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カジノ推進法案を巡る迷走で虚弱体質が露呈した蓮舫民進党

 11月30日、臨時国会の会期延長を待っていたかのように、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律、いわゆるカジノ推進法案が審議入りした。

 この法案、巷では「カジノ法案」と呼ばれることが多いようであり、この法案が通ればカジノが出来ると勘違いしている人もこれまた多いようであるが、本法案はあくまでも推進法案、いってみればカジノ実現に向けた緩やかなプログラム法案のようなものであり、推進体制や実現のために必要な措置について規定されているだけである。必要な法制上の措置を講じるまでの期間も「1年以内」とされてはいるものの、あくまでも「目途」であり、絶対に1年以内にやらなければいけないわけではない。

 カジノについては、反社会勢力や犯罪との関係、依存症、マネーロンダリング等、懸念されている事項は枚挙に暇がないが、同法案第10条にはそれを払拭し、害悪を排除するために必要な措置が「カジノ施設の設置及び運営に関する規制」として列挙されている。

第十条 政府は、カジノ施設の設置及び運営に関し、カジノ施設における不正行為の防止並びにカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行う観点から、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるものとする。

 一 カジノ施設において行われるゲームの公正性の確保のために必要な基準に関する事項

 二 カジノ施設において用いられるチップその他の金銭の代替物の適正な利用に関する事項

 三 カジノ施設関係者及びカジノ施設の入場者から暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者を排除するために必要な規制に関する事項

 四 犯罪の発生の予防及び通報のためのカジノ施設の設置及び運営をする者による監視及び防犯に係る設備、組織その他の体制の整備に関する事項

 五 風俗環境の保持等のために必要な規制に関する事項

 六 広告及び宣伝の規制に関する事項

 七 青少年の保護のために必要な知識の普及その他の青少年の健全育成のために必要な措置に関する事項

 八 カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴い悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項

2 政府は、前項に定めるもののほか、外国人旅客以外の者に係るカジノ施設の利用による悪影響を防止する観点から、カジノ施設に入場することができる者の範囲の設定その他のカジノ施設への入場に関し必要な措置を講ずるものとする。

 これを見る限り、また、これまで小泉政権下で構造改革特区制度を活用したカジノの導入が検討され、その後民主党政権時代にも更に議論が進められてきたことを踏まえても、とても1年以内で関係法令の改正等を完了できるとは思えない。加えて言えば、仮に1年以内に完了できたとして、実際に施行されるのはさらに先である。

 そして可能性の問題ではあるものの、いつまで経っても関係法令の改正が行われないということもありうる。なんといっても改正すべき法令を主に所管しているのは法務省と警察庁であり、相当慎重な立場を取っていると聞く。そこを突破するのは容易ではないだろう。

 さて、このカジノ、賛成派の立場からは、その実現は日本の経済成長につながるものであるとか、地域経済の活性化につながるものであるといった、希望的な観測に基づいた説明がなされることが多い。実際、11月30日の審議でもそうした発言が聞かれた。しかし、日本にはカジノの運営経験があり、将来的にも円滑に運営できうる事業者は存在しないと言っていいので、海外の運営事業者によることとなる可能性が高い。(例えば、セガサミーは韓国のカジノ等で社員にノウハウを学ばせているようだが、これまで長年にわたって運営してきた海外事業者にはまだまだ及ばないだろう。)

 雇用が生まれるとか、観光客が来るから周辺地域が潤うといった意見も聞かれるが、雇用が生まれるといってもカジノで働く従業員と周辺や施設内に設置されるであろう飲食店等の従業員程度であり、その数には限りがある。そもそもカジノ運営事業者は、慈善事業ではなく、当然に儲けのために事業を行うわけであり、自分の取り分をより多くしようと考える。別の言い方をすれば、生産性向上のために人件費を含めたコストを極力抑えようとする。そうなれば、仮に大量に従業員が雇われることがあっても、それは派遣社員やパート、つまり非正規労働者である可能性が高いということになろう。(別に派遣労働自体を否定するつもりはないが。)

 併設される国際会議施設の活性化にもつながるとの意見もあるが、カジノがあるから国際会議をその場所で開催するのではなく、国際会議をやるにふさわしい、利便性が高いからその場所で開催するのであって、関係が逆である。会議施設の活性化は国際会議に関する需要があるから実現出来るわけであるが、雨後の筍のように各地に整備された国際会議施設、現状で需要が高いと言えるところは残念ながら相当限られる。要するに、カジノを設置して国際会議場の活性化との相乗効果が期待できる地域は限られるということである。(もっとも、そうした国際会議場は現状でも人気があるのだから、カジノとの相乗効果など必要ないとも言えるが。)

 結局のところ、カジノ推進法案が可決・成立したとしても、カジノが導入されたとしても、それほど大きな効果は期待できないばかりでなく、法務省や警察庁が首を縦に振るような法令改正ができれば、あくまでもできればの話であるが、悪影響についてもそこまで懸念する必要もないのではないだろうか。

 そうなるとこのカジノ推進法案、毒にも薬にもならない法案と言ってしまってもいいように思われるが、同法案に審議拒否をしてまで反対しようとしている党がある。言わずと知れた蓮舫民進党である。

 なんといってもこの民進党、法案審議が始まるまで賛否を決められないどころか、党内議論すら行って来なかった。11月30日に審議が始まるや、翌12月1日、慌てて党内の部門会で議論。法案審議入り後に初めて党内議論など前代未聞である。そしてその党内議論も、どうやら賛否をまとめられず、次の内閣(NC)一任となったようだ。(このNCなるもの、大臣役の党所属議員を「大臣」と呼びあう、言ってみえば「おままごと」をするためのような組織である。)

 そもそも、そのNCで決めるというのであれば、何のために党内の部門会で議論したのか。部門会での議論はガス抜きのためで、それ以上の意味はありませんでしたと言っているに等しい。部門会での議論は部門会での議論であって、NCでの議論とは別というのであれば、党内では議論の積み上げが出来ず、党所属議員がどう考えようと最終的には執行部が恣意的に判断できるというのとなんら変わりない。(そんな政党が民主主義を守ると主張するとは、笑い話にしかならない。)

 しかも蓮舫代表、12月1日の記者会見で、世論調査では回答した人の半数以上がカジノ推進法案に反対であったことに関連した質問に対して、「常に民意に敏感でありたい」と述べていたが、要は世論の動向を見ながら最終的な判断をしたいということだろう。軸を持たずに世論に左右される、それでは衆愚政治以外の何ものでもない。

 もっと言えば、先にも少し触れたが、カジノ導入について、自民党政権下での検討を引き継いで、議論を前に進めたのは他でもない民主党政権である。そうしたこれまでの経緯と、今回の迷走ぶりや「反対する方向で検討」ということの整合性はどう説明するのであろうか。(もっともっと言えば、カジノ推進議連は超党派議連であり、多くの民進党議員も名を連ねている。)

 政党といっても皆同じ考えを持っているわけではないので、多様な意見はあって当たり前。それを議論を積み重ね、積み上げて党としての態度を決めていくというのがあるべき姿のはずであるが、左右をキョロキョロ見ながら、もっともらしいが関連性の薄い言い訳をしながらいつまでたっても決められない、まともに説明もできない。そんな政党を多くの国民が支持できるわけがない。

 毒にも薬にもならない法案のへの対応を巡って、蓮舫民進党の虚弱体質が見事に露呈してしまった。

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