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一億総活躍の“社会像”-「有償労働」と「無償労働」の調和“ワークライフハーモニー” - 土堤内 昭雄

本格的な人口減少時代の労働力確保に向けて、女性の就労を後押しするために来年度の税制改正で「配偶者控除」の見直しが議論されている。パートやアルバイトなどで働く主婦の年収要件を103万円から150万円に引き上げる案が有力だ。減税分の税収をカバーするために、夫の年収が1,220万円を超えると適用外にすることが検討されており、高所得者層からの反発も予想される。

共働き世帯数は1990年代半ばから専業主婦世帯数を上回り、今では全体の6割以上を占めている。以前は、主に高収入の夫と専業主婦が、低収入の夫とパートタイムで働く妻が世帯を形成するという『ダグラス・有沢の法則』が成立した。近年では自立した夫と妻が対等に共働き世帯を形成する一方、男性の収入低下に伴って夫と妻の収入の合算でなんとか家計を維持する補完型の世帯が増えている。

2015年の非正規雇用者は、女性全体では55.6%、有配偶女性に限ると62.9%に上る。共働き世帯の増加は、妻がフルタイムで働く共働き世帯が増えているだけではなく、パート雇用など短時間勤務の就業者が増えたことによるものだろう。つまり多くの妻が非正規雇用で、主たる稼ぎ手である夫の家計補助的な位置づけにあるものの、妻の収入の比重が相対的に大きくなっているのだ。

今回、検討されている配偶者控除の見直しは、女性のフルタイム就労者の増加を図るものではない。パート就労者の「103万円の壁」を150万円まで拡大し、労働時間延長への支障解消を目指したものだ。減税枠の拡大は、あくまでも家計補助的な女性就労の促進が目的と考えられる。

本来の一億総活躍社会が目指す「女性の活躍」には、男女が対等な関係の女性就労の促進が必要だ。しかし、男女が共働きになることは、従来の家事・育児・介護などの家庭における無償労働をどう負担するのかが大きな課題になる。外部サービスの利用には相応のコストがかかり、それに見合う収入が必要だ。また、育児や介護といったケア労働は労働集約的で非効率な面もあり、膨大な需要を満たすだけのサービスをすべて供給することは難しく、完全に外部化することはできないだろう。

今後、AI(人工知能)等の活用により大幅に労働生産性が向上する時代になれば、男女が有償労働の時間に替えて、より多くの無償労働の時間を共有することが可能だ。男も女も、有償労働に限らずケア労働などの無償労働においても一定の役割を担うことが重要だ。一億総活躍の“社会像”とは、多くの人がそれぞれの「有償労働」と「無償労働」の調和した“ワークライフハーモニー”のなかに幸せを見出すことができるような社会ではないだろうか。

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