- 2016年12月05日 08:30
【読書感想】サイコパス
1/2- 作者: 中野信子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/11/18
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
画像を見る- 作者: 中野信子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/11/18
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内容(「BOOK」データベースより)
とんでもない犯罪を平然と遂行する。ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう…。脳科学の急速な進歩により、そんなサイコパスの脳の謎が徐々に明らかになってきた。私たちの脳と人類の進化に隠されたミステリーに最新科学の目で迫る!
「サイコパス」って、快楽殺人の常習者とか、平気でウソをつき、他人を思いどおりに操って自分に奉仕させ、破滅させる人というような「頭が切れて、良心を持たない犯罪者」というのが僕のイメージでした。
この新書も、きっと、そんな「おそろしい人々」の実例をあげて、「こわいですねえ」って頷きあう、そんな感じなんだろう、と思いつつ読み始めたのです。
統合失調症などの精神疾患と何が違うのか、わからない方もいるのではないでしょか。あるいはトマス・ハリスの小説『羊たちの沈黙』の登場人物ハンニバル・レクター博士のような「高い知能を持ちながら、冷酷な猟奇殺人を次々と犯す人物」を漠然と思い浮かべる人もいるかもしれません。もしくは、ウソばかりついている人物のことを「サイコパス」と揶揄する例もあるでしょう。
ところが近年、脳科学の劇的な進歩により、サイコパスの正体が徐々にわかってきました。脳内の器質のうち、他者に対する共感性や「痛み」を認識する部分の働きが、一般人とサイコパスとされる人々では大きく違うことが明らかになってきました。
また、サイコパスは必ずしも冷酷で残虐な殺人犯ばかりではないことも明らかになっています。大企業のCEOや弁護士、外科医といった、大胆な決断をしなければならない業種の人々にサイコパスが多いという研究結果もあります。
疫学的調査も進んでいます。著書『診断名サイコパス』で有名なカナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアによれば、男性では全人口の0.75%がサイコパスだとされています。また、ハーバード・メディカル・スクールの精神医学部で心理学インストラクターを長年務めた心理学者マーサ・スタウトによれば、サイコパスはアメリカの全人口の4%にものぼるといいます。もっとも、この数字の違いはサイコパスの診断基準にもよります。また、個人主義が発達している欧米には多いけれども、集団主義的な社会である東アジア圏では相対的に少ないという指摘や、男性より女性のほうが少ないという研究もあります。
また、サイコパスとはシロかクロかというようなものではなく、人類の中にグレーゾーンのような広がりをもって分布していることもわかっています。つまり、症状にも程度があるということです。
現在の精神医学の世界標準とされている『精神障害の診断と統計マニュアル・最新版』(DSM5)には、『サイコパス』という記述はなく、「反社会性パーソナリティ障害」という診断になるそうです。
著者は「サイコパス」を「なんだかおどろおどろしい、人間の理解をこえたもの」として紹介するのではなく、脳科学者として、最新の知見などをまじえつつ、「『サイコパス』について、いま、わかっていること」を書いているのです。
サイコパスというと、本章冒頭で紹介した冷徹で猟奇的な殺人鬼のイメージが強い人も多いでしょう。しかし、必ずしもこうした人間ばかりではありません。
サイコパスには魅力的で社交的で機知に富む人、生意気で傲慢、感情を逆撫でする人、冷淡で威嚇的な人といった、いくつかのタイプがあります。
女性サイコパスは男性サイコパスとは違って、か弱さをアピールすることで標的を引き寄せたりもします。
また、サイコパスの特徴として、初対面の時とある程度関係性を築いた後では態度が変わり、まるで人格が違って見えることがよくあります。
初見の印象や「サイコパスの性格はこうだろう」という思い込みだけで判別することは、避けたほうがいいでしょう。そのふるまい、行動をを合わせて慎重にみていかなくてはなりません。
「サイコパス」にもいろんなタイプがあって、初対面で簡単に見破れるようなものではないし、つきあいが深まるにつれて、どんどん困った面をみせてくる場合も多いようです。
そもそも、彼らは「他人に自分を良く見せることが得意」なんですよね。



