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学校の「部活」が残業の原点か~日本の長時間労働を考える2~

サードプレイスがない日本

昨日当欄に、学園祭と長時間労働の関係について綴ってみた(ラムもハルヒも燃えた学園祭~長時間労働の原点~)。タイトルがアニメっぽかったのでわかりにくかったと反省しているが、要は学校文化の花形である「学園祭」が、現在社会問題になっている長時間労働の雛形ではないかと問題提起したのであった。

すると、大阪府の高校生居場所カフェ等(時代は変わる、高校居場所カフェ)でお世話になっている某先生が、「学園祭のさらなる原点として、一般的には『部活』がありますね」の主旨で書き込んでくれた。

そう、学園祭は「ハレ中のハレ」といってもいい行事にすぎず、そのもとになる「部活」的活動は、高校生や中学生の授業という「フォーマルな学校」と、家族を中心とした「プライベートな日常」の中間点として存在する。

現在のアメリカや日本には、家庭(ファーストプレイス)でもなく職場や学校(セカンドプレイス)でもない、サードプレイスがなくなってしまったとされている(アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ『サードプレイス』参照〈サードプレイス コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」〉。

「部活」とはいわば日本における隠れサードプレイスのような位置づけをされており、通常の授業が終わった後、生徒たちが逃げ込む場所でもある。

部活とザンギョウ

それは前回の当欄でも触れた『涼宮ハルヒの憂鬱』でも言及されている。ハルヒは、10代にとっての退屈な日常である「学校」がつくづくいやになり、妄想や異空間を想像して日常から逃走しようとする。

その逃走ぶりが同作品の見どころでもあるのだが、ハルヒの最大の逃走場所は、彼女を中心としてつくった「SOS団」だ。

SOS団の部室は文芸部だったかな、いわゆる「クラブボックス」的部室内で、ハルヒのエピソードは展開されていく。ハルヒにとって、SOS団はサードプレイスであり、文芸部を乗っ取ってつくったその部室は彼女の逃げ場所でもある。

まさにSOS団は「部活」テーストを凝縮しているが、その、「授業でもない家庭でもない」あり方は、我々の10代に独特の刻印を押しているようにこの頃僕には思えてきた。

野球部にしろバスケ部にしろサッカー部にしろ卓球部にしろ、書道部にしろ華道部にしろ茶道部にしろ化学部にしろ、文芸部にしろ漫研にしろ、すべての「部活」はある意味学校権力から少しだけ治外法権なところがある。

部活に流れる時間は、フォーマルな授業の時間でもなく、プライベートな家庭の時間でもない、独特の時間がある。

この時間をハイティーンのうちに体験してしまうことが、我が国特有の「ザンギョウ/残業」につながるのではないか、と僕は思うのだ。

ひたすら時間をかけてその分野を追求

授業が終わったから気楽になれたけれども、まだ家に帰りたくない。そんな欲望も含めてハイティーンは部活に臨み、それは学校からも家庭からも社会からも奨励される。

奨励されるどころか、親や学校からは無理やり薦めらたりする。そして、生徒たち子どもたち(分野やジャンルによっては4~5才から奨励される)もその成績によっては大人たちから褒められるため、その気になる。

「学校」(セカンドプレイス)以外の活躍が、子どもにとっては大人/親公認の行為となる。

すべての子どもは大人から褒めてもらいたい。その願望が、そのイマージュが「欲望」となり、子どもにとって、サードプレイス的「部活」の活躍がその子の存在理由となっていく。

存在理由といえば大げさすぎるが、こんな子ども時代を過ごす人は珍しくはないだろう。その分野は、野球、サッカー、ギター、ピアノ、書道、スケート、スキー、書道、柔道、化学実験、もうあげだしたらきりがない。

存在理由を確かめるために、我々は、ひたすら時間をかけてその分野を追求する。運動部であれば365日練習したりする。

そんな「部活」体験の延長に、現在問題になっている日本の労働者の長時間労働があると思う。それはもはや「文化」であり、10代の若い時から植え付けられた血肉なのかもしれない。昨日も書いたが、こうした現代の日本文化をさまざまな角度から検討しなれければ、単に残業をなくそうと声かけしても、それは隠れ残業を産むだけだと思う。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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