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「平成経済20年史」を読む(2)

バブルへの対応について、日銀も大蔵省も、致命的な失敗をしました。日銀の利上げも財務当局の「総量規制」も、景気が上り坂のときに発動して、好景気が長くゆるやかに続くよう誘導すべきなのにタイミングを遅らせ、始まった崩壊を深刻化させる方向に舵を切ったからです。「日銀、大蔵省という経済政策の両エンジンが、ともに逆噴射したのだから、日本経済が墜落したのは、当然の結果だった。」と著者は書いています。日本の経済は、この墜落以来、一度も本格的には回復することなく今に至っているのです。

しかし当時はバブルを潰すのが正しいことと宣伝され、株価を支えようとした宮沢首相の政策は不評で政治は混迷し、細川連立内閣が誕生しました。細川内閣の「政治改革」のかげで進んだのが大蔵省主導の「財政改革」でした。これは唐突な「福祉税という名の消費税引き上げ」提案となって挫折するのですが、この後、財務当局の「歳出削減・国民負担増路線」が日本経済の重石となって行きます。

バブル崩壊は、株価・地価の下落に止まらず、金融機関の相次ぐ破綻となって長く尾を引きました。著者の見地からすると、これはバブル是正の不徹底ではなく、行き過ぎた崩壊に起因する当然の成り行きなのでした。正常な経済回復政策なしに不良債権処理を先行させれば、不良債権は逆に、連鎖的に増加することになります。

こうしてバブル崩壊から10年たっても景気が回復しない異常な時代となりました。著者の言葉を借りれば「資産が減って嬉しい人はいない。気持ちは暗くなるし、将来は不安だし、物を買う気がしなくなる」デフレ時代の到来です。村山内閣のときにも小渕内閣のときにも、経済回復のきざしは何度かありましたが、いずれもあと一歩のところで本格化には至りませんでした。「日本の政策当局は、あと少しの我慢ができない。日銀は、金利を上げたがり、大蔵省は、財政健全化を急ぎすぎる。」と著者は書いています。

閉塞状態になった日本の経済社会は、なんとか打開してくれる救世主を待望するムードを醸成していました。そこへ絶妙のタイミングで登場したのが「小泉構造改革」だったのです。そこでは、いくつかのスローガンが呪文のように繰り返されました。「郵政民営化は改革の本丸」「痛みに耐えて構造改革」「よく働いた者が報われる」「金融ビッグバン」などなど。これらの内容を、国民はどこまで理解していたでしょうか。それらはグローバル・スタンダードに遅れないためであるとも説明されました。しかし、それを待望し最大の利益をあげるのが誰であるかは、まだ一般には知られていませんでした。

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