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戦後民主主義的な日本会議

戦後民主主義の落とし子

 11月26日に放送されたTBSの「報道特集」では、日本会議がテーマとして取り上げられていました。そこでは、日本会議は街頭演説やデモ、ビラ撒き、署名活動などを行っており、それによって影響力を拡大していると指摘されていました。

 これらは反原発運動やTPP反対運動などでも行われている、ごく一般的な市民運動の手法です。哲学者の柄谷行人氏が以前より、丸山眞男を引用しつつデモの重要性を訴えていますが、戦後民主主義社会における市民運動とはまさにこのようなものです。その意味で、戦後民主主義を嫌悪する日本会議は、極めて戦後民主主義的な存在だと言えます。

 ここでは、弊誌10月号に掲載した、菅野完氏と魚住昭氏の対談を紹介したいと思います。なお、菅野氏と魚住氏の対談も収録した新著『日本会議をめぐる四つの対話』を、12月11日に弊社より出版予定です。ご一読いただければ幸いです。また、12月9日には本書出版を記念して渋谷のLOFT9でイベントを開催いたします。是非ともご参加ください。(YN)

沖縄の基地反対運動に頼ってばかりではダメだ

菅野 僕は議会制民主主義という体制をとる以上、署名やデモや陳情などの市民運動は、システム側から要求されるものだと思っています。社会が必要とするかどうかと関係となく、議会制民主主義というシステムを回す要素として不可欠だと思うんです。

 そういう点から見ると、左側の運動はその浅はかさによって自滅したけれども、日本会議はその間もずっと愚直に市民運動を続けてきました。だから彼らは小なりといえども力を持っちゃったというのが、僕の見方です。つまり、彼らの思想に深みがあって人を惹きつけているとか、お金があるとか、そういうわけではないんですね。

魚住 愚直というか、要するに事務的なノウハウの蓄積ですよね。ノウハウの蓄積というのはとても重要で、戦後の日本社会の中で事務的なノウハウを蓄積してきたのは、一つは霞が関の官僚たちですね。

 僕は元検察担当だったのでその例を引っ張り出しますが、例えば東京地検特捜部の捜査のやり方には、色々とノウハウがあるんですよ。どうやれば記者に気づかれずに被疑者を事情聴取できるか、どうやれば被疑者を秘密裏に小菅の拘置所に連れていくことができるか、あるいはどうやれば銀行に捜査を協力させることができるかとか、彼らはそういうノウハウをずっと蓄積しているんです。

 そのノウハウを継承しているのは、検事たちではなく、プロパーの事務官たちです。検事たちは何年かで異動になるんだけども、事務官はローテーションはあるけれどもずっといますからね。

 それで、僕ら新聞記者が特捜部の取材をする期間は、だいたい2、3年なんですね。その間に特捜部の手口とか、彼らの細かいテクニックを勉強するんですが、それがようやくわかりかけてきた時に異動になっちゃうんです。異動の時に後任に引き継ぐかといえば、そんなことはしません。自分の担当が終わったんだから、あまり引き継ぐメリットもないですし、新聞社にはもともと引き継ぎという文化がないんでしょうね。

菅野 新聞記者はどちらかと言えば個人プレイで、技能集団のようなイメージですね。

魚住 そうそう。だから、検察には絶対に敵わないんですよ。そういうノウハウを蓄積してきたのは、僕が知っている範囲では官僚機構と、それから日本会議です。日本会議も60年代に左側の学生運動から学んだノウハウを実地でやってきたわけですよね。それは、どういうふうに集会を開くかとか、どういうふうにビラをまくとか、ちょっとしたことかもしれないけども、そういうものを積み重ねていっている集団が日本青年協議会でしょう。

菅野 その通りです。それに関連して言えば、最近社会運動をやっている学生たちは、ほとんどノウハウを持ちあわせていないんです。これはSEALDsではないんですが、ある若い学生たちが運動をやって機動隊と衝突し、一人捕まったそうなんです。ところが、彼らはどうやって救援したらいいか、弁護士にどう相談すればいいか、それすらもわからないというんですね。左側のノウハウの断絶は、大変なものがあると思います。

魚住 ただ、そういう意味で言うと、沖縄は違うんですよね。沖縄だけは運動のノウハウが引き継がれているし、彼らが直面している状況は本土とは比べものにならないくらいシビアですからね。

 沖縄で基地反対運動をやっている人たちに話を聞くと、彼らは世界的な反資本主義、反軍需産業、反貧困の運動とダイレクトに結びついた物の考え方をしています。こういう言い方は凄く無責任かもしれないけど、僕はそこに希望を感じています。日本本土の運動は旧来型の抵抗運動の縮小再生産に陥ってしまっているけど、沖縄は違うかなと。

菅野 だからこそ安倍政権は沖縄に必死なんでしょうね。

魚住 そうですね。僕は今の流れを見ていると、やっぱり沖縄の人たちが勝つと思っています。安倍政権は予算を減額したり、東京の機動隊を動員したりしていますが、そこまでしても辺野古の工事はできていないですからね。ただ、そういう運動まで沖縄におんぶにだっこでは、本当はいけないんだけれども。

菅野 おっしゃる通りです。沖縄を足で踏んづけておきながら、何もかも沖縄にやってもらっている感じになっていますからね。我々自身に何ができるかということを真剣に考えなければならないと思います。

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