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主張/年金法案の審議/国民の不安と不信は消えない

 「年金カット法案」と厳しい批判を浴びている国民年金法等改定案について、安倍晋三政権と与党が今国会で成立させるため、衆院を通過させる動きを強めています。物価が上がっても年金が引き下げられる新たな仕組みを盛り込むなどした「カット法案」は、年金を暮らしの柱にしている高齢者に打撃となるものです。衆院厚生労働委員会での政府の説明は極めて不十分で、国民の不安や疑問にこたえていません。政府・与党は「成立ありき」で法案を強行することをやめるべきです。

「引き下げ」は際限がなく

 安倍政権の「カット法案」は、毎年の年金額を決める際に、新ルールを導入することなどが柱です。現在のルールは、物価が上がれば年金額は最低でも据え置かれ、減額にはなりませんが、新ルールは(1)物価が上がっても賃金が下がれば引き下げ(2)物価よりも賃金が下がった場合は、賃金に合わせて引き下げ―も付け加えます。

 与党は「万一、不測の経済状況が起きた場合の備え」とめったにないかのように言います。しかし、今年度、物価は0・8%上昇し、賃金は0・2%下落しました。今年度の年金額は据え置かれましたが、仮に新ルールだった場合は、年金は引き下げになります。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、異常な金融緩和などで物価を引き上げることを目標にしています。大企業は空前のもうけを上げ、内部留保をため込む一方、労働者の実質賃金は低迷しています。2019年10月には消費税率の10%への引き上げも計画されています。新ルールの施行は、21年です。物価が上がり賃金が下がる経済状況が引き起こされ、それによって新ルールのもとで年金が削られることは、現実の危険として大いにありうるものです。

 法案では、物価と賃金の両方が上がっても年金が抑制される「マクロ経済スライド」の仕組みを強め、物価・賃金が上がらなかった年の「カット分」を翌年以降に繰り越すことも盛り込まれています。

 ただでさえ少ない年金が目減りし続ける―。出費を抑えるため必死にやりくりしている多くの高齢者から「これ以上どう切り詰めるのか」と切実な声が上がります。なかでも深刻なのは、年齢を重ねるほど利用機会の増加が避けられない医療や介護などの負担増です。

 安倍政権は、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上になる25年に向け、医療や介護の負担増・給付減の制度改悪を推進しています。保険料や利用料負担を次々と求めることと並行して、年金の減額・抑制をすすめれば、高齢者の暮らしは行き詰まり、いまでも深刻な格差と貧困をさらに広げかねません。高齢者の暮らしの実態を無視した「年金カット法案」は徹底審議で廃案にすることこそ求められます。

暮らし温める政策こそ

 年金削減によって高齢者の暮らしが苦境に立つことは、現役世代の暮らしも不安定にします。親の医療や介護の費用が年金でまかなえなければ不足分は子どもや孫の出費増につながります。高齢者の購買力が落ちて、消費が減ることは経済を冷え込ませ、現役世代の賃金や雇用にもマイナスです。全世代に深刻な影響を与える年金改悪を中止し、暮らしを支え、温める経済・社会保障へ切り替えることがいよいよ必要です。

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