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岩波新書「原発を終わらせる」を読む

「原発を終わらせる」(石橋克彦編・岩波新書)を読みました。期待した通りに、脱原発論を集大成した教科書と位置づけられる本でした。石橋氏を含む14名の専門家が協力して、現在を起点とする原発を終わらせる道を示しています。構成は以下の通りです。
 
第1章 福島第一原発事故
①原発で何が起きたのか(執筆者・田中三彦)②事故はいつまで続くのか(後藤政志)③福島原発避難民を訪ねて(鎌田遵)
 
第2章 原発の何が問題か 科学・技術的側面から
①原発は不完全な技術(上澤千尋)②原発は先の見えない技術(井野博満)③原発事故の災害規模(今中哲二)④地震列島の原発(石橋克彦)
 
第3章 原発の何が問題か 社会的側面から
①原子力安全規制を麻痺させた安全神話(吉岡斉)②原発依存の地域社会(伊藤久雄)③原子力発電と兵器転用・増え続けるプルトニウムのゆくえ(田窪雅文)
 
第4章 原発をどう終わらせるか
①エネルギーシフトの戦略・原子力でもなく、火力でもなく(飯田哲也)②原発立地自治体の自立と再生(清水修二)③経済・産業構造をどう変えるか(諸富徹)④原発のない新しい時代に踏みだそう(山口幸夫)
 
私がとくに感銘を受けたのは、冒頭の「原発で何が起きたのか」のレポートでした。原発の設計者でもあった筆者の説明は具体的で、実際に原子炉の中で起きたであろう現象を、時間を追って再現していました。それによって明らかなのは「津波だけであの事故が起きたのではない」ことでした。津波に先立つ長時間の激震によって、複雑な配管の各所が損傷や破断を起こしたのでなければ、あの短時間での爆発は説明できないというのです。巨大地震を抱えている日本の国情も考えずに、アメリカ基準の原発を輸入したのが、そもそもの誤りでした。
 
それも知らずに安全神話によりかかって巨大プロジェクトを進めてきた結果が、現在見る破綻でした。汚染範囲が今の程度に納まっているのは、非常に幸運であったとしか言いようがありません。天は日本の国民に「心を入れ替えてやり直す」機会を与えてくれたのです。
 
もちろん私たちには、出てしまった放射能との長い戦いが待っています。次はこの分野についても、信頼するに足りる現代の教科書を出してほしいものです。

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