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核の廃棄に取り組むということ・10万年の未来へ

 今年5月18日深夜(19日0時)に放送されたBS世界のドキュメンタリー「地下深く永遠(とわ)に〜核廃棄物10万年の危険」の重みが、今さらのように迫ってくる。2010年にデンマークで制作された番組で、その年の環境映画祭グランプリを獲得している。日本では今年2月に放送されたが、まだ震災前であまり注目されず、私も見ていなかった。原発関連シリーズとしての再放送で見られたのは幸運だった。

 紹介されているのはフィンランドの事例で、地下500メートルの岩盤に巨大な核廃棄物の貯蔵所を作っているのだ。これは「オンカロ」と呼ばれ、現地語で「隠し場所」を意味する。フィンランドは原発大国ではないが、核廃棄物を自国内で最終処分する方法はこれしかないと決断して、国家予算を投じることとした。工事は進行中で、ここに順次廃棄物を収納し、核廃棄が完了する100年後に入口を封鎖する予定だという。

 ヨーロッパの基準によれば、核廃棄物の放射能が生物にとって有害でなくなるまでには、少なくとも10万年を要するという。そうするとオンカロは、10万年後の未来まで安定していなくてはならない。10万年と言えば、人類には石器時代までさかのぼる長さになる。10万年後の未来にも、今と同じ人類の文化が継続していると期待できるだろうか。「ここは危険だから決して開けてはならない」ということを、どのようにして未来に伝えたらいいのか。あるいは興味を持たれないように何もしない方がいいのか。

 哲学的とも思えるこのような課題が、今現在の問題として議論されているのは衝撃的だった。私も、今の英語で書いてある記録も読めないような未来人を、人類と考える必要があるのかと、一瞬は考えた。しかしそれでは地球に住む生き物としての責任を放棄することになる。つまるところ、人間の利己心はどこまで許されるのか、という問題になるのだ。

 良心的な北欧の小国が取り組んでいる具体的な対策は、私たちに改めて核エネルギーに依存することの重大さを教えてくれる。クリーンで安価だと宣伝されてきた裏に隠されてきた「後はどうなろうと、今さえよければいい」とする思想の罪の深さを知るべきなのだ。原子力村を支配していたのは、究極の「自己チュー」に他ならなかった。彼らが悔い改めるまでは、追及の手をゆるめてはならない。

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