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高齢者の注意力散漫には利点も 問題解決に創造性を発揮

高齢者の注意力散漫には利点も
高齢者の注意力散漫には利点も
Illustration: Chris Reed for The Wall Street Journal


By SUMATHI REDDY

 大半の人々は年を重ねるにつれ、注意力が散漫になりやすくなる。だが、それにはかえって利点があるかもしれない。

 研究によると、注意力が散漫になり、集中力が低下する現象(科学者はこれを認知制御機能の低下と呼ぶ)は、問題解決の際に創造性が拡大することとしばしば関連づけられることが判明しつつある。また、この現象は、新たな情報の学習を容易にし得るという。これは100件以上の研究のレビュー結果で、学術誌「トレンズ・イン・コグニティブ・サイエンシズ」にその論文が今月掲載された。

 論文の上級執筆者であるカナダ・トロント大学のリン・ハッシャー教授(心理学)は、「人々がより速く学習し、より良く覚えられるのは、今していることに注意を払っていない時である場合が存在する」と指摘。「比較的若い成人は自らの目標に集中しているため、その他全てのこのような情報を逸しているのだ」という。

 認知制御機能の低下は通常、高齢者及び子どもに多くみられる。ハッシャー博士のリサーチの大半は、60歳から75歳という比較的高齢の成人を対象としている。同博士がレビューした研究の一部には認知制御機能の低下が50代の人々に現れたと指摘するものもあった。若年成人のなかで、気が散りやすい人々が同じ年齢層のそうでない人々とどう違うのかについては明らかでない。

 ある一連の実験で、ハッシャー博士のチームは、さまざまな年齢のグループを対象に顔認識のテストを実施した。1つは16歳から29歳までの20人、もう1つは60歳から79歳までの同じく20人で構成されるグループだった。

 被験者は顔を見せられた。顔には名前が書かれていたが、それは無視するよう指示された。その後に顔と名前を一致させるテストを行ったところ、高齢群の成績は若年群を上回った。この研究は今年、学術誌「サイコノミック・ブレティン・アンド・レビュー」に掲載された。

 ハッシャー博士は「高齢の成人は、情報をピックアップし、新たな状況でそれを使ってパフォーマンスを上げることにたけている」と述べる。「彼らは他人の行動に関するあらゆる情報をピックアップしており、それが誰なのか、何を言って、何をしているのか全てをピックアップしている。それが知恵につながっている」という。

 認知制御は、脳の前頭葉及び頭頂葉の活性化と関連づけられる。トロント大学心理学部の博士候補生で、レビューの第1執筆者であるTarek Amer氏によると、こういった領域の活性度は比較的高齢の成人だと低下していることが多いという。

 Amer氏は、「あるコンテキスト(状況)で注意力を散漫にするものが、違うコンテキストだと有益で役に立つようになる年齢はいつなのか、実はわれわれには分かっていない」とした上で、「ある状況においては、その関係ないとされる情報が有益になり得る。これが本当なら、比較的高齢の成人は比較的若年の成人よりも有利な立場にあることになる」と話した。

 ペンシルベニア大学心理学部の主任を務めるシャロン・トンプソン=シル博士によると、認知制御機能の低下から潜在的利点が生じるというのは、新しい概念ではないが、長年にわたって無視されてきた考え方だという。同博士によると、認知制御にとって重要な脳の領域の発達は比較的遅く、通常20代初期になるという事実がある。だとすれば、遅い発達というのは良いことであることがうかがわれるという。また、「これらの脳の領域は最後に発達し、最初に衰え始めるものの1つだ」と同博士は述べている。

 同博士の研究は、認知制御機能をあまり働かせないと、アイデアを創造するのがうまくなることを示している。同博士は脳のイメージング(脳機能の画像化技術)を使い、人々はありふれたもの(野球のバットなど)の新しい使い方を考え出そうとするとき、認知制御の際に使う脳の領域への血流は少なくなることを突き止めた。その代わり、脳の感覚野が活性化した。

 同様に、非侵襲的脳刺激法を使って前頭葉への血流を抑制すると、人々はありふれたものの新しい使い方を考え出すのがうまくなるという。

 ハッシャー博士は、比較的高齢の成人の認知制御機能の向上を助けるためのクラスやプログラムがあるが、それは恐らく必要ないと述べる。「比較的高齢の成人の認知力向上には、彼らが持つ自然のままの処理法を利用した方が有益かもしれない。彼ら高齢者に比較的若年の成人を見習わせようとするよりもむしろ有益なのだ」というのだ。

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