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【TPP交渉の行方シリーズ67】農協改革に見る政策決定の猿芝居・茶番劇化- 農業団体はTPPの呪縛と自民党からの脱却を -16.11.29

<「田舎のプロレス」対「都会の猿芝居」>


 TPP特別委員会の強行採決にみる揉めごとを、萩生田官房副長官は「田舎のプロレス」と称し、山本農林水産大臣の強行採決を巡る失言と同様に陳謝させられている。本案の審議をお願いしている内閣の要として誠に不謹慎極まりない。田舎のプロレスは『できレース』で、全てシナリオができ上がっていて、パフォーマンスでやっているだけという意味だという。私は、野党の筆頭理事、塩谷委員長に詰め寄ったが、TVのニュース番組でみた地元の皆さんは、背が高いから目立ったかやせこけた体で全く迫力不足、安倍総理に嫌味の質問をしているのと違い全く似合わないと酷評された。それに対し、かく言うご本人がプロレスに向いているような体格なので、なおさらジョークが効いたのだろう。そういえば官房副長官は東京の選挙区であり、田舎や真剣に戦っているプロレスラーを馬鹿にしているようにも聞こえる。失礼な発言である。
 もし、国会で強行採決阻止のために委員長席に抗議で詰め寄ることを「田舎のプロレス」と言うのであれば、今回の農協改革を巡るドタバタ劇こそ、いつもと変わらぬ永田町の猿芝居・茶番劇と言ってしかるべきである。

<規制改革推進会議と農林部会で併行した作業>


 TPPでは透明性の確保を求められている。しかし、交渉自体が秘密のまま行われて、交渉経緯も4年間国民の前に全くさらされないというのは全くの自己矛盾である。それに対して今回の農協改革をめぐるこの2週間余のできごとは『公開できレース』とでもいえ透明すぎるが故にその卑しい思惑も透けて見える。
 11月7日、安倍総理の出席の下、政府の規制改革推進会議が開かれ、「『攻めの農業』の実現に向けた「農協改革の方針」ペーパーが提出された。安倍総理も「私が責任をもって実行してまいります」と特別出演(?)している。それを受けて、規制改革会議農業ワーキンググループが11月11日に突然支離滅裂な意見発表、それに対して与党自民党が激怒。
 そもそも2015年10月、農政に全くタッチしたことのない小泉進次郎を、当代一の人気政治家というだけで農林部会長に据えるところからして芝居がかっている。政府与党は、その知名度や清新なイメージを活用(悪用?)して国民の関心を呼び、農政改革を推進するという形をとった。普段はほとんど農政のことなど扱わない全国紙が、自民党農林部会の出来事や小泉部会長の地方行脚を記事にするようになった。観客が拡がったのである。そのお膳立ての上に行われたのが、今回の一連のパフォーマンスである。

<馴染みの大根役者-政府・与党・農業団体の揃い踏み>


 小泉農林部会長自らが座長を務める農林水産業骨太方針策定PTでは、生産資材価格が高すぎるという農民の不満に目をつけ、引き下げるための方策を検討していた。ところがいつの間にかそれが農協改革、なかでも全農改革にすり替わってしまった。そこに同時併行で検討を進めていた規制改革推進会議が、かなり酷い高目のビンボールを投げた。いわゆる無理筋である。中野吉實全農会長は「承諾できない」とすぐ反応。それに対して与党が出てきてことごとく押し返す。困った農民が無理筋を押し返してくれた自民党に感謝して、一定の評価をする。全中の奥野会長に至っては、「我々のいうことを聞いていただいた」と感謝している。
 いつもと変わらぬ、与党がいかに頼りになるかということを演出するための連続劇なのだ。そして、やれ骨抜きだ、いや小泉部会長が頑張った、ベテランが落とし所を見つけた・・・と、かまびすしい論評が続く。それに振り回されて将来がますます不安になるのは、哀れな農民である。農協は自分たちの組織であり、農民こそが中心になっていなければならないのに、霞ヶ関と永田町が現場そっちのけで農協のあり方をねじ曲げ、将来の農業を危うくし、農民のやる気を奪っているのである。

<偏った規制改革推進会議メンバー>


 せっかくTPPを金科玉条とされる与党の皆さんには、TPP流でいこう。
 TPPの透明性の確保という観点からすると、まず問題になるのは会議の委員の構成である。どのような人たちを選ぶかということは大問題である。これが極めて不透明に官邸の思うがままに官邸の意向に沿う人たちだけが選ばれ、そういう偏ったメンバーだけで提言が決定されている。
 労働関係の審議会は経営者側が三分の一、労働者側が三分の一、中立が三分の一となっているのと大違いである。私が長らく担当してきた農政審議会でも生産者から全中の会長は当然入り、財界から経団連の会長とか経済同友会の有識者等が入り、消費者代表として主婦連や日本生活協同組合などから入る。つまりいろいろな人が集まって決めていくというものである。それに対して産業競争力会議や規制改革推進会議は、言ってみれば御用学者、御用経営者といった類いの歪んだ人たちだけがメンバーとなっている。

<捏造される与党の後押し>


 議論の進め方もとてもではないがデュー・プロセス(適正な手続)を踏んでいるとは思えない。今回も上記のメンバーが会議と称して思いつきの羅列の放談会をし、それを聞いていた役人が議論もされていないことまで盛り込んで過激な案を出した。農協側があまりの出来の悪さに激怒するのは当然である。11月21日には農協関係者も1500人が集まり、反対のノロシを上げた。二階自民党幹事長も参加し、代表者の意見に耳を傾けた。長野県選出の国会議員も、その夜地元長野県から上京した雨宮農協中央会長はじめ各農協の組合長と懇談した。
 こうした一連の動きを受けて、政府(規制改革推進会議)と自民党の双方が着地点を探し、とりまとめ役で抜擢された小泉農林部会長が板挟みで苦しんだとされる。それでも、やっとこさ与党側にかなりなびいた形が見えてくる。それを踏まえて今度は与党側が中心になってペーパーをまとめ大団円を迎えるというものだ。この間に農水省が黒子として動き、そのペーパーも25日(金)にはでき上がったようである。そして、28日には規制改革推進会議に戻され、政府に上がり29日に農政の柱なるものが政策決定がなされる。

<いつもの同じワン・パターンのシナリオ>


 三権分立が徹底しているアメリカでは大統領の諮問機関が勝手に物事を決めてそれを公表し、それに与党が噛み付き妥協がはかられ、政策が最終的に決められる、などということは絶対に許されないことなのだ。
 選挙で有利になるように「やはり政府与党は頼りになる」という印象を与えるシナリオが描かれる。三谷幸喜や宮藤官九郎のような面白いシナリオならよいが、いつものワン・パターンの猿芝居・茶番劇である。いくらなんでもこれだけ繰り返されると(15年の農協法改正時も同じ)、農民にもそのいやしい魂胆が丸見えとなり、農政不信が増すばかりである。こうしたことがいつまでも通用すると思ったら大間違いである。もし、農業団体や農民の中でまだ気付かない人がいるとしたら、是非よく見極めてほしいと思う。

<目を覚ませ農業団体>


 元々TPPに対する中長期的対策ということで農協改革が行われているが、肝心の農民の手取りを高くすることが欠落し、農協潰しに変身している。企業がそしてアメリカ資本が農業商社ともいうべき全農を目の敵にしているのが見えてくる。6兆円を超える食料・農業ビジネスを自ら手掛けようというのである。また、農協に金融をさせないという提言も農林中金や共済の100兆円を越える資金を民間市場に吐き出させんとする企てにつながっており、ここにもTPPの影がつきまとう。
 ただ、こんな横暴なことがまかり通るのは、元はといえば一にも二にも、与党があまりにも大きくなりすぎて、野党の声が小さいからである。その意味で、我々民進党の責任も重い。
 TPPも発効の見込みがほぼ消えたのであり、政府・与党の農協脅しのネタはもはや消え去ったのだ、もうそろそろ農業関係団体は自民党ベッタリの振る舞いをやめる時が来たのではないか。さもないと、組織が潰され、農民も泣くことになる。

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