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大丈夫?クールジャパン

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11月末、中国のテレビ制作者達が大勢で来日し私の3時間に渡る「面白いテレビの作り方」についてのレクチャーを聞きに来る。前回BLOGOSでお伝えした通り、中国における「日本のテレビに学べ」熱は熱く、「リアリティショーの元祖」としてニューヨークタイムズにも特集記事が掲載された「進め!電波少年」のTプロデューサーこと土屋敏男も来月遂に中国に足を踏み入れることになりそうだ。日本とは比較にならない程の巨額予算で、還暦を迎えてもまだまだアウトローなテレビ屋である土屋が中国サイドスタッフと中国政府の「ラジオ・テレビ・新聞総局」の規制の目を潜りながら一体何をやらかすのか?今から楽しみである。

一方、私は4月・10月とフランス・カンヌのMIP国際映像見本市に参加した。今、専門のドキュメンタリーに関して言えば英国・米国が優勢でフランスが息を吹き返していたのが印象的であった。ドラマはハリウッドのユニバーサル映画等の巨大スタジオ(本当は独立プロダクションが制作していることが多い)と英国BBC・ITV等の勢いが衰えず、韓国勢も虎視眈々と世界マーケットを狙っている。後は番組の企画とノウハウを売る「フォーマット販売」の盛況だ。堂々と「電波少年」をパクリ、世界中にリアリティショー他の企画を販売しているオランダの大企業エンデモール社も健在、ヨーロッパ最大のメディアグループであるドイツ・RTLグループ傘下の世界最大のテレビ制作会社・英国のフリーマントル・メディア社(元・英テムズテレビ)もフォーマット・ドラマ販売で鼻息が荒い。

しかしこのフォーマット販売、我が日本での成功例はみのもんた司会の「クイズミリオネア」のみである。また、あの2001年に始まった日本テレビの「\マネーの虎」は米ソニー・ピクチャーズを通じ世界25カ国に「ドラゴンズ・デン」と言う名で販売され、米国では「シャーク・タンク」として大成功した。筆者の見解だが、「マネ虎」とそっくりの企画、当時ジリ貧だったドナルド・トランプを全米で有名にした「ザ・アプレンティス」は2004年から放送されたが、私も良く知るある英国人プロデューサーによってパクられたとかなり確信的に推定できる。 だから、先日も「マネーの虎」創設者の栗原甚と企画決定者・当時の編成部長の土屋敏男に「あの息も絶え絶えだったトランプの息をテレビ出演で吹き返えさせたのは、遠因としてあんたらの責任も一部ある」等と冗談で伝えたら彼らは腹を抱えて笑っていた。これがあながち冗談とも言えないところが恐ろしい所である。

ここで、本題に入る。「クールジャパン」の事である。この活動を私が初めて この目で見たのは、今年10月のカンヌMIPでのことである。10月は「ジャパン・ウイーク」と称し様々な所に「ジャパニーズ・コンテンツ」の看板・イベント・トークセッションが行われていた。関係者によるとこれも「クールジャパン戦略」の一環であると言う。大きな「ジャパニーズブース」のテントもある。ただ、前を通った時にちょっとのぞいたが、中には人もそぞろ。入口に立っている下駄をはき浴衣を着たちょんまげの被りモノを乗せ日本酒を配っている東洋人らしい若者も所在無さげである。ニッポン主催のパーティが行われるらしいが日本から本物の「ゲイシャガール」を何人か呼んでいるのだが、現地では髪結いが出来ないので日本で結ってから来仏し彼女たちは1週間ほど髪を洗ってはいけないらしいと聞き、気の毒に思う。このパーティの主催者・演出者は「日本=ゲイシャガール」というステレオタイプから逃れられなかったのだろうかか?そう言えば、2015年6月のカンヌ映画祭の日本サイドのパーティでゆるきゃらの「くまモン」を呼んだことに映画監督の是枝裕和さんが少し苦言を呈していた事を思い出す。おそらく私も外国の方々に「くまモン」と日本映画の関係は何だかわからなかったと思う。これも「クールジャパン」の歪曲的内輪受け解釈の一つだろうか。

12月号の雑誌「ウエッジ」は「クールジャパンの不都合な真実」と称し、意味深い苦言・提言を挙げている。官制の日本エンターテイメント産業再生会社ANEWS(All Nippon Entertaiment Works)は60億円の公的資金を投入し日本製コンテンツのハリウッド進出を狙っているが設立から5年で成果を挙げられず赤字垂れ流し。映画プロデューサーのヒロ・マスダ氏によれば、日本政府はLAの日本総領事館でクールジャパンに関係が深いとしてあのロボット対戦映画「トランスフォーマー」のプロデューサーを表彰したのだが、あの映画は日本のタカラトミー製合金玩具をモチーフにしているが、巨大市場中国等の「トランスフォーマー」が大ヒットした国の映画観賞者があの作品で日本を感じ、それが日本のコンテンツ産業に跳ね返って来るとは言い難いと言う。ここにも、「くまモン」と同様の官民の「クールジャパン」に対する違和感・齟齬(そご)がある。

「ダークナイト」や「インターステラー」、ハリウッド製「ゴジラ」を製作したヒット連発のウォール街の大物投資家トーマス・タルが設立した映画制作会社レジェンダリー・エンターテイメントも中国最大の不動産コングロマリット「大連万達グループ」によって買収され「ゴジラ2」は大連万達が青島にオープンさせる総工費8000億円の世界最先端の撮影施設で撮影されることになるそうだ。映画・ドラマ産業も構造変化をしておりインターネット配信等にハリウッドのビジネスマン・映画人は商機を見出している。マスダ氏は続ける「日本のクールジャパンのANEWSが夢見る『いつかハリウッドの誰かが夢を叶えてくれる』というのでは解決しない・・・日本のクリエイティブ産業の発展に対し無責任な人達が無責任な未来を設計する様な政策は許してはならない。」と結んだ。

また、同紙でのクールジャパン機構への苦言が続く。投資の対象は漫画・アニメ・ファッション・食・伝統工芸である。私が驚いたのはラーメンチェーンの「一風堂」に7億の出資をする等の投資案件である。一体、NYやパリやロンドンやドバイに「一風堂」のラーメン店が増えても、日本国にとってどんなイメージ戦略になっているのだろうか?確かに先日、私が行ったモスクワでも世界中でも日本食は大人気だが、経営はロシア人であったり、英国人であったり、インド人であったり、香港人であることも少なくない。まがい物でインチキな日本食も沢山ある。もし、食による日本文化の素晴らしさの伝播を考えしっかりした利益を得るのであればもっと日本中の食のプロ達や海外メディア・ビジネスの専門家と戦略を練るべきだしその目的を明確化しなければならないと思うのだが。

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