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最新鋭ステルス戦闘機に見る中国のジレンマとコンプレックス - 小原凡司

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 2016年11月1日、中国の広東省珠海市で開催された航空ショー「国際航空宇宙博覧会」で、ひときわ外国メディアの目を引く航空機が公開された。近々、中国人民解放軍空軍に配備が予定されているJ-20戦闘機である。J-20は、中国が「米空軍のF-22に匹敵する」と豪語する、中国国産の最新鋭戦闘機であり、「ステルス性能を有する第5世代の戦闘機である」とされる。

技術の違法コピーでロシアと交渉決裂

 J-20が注目されるのは、中国が自力で開発した高性能戦闘機である可能性があるからだ。中国が現在、主力として使用している戦闘機は、ロシア製のSu-27とそのライセンス生産機であるJ-11である。しかし、ロシアは、中国がJ-11をライセンス生産するにあたって、多くの違法な技術のコピーを行ったとして、中国が空母艦載機として導入を希望していたSu-33の輸出を拒否した。両国間で、技術提供や価格などについて折り合いがつかずに交渉が決裂したとされているが、ロシアが拒否したのは、中国が少数の機体しか購入せず、後は違法にコピーするということを実際に行なってきたからだ。

 このため、中国は、ウクライナからSu-33の試作機を購入してコピーし、J-15戦闘機を製造してきた。ところが、この時、中国は設計図を入手できなかったと言われている。J-15の艦載機としての能力が著しく劣るのは、当然の帰結と言えるだろう。エンジンの出力が足りないために、艦上で運用する際の燃料や弾薬が、陸上から運用する際の6分の1の量しか搭載できないとするものもある。

 中国がコピーしたJ-15は使い物にならなかった。2016年5月現在、J-15の製造は16機で止まったままだ。航空機や艦艇といった武器装備品は、いくら部品を正確にコピーしても、完成品の性能はオリジナルにははるかに及ばない。航空機であれば、時には、まともに飛ぶことさえできない。航空機の開発・製造は、それだけ難しいのである。それでも、中国はメンツにかけて「自国の技術」で問題を解決したいのだろうか。

中ロ間のパワー・バランスに関わる軍事技術

 しかし中国には、メンツにこだわっている時間はない。少なくとも2隻の建造中の空母を運用する準備を進めなければならないのだ。その準備の中でも最も難しいのが、空母艦載機部隊の養成である。艦載機となる機体すらないのでは、訓練どころの話ではない。中国は、早急にロシアに援助を求めなければならないだろう。

 ロシアは、これも違法コピーを理由に渋っていた、中国に対するSu-35の輸出に同意し、2015年11月、24機の同機を中国に輸出する契約を結んでいる。ロシアが気にしていたのは、中国が戦闘機を違法コピーしてロシアに金を落とさないことである。24機というまとまった機数の契約であったので、ということはある程度の金額の契約になったので、ロシア側も中国の要望に応じたということだろう。Su-33にしても、中国が違法コピーを認めて金を積めば、ロシアは技術支援するということでもある。

 J-15の問題は、それで解決できるかもしれない。しかし、外国から武器装備品を導入するということは、輸入元の国と常に良好な関係を維持していなければならないということである。しかも、輸入元の国の意図次第で、いつでも輸出を止められる可能性がある。理不尽だろうが何だろうが、その理由などいくらでもつけられる。

 この意味においても、中国にとってロシアとの関係は、常に頭の痛い問題である。いくら信頼できないからと言って、あからさまにロシアを不愉快にさせられないのだ。中国が自国で高性能戦闘機の開発・製造ができるようになれば、中ロ間のパワー・バランスに変化が生まれる。「その行使がなければ採らないであろう行為を相手に採らせる力」が「パワー」であることを考えれば、中国が自国開発できない軍事技術は、ロシアにとって、正にパワーの重要な構成要素であるのだ。

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