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一転ウォール街におもねる トランプ どこに向かう?アメリカ その4

 
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

このところアメリカの株価が上がっている。釣られて日本の株価も上昇していることだろう。なぜならドナルド・トランプ次期大統領が、選挙中の立場をひっくり返してウォール街におもねり始めたからだ。

ドナルド・トランプがアメリカの労働者階級の有権者にアピールするスローガンの一つとして、ずっと「Drain the Swamp(泥水を洗い流せ)」というフレーズが使われていた。アメリカ金融街を「泥沼」という言葉で汚職の温床と称し、ベテランの政治家であるヒラリー・クリントンが国務長官退職後に何百万円もの講演代を受け取ってゴールドマン・サックスに招待され、スピーチしていたことを槍玉に上げたり、共和党予備選のライバル、テッド・クルーズの妻がゴールドマン出身であることさえ非難していたのである。自分は既に大金持ちなので、ウォール街に依存する必要はないと自慢し、金融界と癒着する政治家をみんな追い出して見せると豪語した。だからこそトランプ当確で株価が一気に下がった。

だが、それも長くは続かない。トランプ内閣の人事が次々と明らかになるにつれて、トランプがアメリカの金融界をないがしろにするわけがないことが確信できるからだ。元々、トランプ陣営の首席戦略官、スティーブ・バノンはゴールドマン・サックス勤務という履歴を持つ。

そして財務長官には選挙キャンペーンの財務責任者を務めたスティーブン・ムニューチンを指名するとニューヨーク・タイムズが伝えた。彼はかつてゴールドマン・サックスのパートナーだった男。17年の後に退社後、彼の名がニュースに再び登場したのは2008年のリーマン・ショック後のことだった。再就職先のワンウェスト銀行で、(ワンウェスト銀行といえば、差し押さえたマイホームから違法で執拗なやり方で家族を追い出したことで知られている)ムニューチンは「差し押さえ王」という異名をとり、サブプライムローンで家を失った人たちがカリフォルニアの一等地ベルエアにある彼の邸宅の周りで連日デモを繰り広げたのだ。

トランプは今、自宅のあるニューヨーク五番街のトランプタワーに閉じこもり、次々に参勤交代でやってくる大臣志望者を面会している。その中には、ゴールドマン・サックス現取締役のゲイリー・コーンの姿もあった。アメリカではリーマン・ショック後、金融業界の不始末のせいで再びマイホームを追い出される人が出ないように2010年にドッド・フランク法(ウォール街改革及び消費者保護法)が定められたが、トランプ就任後、この法律が撤廃される可能性が高い。

ウォール街との癒着を断つ、という公約を信じて彼に一票を投じた者はどう感じているだろうか。株価が上がり、自分たちの401K(確定拠出年金)の額が目減りしなければそれでいいのだろうか。

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