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- 2016年12月02日 10:00
オリンピック4者会議の駆け引き
11月29日に行われたオリンピックの一部会場見直し、及び費用問題を協議する4者会談がありましたが、これほど政治的駆け引きが強かった会議も珍しいのではないでしょうか?皆様がどうお感じになったかそれぞれだと思いますが、私はかなり醒めた見方をしています。
まず、小池都知事が会議開催直前にコーツIOC副会長に申し入れ、会議の完全公開の了承を取り付けました。これは小池さんが民意の見方をつける為のパフォーマンス的作戦でコーツ副会長が同調したのが大きかったと思います。これで森大会組織委員会会長の力技をねじ伏せました。
会議の内容は報道されている通りですが、4者会談なのに名前が一つも話題にならないのが丸山珠代五輪担当大臣であります。想像するに森喜朗という政治界の大御所に遠慮して影が薄くなっているものと察します。言い換えればリードを取れない丸山大臣の力は所詮、安倍内閣の「鵜」のようにみえます。
この時期にこのような会談をセット出来たのは小池知事のポピュラリティが大きく影響していると思いますが、私はIOCが最大の懸念を示していたのではないかと思います。東京都の試算でコストが3兆円を超えることもありうるということに危機感を持ったことは間違いありません。ご承知の通り、オリンピックは夏も冬も開催立候補地が減ってきています。冬のオリンピックに於いてはほぼ無競争状態で決まるような状況になっています。
理由はコスト。誘致時には安い費用を提示し、住民の同意を得るもののふたを開ければその何倍にも膨れ上がるというのは何処のオリンピックをみてもほぼ確信犯的な状況にあります。特に私は東京五輪がいまだ費用面で気にしなくてはいけないのは建築費といったハードコストではなく、セキュリティなどのソフトコストが膨大に膨れ上がるリスクであります。他の開催結果をみても警備コストは当初見積もりの数倍に膨れ上がるケースが続出しています。
これは時代時代の社会的問題を映し出しやすいこともあるので3年半後に何が起きているか想定しづらいことはあります。しかし、歴史的に見てもオリンピック開催が財政的に立ち行かなくなりつつあり、開催希望都市にとって誘致がより難しくなっていることは言えるでしょう。
そんな中で3兆円を超えるかも、などと言われればIOCにとってはとんでもない話です。それゆえにその見積もりはワーストケースなのか、どの程度確証ある数字なのかを含め、公表数字の見直しを行い、世界へのメッセージとして「懸念を残すであろう数字の独り歩き」を抑えこむための施策だったとみています。
その一環でハードコスト削減はIOCと都知事の方向性は同じベクトルであり、協調路線が取れる部分がありました。会議を公開にすることに同意したのもそのあたりの伏線が考えられます。
では、判断先送りしたバレーボール会場ですが、横浜か有明新設なのか、その判断ですが、個人的には有明にせざるを得ないと感じています。横浜市から東京都に送付されたレターの内容からするとそのニュアンスは東京都がそういうなら会場を使っても構わないが一切合切、横浜は責任を負えないという感じに見えます。やや腰が引けたトーンとも突き放したニュアンスともとれるのですが、以前にも書いた「小池百合子の賞味期限」がやや短くなっていて一時の盛り上がりから冷静になりつつあることもあるのではないでしょうか?
つまり民意をバックに驀進する小池体制に対して利害関係を有する公官庁の態度は冷ややかに見えるのです。これは埼玉県とのボート競技場の件でもそうでしたし、宮城の長沼ボート競技場案でも気を持たせた割には、という宮城の住民の失望感は新聞社会面あたりに如実に表れています。
また、会場の変更は極力しないというのがIOCの考えです。なぜならこれを認めると今後、(東京に限らず)あらゆるシーンで「ちゃぶ台返し」が起きる可能性があり、オリンピック委員会としての面目を保つためにはここは死守したいはずです。
最大の疑問はボート会場と水泳会場のコストを見直したら一部仮設に変えたとはいえ、360億円下がったという部分です。新国立の時も含め、毎度の話ですが、もうそろそろ詳細設計に入っている時期なのになんでこれほどコストがぶれるのでしょうか?叩けば埃が出るものだったのか、工夫が足りなかったのかと言われれば東京都は愚の根も出ないでしょう。
あぁ、オリンピック、されどオリンピックであります。
では今日はこのぐらいで。
まず、小池都知事が会議開催直前にコーツIOC副会長に申し入れ、会議の完全公開の了承を取り付けました。これは小池さんが民意の見方をつける為のパフォーマンス的作戦でコーツ副会長が同調したのが大きかったと思います。これで森大会組織委員会会長の力技をねじ伏せました。
会議の内容は報道されている通りですが、4者会談なのに名前が一つも話題にならないのが丸山珠代五輪担当大臣であります。想像するに森喜朗という政治界の大御所に遠慮して影が薄くなっているものと察します。言い換えればリードを取れない丸山大臣の力は所詮、安倍内閣の「鵜」のようにみえます。
この時期にこのような会談をセット出来たのは小池知事のポピュラリティが大きく影響していると思いますが、私はIOCが最大の懸念を示していたのではないかと思います。東京都の試算でコストが3兆円を超えることもありうるということに危機感を持ったことは間違いありません。ご承知の通り、オリンピックは夏も冬も開催立候補地が減ってきています。冬のオリンピックに於いてはほぼ無競争状態で決まるような状況になっています。
理由はコスト。誘致時には安い費用を提示し、住民の同意を得るもののふたを開ければその何倍にも膨れ上がるというのは何処のオリンピックをみてもほぼ確信犯的な状況にあります。特に私は東京五輪がいまだ費用面で気にしなくてはいけないのは建築費といったハードコストではなく、セキュリティなどのソフトコストが膨大に膨れ上がるリスクであります。他の開催結果をみても警備コストは当初見積もりの数倍に膨れ上がるケースが続出しています。
これは時代時代の社会的問題を映し出しやすいこともあるので3年半後に何が起きているか想定しづらいことはあります。しかし、歴史的に見てもオリンピック開催が財政的に立ち行かなくなりつつあり、開催希望都市にとって誘致がより難しくなっていることは言えるでしょう。
そんな中で3兆円を超えるかも、などと言われればIOCにとってはとんでもない話です。それゆえにその見積もりはワーストケースなのか、どの程度確証ある数字なのかを含め、公表数字の見直しを行い、世界へのメッセージとして「懸念を残すであろう数字の独り歩き」を抑えこむための施策だったとみています。
その一環でハードコスト削減はIOCと都知事の方向性は同じベクトルであり、協調路線が取れる部分がありました。会議を公開にすることに同意したのもそのあたりの伏線が考えられます。
では、判断先送りしたバレーボール会場ですが、横浜か有明新設なのか、その判断ですが、個人的には有明にせざるを得ないと感じています。横浜市から東京都に送付されたレターの内容からするとそのニュアンスは東京都がそういうなら会場を使っても構わないが一切合切、横浜は責任を負えないという感じに見えます。やや腰が引けたトーンとも突き放したニュアンスともとれるのですが、以前にも書いた「小池百合子の賞味期限」がやや短くなっていて一時の盛り上がりから冷静になりつつあることもあるのではないでしょうか?
つまり民意をバックに驀進する小池体制に対して利害関係を有する公官庁の態度は冷ややかに見えるのです。これは埼玉県とのボート競技場の件でもそうでしたし、宮城の長沼ボート競技場案でも気を持たせた割には、という宮城の住民の失望感は新聞社会面あたりに如実に表れています。
また、会場の変更は極力しないというのがIOCの考えです。なぜならこれを認めると今後、(東京に限らず)あらゆるシーンで「ちゃぶ台返し」が起きる可能性があり、オリンピック委員会としての面目を保つためにはここは死守したいはずです。
最大の疑問はボート会場と水泳会場のコストを見直したら一部仮設に変えたとはいえ、360億円下がったという部分です。新国立の時も含め、毎度の話ですが、もうそろそろ詳細設計に入っている時期なのになんでこれほどコストがぶれるのでしょうか?叩けば埃が出るものだったのか、工夫が足りなかったのかと言われれば東京都は愚の根も出ないでしょう。
あぁ、オリンピック、されどオリンピックであります。
では今日はこのぐらいで。