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- 2016年12月02日 23:42
特集:トランプ流・次期政権への助走
2/2●政権人事は「手順前後しながら進行中」
新政権の人事は、数の上から言えば順調に進んでいる。本日時点では以下のような顔ぶれがそろっている。2008年のオバマ政権は、非常に手際よく閣僚人事を進めたけれども、全部のポストを発表し終えたのはクリスマス休暇直前のことであった。同じことができるかどうかが、トランプ次期政権にとってはひとつの目安となるだろう。○トランプ次期政権の主要人事
(*赤字は女性)
・ 首席補佐官 ラインス・プリーバス(44)共和党全国委員長
・ 首席戦略官兼上級顧問 スティーブン・バノン(62)前ブライトバートニュース会長
・ 国家安全保障補佐官 マイケル・フリン(57)元国防総省情報局長官、陸軍中将
・ 国務長官 ??ミット・ロムニー、ルディ・ジュリアーニ、ジョン・ボルトン??
・ 国防長官 ??ジェームズ・マティス、スティーブン・ハドレー??
・ 財務長官 スティーブン・ムニューチン(53)元ゴールドマンサックス
・ 司法長官 ジェフ・セッションズ(69)アラバマ州選出上院議員
・ 商務長官 ウィルバー・ロス(79)投資家、ジャパンソサエティ会長
・ 厚生長官 トム・プライス (62)下院予算委員長
・ 教育長官 ベッツィ・デボス (58)米児童連盟委員長
・ 運輸長官 イレーン・チャオ(63) 元労働長官
・ 国連大使 ニッキー・ヘイリー(44)サウスカロライナ州知事
信じられないことに、「国務長官と国防長官」という2つの最重要ポストが埋まっていない。なぜか国連大使は先に決まっている、というのは明らかな「手順前後」であろう。
本来、国務長官と国防長官という2大ポストは、国家安全保障補佐官と併せた三角形で早めに決めるべきものである。つまり「ホワイトハウスと外交と国防」の責任者が一致することが大事なのだが、五月雤式で決めているところがいかにも危なっかしい。いわばジグソーパズルにおいて、大きなピースを後に残しているようなものである。
仮に下馬評通り、ミット・ロムニー氏が国務長官に就けば、共和党主流派やマスメディアは安心するだろう。その一方で、ちょうどブッシュ政権におけるパウエル国務長官のように、「強硬派に取り囲まれた穏健派の悲哀」をかこつかもしれない。そしてロムニー氏以外の候補者は、ルディ・ジュリアーニ(元NY市長)にジョン・ボルトン(ネオコン)にデビッド・ペトレイアス(元軍人)とタイプがまったく違う。今の人事を見ていると、いかにもバランスの悪い政権が誕生しそうである。
さらに言えば、通商代表(USTR)の名前がまったく挙がっていない点も不思議である。仮に本気でNAFTAの再交渉を目指すのであれば、それこそ弁護士を大勢雇って勝負をかけなければいけないはずだが、その辺のことは考えているのだろうか。どうもこの人事、後半戦で揉めるように思えて仕方がない。
●次期政権の最初は「人事と予算」
あらためて、次期政権発足への日程を想定してみよう。新しい議会は来年1月3日、新しい大統領は来年1月20日に発足する。政権発足後に、最初に手掛けるべきなのは閣僚人事の承認である。共和党は下院では239対194と圧倒的だが、上院では52対48とその差は少ない。しかもトランプ氏のもっとも強力な支援者であるジェフ・セッションズ上院議員が、司法長官として転出することになる。さらに上院には、予備選挙をともに戦ったテッド・クルーズ、マルコ・ルビオ、ランド・ポール上院議員などが残っている。意外と簡単には済まないかもしれない。
人事がずれ込むと、予算をどうするかという問題が生じる。12月9日には今の暫定予算が失効するので、ライアン下院議長は来年春くらいまでの暫定予算延長を目指している。ここで悩ましいのは、来年3月15日になると「債務上限問題」が復活してしまうことである。オバマ政権発足時には10兆ドル程度であった政府債務残高は、この時期には20兆ドル程度に達しているはずだ。おそらくは、上限引き上げ時期を先送りすることになるだろう。そんな中で、トランプ新政権は「最初の100日間」の間に、減税やインフラ投資、あるいはオバマケアの撤廃といった公約の実現を目指すことになる。
いずれにせよ、次期政権で「インフラ投資」が実行に移されるとしても、2017年10月からの新財政年度以降ということになる。この点、今のマーケットの受け止め方はやや性急に過ぎるのではないか。「トランプラリー」が一巡して、それから先がいよいよ次期政権の正念場ということになる。
○当面の米国政治日程
12/9 暫定予算が失効
12/13-14 FOMC(利上げは実施へ)
12/15 トランプ次期大統領が初の記者会見
12/16 議会がクリスマス休暇入り
12/19 選挙人による投票日
<2017年>
1/3 新議員が議会初登庁、第115議会が発足
1/20 大統領就任式=第45代大統領が誕生。就任演説(Inauguration)
2月 大統領予算教書の提出
3/15 債務上限の適用再開
4/29 「最初の100日間」が終了
1 本誌9月23日号「私家版、トランプ現象を読み解く」を参照。
2 http://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/09/trump-makes-his-case-in-pittsburgh/501335/を参照。
3 https://www.youtube.com/watch?v=7xX_KaStFT8 本稿執筆時点で746万回視聴されている。
- 吉崎達彦(かんべえ)
- 双日総合研究所取締役副所長・同主任エコノミスト。



