体がこの制度を先んじて条例化した時には「生活保護受給者のささやかな楽しみを管理するな」などという謎論法によってこれを猛烈に批判しています。以下、過去のエントリから。


■衆院厚生労働委員会における共産党議員による質疑
○高橋(千)委員基本的には保護費を何に使うかというのは自由だということでよろしいですよね。やはりそれは、アルコール依存症ですとか、買い物依存症ですとか、病的に何か支援をやらなければならないということに対して支援をするというのはいろいろな仕組みをつくる必要があると思うんですけれども、何かそれが、本当にわずかな保護費の中でのささやかな楽しみまで全部管理をされるのかということがあってはならないわけです。
しかし、現実にそれが条例になったのが、兵庫県の小野市の条例でありますけれども、ここは私は三つ問題があると思っています。それは、生活保護費だけではなくて、児童扶養手当とかその他福祉制度についての金銭給付についても対象になっている。もう一つは、パチンコ、競輪、競馬その他ということで、何か、範囲がどこまで広がるんだろうということ。そして三つ目が、市民に通報の責務を与えている。こうなるとさすがに、ささやかな楽しみどころか、パチンコをやる人は皆通報しなさいではないですけれども、そういう極端なことになってはならない。(出所:http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8088651.html) 
 

現在、世界の賭博業種において実効力のある依存症対策手法として広がりを見せつつある排除プログラムに対して、あたかもその登録者全てがギャンブル依存者であるかのような表現でミスリードしつつ、カジノ合法化の反対材料とし、一方の国内論議ではパチンコや公営競技を「生保受給者のささやかな楽しみ」だなどと主張して、その対策に対して反対論陣を張る。

日本共産党と鳥畑与一氏は、一体、何がしたいのか?どこに向かっているのか。私には皆目見当もつきません。

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