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“20歳代の1票は大きい”と思うのは間違い。今の選挙制度では、ある意味“無視される20代”と言ってもいい - 「賢人論。」第27回(後編)パトリック・ハーラン氏

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20代後半から将来に備えて投資をしていたと話すパックン。アメリカの人には、老後に備えて投資を行う習慣がある。その理由の一つには、老後は子どもに面倒を見てもらうことを前提として考えない人が大部分であるからだそうだ。後編では、超高齢社会・日本における選挙制度は“民主主義の落とし穴”だとして、解決策を伺っていく。そして、インタビューの締めくくりには、東工大非常勤講師としての一面も持つパックンから、日本の若者へのエールを送っていただいた。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/小林浩一

アメリカ人の多くは子どもが老後の面倒を見てくれるとは思っていない

みんなの介護 前編中編を通して、国民も政府に要求するだけではなく、自らが行動していかなければといったことを伺いました。ただ、選挙の期間になると、社会保障について本当に課題にするべきことが論じられないことも事実です。

パックン その通りです。与党もしっかりしてほしいし、野党もしっかりしてほしい。今は、一党独裁とまではいかなくても、ほぼそれに近い状態になっているといえます。野党がしっかりしない限り、選挙時には選択肢がなくなるでしょう。与党の危機感がなくなるし、改善する必要性も感じなくなる。そこがネックかもしれません。

しかしながら、民主主義である限りは、年金を廃止する政治家は一人もいないでしょう。年金だけは、守ると思います。

みんなの介護 年金の受給額は減っても、制度は残るということでしょうか。

パックン 票田となるお年寄りの方々がとっても敏感な問題です。受給額は少し減っても、政治家が制度自体をなくすことはありえません。働き盛りの皆さんは同等の政治力を持っていなくて、年金を支えるためにグンとお金がかかることになると不満に思ってしまうかもしれませんけどね。

年金制度自体は世界規模で見ても新しいんですよ。アメリカが1937年に初めて開始した制度だから、テスト期間だと思うとちょっと気が楽。維持可能な理想形をまだ探っているところです。もう少し長期的な目で見てもいいのかもしれません。

でもね、贅沢な悩みですよ。韓国よりはマシだと思うし、中国よりは絶対マシ。インドネシアやフィリピンなどの東南アジア各国は“いいなあ待機児童問題、子どもを預けることを前提で文句言える人は“。“老人ホームができるだけでもすごい”という世界ですからね。年金制度に崩壊の恐れはあっても、比較的しっかりしている。日本が、とてもうまくいっている国だからこその悩みだとも思うね。

みんなの介護 世界から見れば日本はうまくいっている国なんでしょうが、時代が変化していくのと同様に、制度も変えていかなければならないと思うんです。

パックン 確かに、これまでの日本には3世代で暮らす風習がありました。おじいちゃん、おばあちゃんが昔から子どもの面倒を見てくださり、最終的に子供や孫に面倒を見てもらっていましたね。政府が面倒を見るところと、大家族が面倒を見るところ、昔は2本柱で成り立っていました。それは日本の素晴らしさでもあると思うんです。

実は僕にとって第二のふるさとは福井県で、子どもを連れてよく遊びに行くんですね。僕が知っている福井の高齢者の人たちは本当に恵まれています。一番仲のいい家族は、子ども夫婦の家を実家の隣に立てて、同居ではないけれど、一緒にごはんを食べたり、孫の面倒を見たりして、いつも行き来しています。別の人は、また実家の隣に息子用の家を建てて、数年後に家を交換するとか。うまく考えているんですよね。僕の知っている人たちはすごく幸せそう。

田舎だし、車社会だし東京よりは不便なところもあるけれど、みんな子どもを見る目がやさしいです。そういう意味では、福井の人は東京の人よりも余裕があると感じます。

みんなの介護 昔は地域の目もありましたよね。

パックン ありました。家庭だけではなく、地域で支えあう面もありましたし。おそらく高齢者の問題もそうだったと思います。でも一極集中型で都市化が進んで、核家族化になって、さらに平均寿命が伸びて、いろんなファクターで昔のままの社会じゃ、今の日本人の生活を支えることができないのは明らかです。

アメリカ人の場合、基本的に老後は老人ホームに住む前提で考えていると思うんです。子どもが面倒を見てくれる前提では考えていません。僕はずっと日本に暮らしているし、半分“日本人”になっているから、本当にギリギリまで自分の子どもと暮らしたいと思っているんだけれど、子どもに断られても大丈夫なくらいのお金は貯蓄しようと思っています。


人口が少ない若者世代は“20歳代の1票は大きい”と思うかもしれないが、それは民主主義の落とし穴。ある意味“無視される20代”と言ってもいい

みんなの介護 年金制度の話に戻りますが、若者よりも選挙に行く高齢者の方の人数のほうが圧倒的に多いので、「高齢者優遇の政策が重視される」という声が大きくなっています。

パックン まあ当然でしょうね。民主主義の、そして超高齢社会の落とし穴です。だから、変な話、少子高齢化は年齢の高い世代にとって得な社会と言えるかもしれない。まあ、得したと思わないでほしいですが、“一票の格差”は地域別にあると同時に、“総票の格差”が年代別にあるんです。つまり、高年層の票が多くて、若い人は、人口が少ないし投票率が低いから、ある意味“無視される若年層”になりがちです。

ひとつの解決策を紹介しましょう。“年代別代表選挙”をすることです。今の制度では若者の票が無視されて上の世代の人たちの票数に飲み込まれちゃうから、若者だけで代表を決めよう、という案です。地域ごとの選挙区ではなく、若者の代表、中年の代表、高齢者の代表、というふうに。

それぞれの枠を決めて、極端な話、70代に一人、60代に一人、50代に一人、という風にすれば、逆にそこで若年層有利の一票の格差が生じるんですが、こうすれば若者向けの政策も考えてもらえるんじゃないか、という制度を提唱する声もあります。

みんなの介護 選挙制度で、他にこうあったらいいなと思われることはありますか?

パックン 実現できそうなレベルで言えば、親に未成年の投票権を預けるということ。親は子どもの面倒を見ているけれど、いくら親が子どものためにやっても、2人で1票にしかなりませんよね。少子高齢化社会の今は、未成年の子どもがいる世帯より、いない世帯のほうが断然多いからです。大人の表だけを数えると、家族向けの政策をやってもらえない可能性が高い。それならば、未成年の子どもにも政治力を持たせましょう、と。さすがに小学生に1票の権利は与えられないから、それを親に預けるというわけ。

親は父親、母親の2人、子どもが3人いるとすると、父親と母親に1.5人分の票をプラスする、という形。そういうのは考えられます。これなら、日本のみなさんは納得するんじゃないですかね?

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