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主張/高齢者医療負担増/もう配慮は不要だというのか

安倍晋三政権が2017年度から順次実行することを狙っている医療・介護の負担増・給付減の改悪案づくりが大詰めを迎えています。医療について、厚生労働省は先月末、医療費負担に上限を設ける高額療養費制度で70歳以上の負担引き上げ、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料軽減措置の段階的廃止などを17年度から実施する方針を示しました。いずれの仕組みも、高齢者の経済的負担を少しでも軽減して、受診の機会を保障するとして設けられた経過があるものです。安倍政権は、そんな高齢者への配慮まで捨て去るのか。あまりにも冷たい姿勢です。

受診の頻度が高いのに

 厚労省が社会保障審議会医療保険部会(11月30日)に提案した高齢者負担増案は、医療機関を受診した際の窓口負担の面からも、月々負担する保険料の面からも、さらなる痛みを強いるものです。

 改悪対象の一つである高額療養費制度は、医療機関の窓口で支払う医療費が大きく膨らんだ場合、年齢や所得などに応じて支払いの上限額に歯止めをかける仕組みです。家計への医療費自己負担が「過重なものにならない」ようにするためです。現在は、70歳以上で月4万4400円(年収約370万円~住民税非課税の場合)を上限にしているほか、外来だけでも月1万2000円を上限にするなどの特別措置もあります。

 厚労省の上限引き上げ案は、この4万4400円を5万7600円にすることや、外来上限の全廃または2倍以上の大幅引き上げを行うという過酷なものです。住民税非課税以下の場合、外来上限を現在の8000円から最大1万5千円にすることも盛り込んでいます。頼みの収入の年金は目減りするばかりなのに、負担の激増が耐えられるとでもいうのか。

 だいたい70歳以上に外来上限を設けたのは、2002年の医療大改悪で高齢者の1割負担を徹底する大幅負担増が実行された際、「高齢者は外来の受診頻度が若年者にくらべて高い」ことなどに配慮したというのが、政府の説明だったはずです。十数年たって高齢者の暮らしは楽になるどころか、いっそう悪化しているのが現実です。いまでも経済的理由で必要な診療に行かない高齢者も少なくありません。受診抑制に拍車をかける制度改悪は行うべきではありません。

 厚労省案で段階的廃止とした「後期医療」保険料軽減措置も、08年の制度発足時に大きな批判が広がるなかで自公政権が「高齢者の立場で、きめ細かな対応」として導入したものです。“ほとぼりがさめた”と言わんばかりに軽減をなくすのは、あまりに乱暴です。「後期」保険料の滞納者は24万人、正規の保険証をもらえない人も2万5千人に達している中で、保険料が最大10倍にもなったら、格差と貧困をさらに広げ、「無保険」高齢者を激増させかねません。

「削減ありき」の転換を

 安倍政権が医療でも介護でも容赦のない負担増・給付減をすすめるのは、17年度予算案で社会保障費の「自然増分1400億円」カットの姿勢に固執しているからです。国民に負担増ばかり強いる政治では、ますます消費を冷え込ませ、日本経済の健全な成長にも大きなマイナスです。税の集め方、使い方を改めるなどの改革に踏み出す政治の転換こそ急がれます。

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