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世界の経済圏を変える乗り物 - 土方細秩子

 オートショーで公共交通が記者会見。前代未聞の出来事だが、今回のロサンゼルス・オートショーは「車が中心の話題とならなかった史上初のオートショー」と言われる。それを象徴するのが、ハイパーループ・ワンの存在だ。

 ハイパーループ・ワンはテスラCEO、イーロン・マスク氏が提唱する未来の乗り物、ハイパーループを実現させるべく動いている企業だ。マスク氏が技術をオープンソース化しているため、テスラやスペースXとは無関係に、独自に資本を集め現在ネバダ州ラスベガスにテストトラックを建設、走行実験を行なっている。

 そのハイパーループ・ワンのCEO、ロブ・ロイド氏が同社の現状についてのプレゼンテーションを行なった。

アブダビとドバイ空港とを結ぶライン

 時速800−1000キロ、という超高速の乗り物は「世界の経済圏を変える可能性がある」とロイド氏は指摘する。例えば北欧の小さな町をつなぎ、ロシアや中欧との経済圏を打ち立てる。あるいは中国東北部、シベリア、カナダなどを結ぶ。これまで資源や技術があっても交通上の問題から発展から取り残されてきた地域が、ハイパーループ網により、大きな「地域」となる図式が描ける。

 ハイパーループ・ワンでは現在、中東UAEとの提携が進められている。まずは中心都市アブダビとドバイ空港とを結ぶラインの建設予定がある。

 ハイパーループとはほぼ真空状態のチューブの中を「ポッド」と呼ばれる流線型の乗り物が移動する仕組みだ。リニアのような電磁システムによりポッドは空中に浮かび、それを圧縮空気によってエアシューターのような原理で動かす。

 現在のハイパーループ・ワンの仕組みは、まず矩形のコンテナを用意し、中に人が乗れる、あるいは貨物を積めるカーゴとして設定する。各コンテナは自動運転装置により自力走行が可能で、このコンテナが人や貨物をピックアップ。その後4つのコンテナが結合して1つのポッドに収まりチューブ内を移動する。

 つまり、ハイパーループ・ワンは人と貨物を同時に高速で移動させることを目的とした装置作りを目指す。ロイド氏はこれこそが「アーバン・モビリティ・ソリューション」だと語る。つまりこのシステムには様々なフレキシビリティがある。高速鉄道は一定以上の人々が利用しなければ利益を生み出せないが、ポッドは少数の人の利用でも貨物輸送を兼ねるため、無駄が少ない。さらにコンテナを2つ繋げて大型貨物の輸送なども可能だ。

 UAEでの計画は全長159.4キロ、高速道路を使った車での移動では1時間以上かかる。しかしハイパーループ・ワンは「12分」で2つの都市をつなぐ、と確約する。すでに同社はドバイの道路交通局(RTA)との提携を結んでおり、昨年10月にはドバイのDPワールドグループから5000万ドルの出資を受けたことを明らかにした。

 現在ハイパーループ・ワンは来年初めのラスベガス・テストトラックでフルスケールのプロトタイプ走行を目指しているという。

 記者会見では、ハイパーループ・ワンが実際どのように運営されるのかを紹介するビデオも紹介された。スマホで簡単に予約、自動運転のコンテナが最寄り駅に到着、それに乗り込み、あとは自動でチューブを移動、目的地へ、という内容だ。

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ハイパーループ・ワンのCEO、ロブ・ロイド氏

人体への影響は?

 ハイパーループシステムの実用化には疑問の声がある。もっとも多いものは「超高速で移動する乗り物に人間が乗った場合の影響」だ。ロケットやジェット戦闘機並みのGがかかるのでは、と言われ「乗客の吐瀉物で車内は悲惨なことになる」という意見まである。

 しかしロイド氏は「圧縮空気は低プレッシャーで、車内は静か、揺れもほとんどない」と主張する。当初のハイパーループのスケッチを見ると乗客はシートベルトで固定されるものだったが、今回発表されたスケッチではソファも用意され、ゆったりと移動できる内容になっている。

 来年のフルスケール走行実験が成功すれば、ハイパーループが未来の公共交通機関として大きな前進を果たすことになるだろう。中東でのシステム導入が果たされれば、世界中の交通網に大きな影響を与える存在となる。世界中をハイパーループ網が結ぶ日は来るのか。将来が楽しみな技術であることは間違いない。

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